PCOS(多囊胞性卵巣症候群)ってどんな病気?

神谷レディースクリニック 岩見 菜々子 先生 札幌医科大学卒業。2014 年より神谷レディースクリニック勤務。日本生殖医学会生殖医療専門医。日本産科婦人科学会認定専門医。日本抗加齢医学会専門医。

PCOS は排卵しにくい疾患です。

卵巣にたくさんの胞状卵胞があるものの排卵しにくい、または排卵しない疾患です。不妊の原因となることもあります。特徴的な症状は月経異常と高い男性ホルモン値などのホルモン異常です。月経不順で受診されて見つかる場合が多く、体毛が濃くなるなど男性化徴候を自覚される方もいらっしゃいます。診断基準は月経異常があること、卵巣に2〜10mm未満の小卵胞が10個以上見えること、月経期血中のFSH(卵胞刺激ホルモン)は正常値で、LH(黄体化ホルモン)と男性ホルモン値が高いことで、問診、エコー、血液検査からわかります。無月経の方以外は、月経期に採血します。

PCOS は生殖年齢の6〜10%に見られます。

20代、30代の女性に多い疾患です。卵巣に多くの卵胞が見られる多囊胞性卵巣で月経不順があっても、軽症の場合は少しずつ排卵し、加齢とともに男性ホルモンも減少、30代後半になると自然に改善されることもあります。

PCOSは目立った増加傾向にはありませんが、男性ホルモンは脂肪細胞内でも作られるので、BMI値が上昇に伴い今後増加に転じる懸念はあります。また、PCOSはメタボリックシンドロームのハイリスク群ともいわれ、2型糖尿病、脂質異常、心血管異常のリスクも上昇すると考えられています。妊娠を望む、望まないにかかわらず、こうしたリスクを減らすためにも治療を受けることはおすすめします。

PCOS の治療はまずダイエットから。

BMI25以上の方には、まずダイエット治療をおすすめします。4〜8週間で5〜10%減量するだけで男性ホルモンが減り、排卵が再開されるケースが多くあります。

次に、今すぐ妊娠を望まない場合は、低用量ピルで男性ホルモンを抑える処方をします。

また、妊娠を望む場合は、排卵誘発剤のクロミッド®やレトロゾールを処方し、内服薬が効かない場合には自己注射可能なゴナドトロピン製剤を処方します。これらを症状に合わせ適切に使うことで、ほとんどの方は排卵に至ります。ただ排卵誘発剤には多胎妊娠のリスクもあるため、排卵に多量の薬を必要とする重症の場合は体外受精をおすすめしています。また外科的方法として、卵巣表面に多数の穴をあける腹腔鏡下卵巣多孔術があります。全身麻酔で入院が必要、効果も1年間程度と短期ですが、どうしても体外受精を避けたい場合には、選択肢となります。

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