抗菌薬を内服すると子宮内フローラの
善玉菌がいなくなる?

英ウィメンズクリニック にしのみや院 江夏 国宏 先生 2004 年慶應義塾大学法学部卒業。2012 年熊本大学医学部卒業。2014 年九州大学産科婦人科学教室に入局。その後、九州大学病院、田川市立病院、福岡東医療センター、指宿医療センターで産婦人科医として勤務。2019 年4 月より英ウィメンズクリニック勤務。2022 年3 月より、にしのみや院 院長就任。日本産科婦人科学会専門医。
ゆーゆさん(35歳)体外受精でうまくいかず、EMMA 検査をしたところ、ラクトバチルスが0%、ガードネレラ菌が87%でした。抗菌薬を内服後に乳酸菌の腟錠で治療しています。次の移植で感染予防のために移植の前日、当日、翌日に抗菌薬を飲むように指示されています。腟錠で増やした良い菌が抗菌薬を飲むことでいなくならないでしょうか。人工授精、採卵、移植のたびに抗菌薬を飲み続け、頻繁にカンジダ腟炎も起きています。子宮フローラのためにできることはありますか。

子宮内フローラについてどう思われますか?

江夏先生●子宮内フローラが妊娠に関わるメカニズムの詳細はまだ明らかになっていませんが、ラクトバチルスの多寡が重要と考えられています。ラクトバチルスが多いと子宮内の免疫寛容を作り出すなどの仕組みで着床しやすくなり、逆にラクトバチルス以外の一部の細菌が多いと子宮内に炎症を引き起こし、着床しにくい環境になると考えられています。
海外の報告では子宮内のラクトバチルスが「90% 以上」の群と「90% 未満」の群に分けて調査したところ、「90% 以上」の群が着床率、妊娠率、出産率が高い結果になっています。一方、妊娠した群と妊娠していない群の比較では、子宮内のラクトバチルスに差はないという報告もあり、子宮フローラに対する懐疑的な意見もあります。また、子宮内フローラの検査は膣を経由して子宮内細菌を採取するので、その過程で膣内細菌の混入は避けられません。そのため、子宮内よりも腟内を調べるほうが意義は大きく、検査も簡単であるとの見方もあります。

抗菌薬を服用するとラクトバチルスが減少するのでしょうか?

江夏先生●それを検証した海外の報告では採卵周期に予防的に抗菌薬を内服し、採卵日と移植日に腟内細菌を調べ、治療開始前と比較しました。結果は抗菌薬を使用しても変化がないというもので、1回程度の内服でフローラは変化しにくいと考えられます。ただ、内服を繰り返すとフローラに影響を与える可能性はあります。とはいえ子宮内操作で子宮内感染が起こり重症化すると大変です。抗菌薬の内服は必要です。

今後のアドバイスをお願いします。

江夏先生●子宮内フローラが仮に存在すれば腟内フローラと相関する可能性は高いと思います。カンジダ腟炎も腟内フローラの影響が考えられます。抗菌薬に加え、乳酸菌製剤やラクトフェリンのサプリメントを摂り続け、腟内フローラを改善することが子宮内フローラの改善につながると思います。また、子宮や腟など全身の臓器は連動しています。食生活、睡眠習慣、ストレス対策など、生活習慣を整えることもフローラの改善につながり、妊娠にプラスに働くでしょう。これ以外の着床不全の要因として子宮筋腫子宮内膜症の影響をはじめ、着床の窓の問題も考えられます。ERA 検査がまだでしたら、ぜひ受けられることをおすすめします。
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不妊治療に関するドクターの見解を取材してきました。