PCOS と慢性子宮内膜炎について

ピルやめた直後に妊娠、流産。子宮内膜炎や流産の原因にPCOSは関係ありますか?

若い女性の排卵障害では多くみられる疾患、多囊胞性卵巣症候群(PCOS)。月経不順や排卵障害を引き起こし、不妊の原因になることがあるといわれています。そこでPCOSについて正しく理解し、不妊とどう向き合うかについて、佐久平エンゼルクリニックの政井先生に聞きました。

佐久平エンゼルクリニック 政井 哲兵 先生 鹿児島大学医学部卒業。東京都立府中病院(現東京都立多摩総合医療センター)、日本赤十字社医療センター、高崎ARTクリニックを経て、2014年に佐久平エンゼルクリニックを開院。
あやぴよさん(27 歳)からの相談 PCOS、AMH 値37ng/ml です。20 歳からピルを服用していましたが、去年4 月に結婚したので、3 月にはピルをやめて不妊治療を開始しました。ピルをやめた周期に検査でPCOS だけでなく、プロラクチン値も高かったのでカバサール® を服用。それだけで無事に排卵し、その周期に妊娠しました。しかし残念ながら9 週で流産していまいました。ピルをやめた後は、ホルモンが安定したりして、自力で排卵しやすくなるのでしょうか? また流産手術の後、治療を再開するにあたり、検査をすると慢性子宮内膜炎が判明しました。内膜炎があると着床しにくいと聞きました。また初期に流産の原因にもなるとのことですが、9 週心拍確認後の流産も内膜炎が関係しているのでしょうか。

そもそもPCOSとはどんな病気なのでしょうか? 妊娠への影響は?

政井先生●PCOSは、卵巣で男性ホルモンがたくさん作られてしまうせいで、排卵しにくくなる疾患です。女性の20~30人に1人の割合で発症するといわれています。排卵されない卵胞は卵巣にとどまるため、超音波検査でみると、たくさんの卵胞(囊胞)を認めることから多囊胞性卵巣とよばれます。症状としては無月経や月経不順、ニキビ、多毛、肥満などがあり、排卵しにくいため、不妊の原因になることもあります。軽症なら自然妊娠する可能性もありますが、不妊で苦しんでいる人や月経不順などで悩んでいる人には積極的な治療をおすすめします。
 発症の原因がはっきりとしないのですが、5人に1人はニキビ、多毛、肥満を伴っているため、卵巣で男性ホルモンが作られやすい性質が関わっているようです。病気というよりは「月経不順の体質」と考えた方がいいかもしれません。特に排卵障害を伴うPCOSの方は、卵管因子や男性側の因子(精子の問題等)が重複すると、さらに妊娠しづらくなるので、体外受精を含めた早めの治療がいい場合もあります。
 妊娠を希望される場合は、まずクロミフェンやレトロゾールなどの内服の排卵誘発剤を使用します。重度のPCOSの場合は、排卵誘発剤の注射剤への切り替えや内服と注射の組み合わせなどを必要とするケースもあります。
 一方、妊娠を希望しない場合は、無月経に対する管理や婦人科疾患、内科疾患との関連で問題になる場合もあります。PCOSの方はホルモン異常から、子宮体癌のリスク上昇、肥満、糖尿病、心疾患などの生活習慣病のリスク上昇もあるといわれており、これらの内科系疾患にも注意が必要です。

ピルをやめた後、排卵しやすくなることはあるのでしょうか?

政井先生●ピルを服用している間は排卵が抑制されます。あやぴよさんは20歳の頃から、おそらく月経不順でピルを服用されていたのではないでしょうか。約7年間服用し、ピルの服用をやめて不妊治療を始められたとのこと。はっきりしたことは言えませんが、すぐに排卵したのはおそらく、やめた反動によるものだったと考えられます。そのため、この1回だけをみて判断するのは難しいのですが、必ずしもピルをやめたからすぐに排卵できたのではなく、偶発的な要因によるものではないかと思われます。

子宮内膜炎を発症すると着床しにくいのでしょうか? またPCOS の方は子宮内膜炎にかかりやすいのでしょうか?

政井先生●まず、子宮内膜炎は子宮の内側にある子宮内膜が炎症を起こすことで、主な原因は細菌感染です。良くない菌の感染が続くことで、慢性子宮内膜炎となり、子宮内膜で免疫活動が活発になります。そして胚を異物として攻撃してしまうため、着床不全や妊娠初期における流産の原因の一つとして考えられています。しかし、感染が長引いたり難治性の場合を除き、慢性子宮内膜炎は抗生剤の治療でほとんどが完治可能です。
 毎月定期的に月経が起きている場合、月経時に古い子宮内膜が剥がれて一緒に細菌も体外へ出ていき、内膜の状態もキレイに保たれています。PCOSは月経不順により月経がこないことで深い基底層にまで侵入した細菌が排出されません。そのため感染は慢性化しやすくなりますが、必ずしもPCOSの方が子宮内膜炎にかかりやすいとはいえません。先ほどもいった通り、抗生剤の服用でほぼ治りますが、稀に繰り返す方もいらっしゃいます。不妊症の約3割の方に慢性子宮内膜炎があります。

今後の治療方法についてアドバイスをお願いします。

政井先生●排卵誘発剤のクロミフェンやレトロゾールを使っても全く反応しなかったということですが、もし1回だけの使用であれば、回数を増やすべきで、すでに数回試されているのであれば注射をすすめられるでしょう。
 一般的に子宮内膜炎は抗生剤の治療でいったんは治りやすいのですが、その後に子宮内に善玉乳酸菌を定着できなければ、いずれ悪玉菌優位の細菌叢に置き換わる可能性があります。
 抗生剤治療後は、乳酸菌製剤の治療などで善玉乳酸菌を定着させること。また、腟内、子宮内の細菌叢は、腸内細菌とも連動しているといわれていますから、乳酸菌食品や食物繊維を摂るなど、普段の食生活の改善も重要になってきます。あやぴよさんはまだお若く妊娠の可能性は十分にあると思いますので、医師としっかりと相談し、治療を進めていきましょう。
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不妊治療に関するドクターの見解を取材してきました。