歯周病は「おじさんの病気」「歯や歯茎の不調」と思っていませんか?実は歯周病は男性より女性に多く、30 代から発症して不妊や妊娠にも悪影響を与えることがわかっています。妊活中に歯周病になってしまうとどんなリスクがあるのか、秋山レディースクリニックの秋山芳晃先生にお話を伺いました。
歯周病は女性に多い病気で男性の約1.5倍の罹患率
歯周病とは歯の周りの組織に起こる慢性的な炎症の総称です。虫歯と異なり、多くの場合、痛みがないまま慢性的に進行し、出血や歯の動揺(グラグラする)などの症状により初めて気がつくことも多い疾患なのですね。
男女比においては女性に多く(男性の約1.5倍の頻度)、年齢的には30~40歳代に発症しピークは38歳といわれていますが、歯周ポケットの有無でみた場合の有病率は25~34歳でも32%程度(45~50歳で約49%、65~74歳で約57%あるといわれており、若い方でも注意が必要です。
歯周病は口腔内の状態悪化にとどまらず、糖尿病や心血管疾患、慢性腎臓病、免疫疾患など、全身性疾患との関連が明らかにされつつあり、糖尿病などは逆に歯周病を悪化させることも知られています。
妊婦の歯周病有病率は報告により異なりますが、20~50%とされているようです。
早産や妊娠高血圧症候群などのリスクも高まります
妊娠中は女性ホルモンの関係で歯周病の病原菌が増殖しやすいうえに、つわりによる間食の増加、体調不良で歯磨きなどのケアも怠りがちになって口腔内の衛生状態が悪化。歯周病が進行しやすいと考えられているので、妊娠中の歯周病対策は非常に重要だと考えられています。
この時期に特に気をつけたい体へのリスクとして、歯周病によって増加した炎症物質により、早産・低出生体重児出産・妊娠高血圧症候群・妊娠糖尿病が増加するのではないかといわれています。
健康体の妊婦さんと比べ、歯周病による早産のリスクは2~3倍、妊娠高血圧症候群のリスクは2~6倍、妊娠糖尿病のリスクは2~3倍増加すると報告されているのですね。
いずれも歯周病を治療した場合の予防効果は明らかにされていませんが、ほかの内科的全身性疾患との関連を考えると、妊娠中の歯周病を放置しないほうがいいということは間違いありません。
妊娠中でも可能な歯科治療はあると思いますが、できる処置に制限が出ることもあるので、できれば妊娠する前に歯科で口腔内をチェックし、歯周病の診断を受けたのなら、早めに治療をすませておきましょう。
歯周病が妊娠成立を妨げる一因になることも
不妊症と歯周病の関連性についてですが、不妊症の女性患者と自然妊娠した妊婦の血液中の歯周病菌に対する抗体量を調べた研究では、不妊症患者のほうが抗体量の数値が高かった(歯周病の程度が強いという解釈)という報告があります。
また海外の報告では、歯周病菌に対する抗体価の量が多い女性のほうが妊娠成立までかかる時間が長かったというデータもあります。
女性だけでなく男性においても、重度の歯周病に罹っていると精子の運動性などが悪化するという報告もあります。ほかの内科的全身性疾患(糖尿病や心臓病など)との関連を考えれば、男女問わず歯周病が妊娠成立を妨げる一因になっていると想像できるでしょう。
不妊リスクをなるべく排除するためにはバランスの良い食事や適度な運動、ストレスの軽減などによって健康管理をし、適正な体重を維持すること。喫煙している人は禁煙することも必須です。また通常の健康診断に加え、定期的に歯科健診も受け、歯周病の早期発見・治療を心がけるようにしてください。
歯周病セルフチェック
・歯肉の色が赤い、もしくはどす黒い
・歯と歯の間の歯肉が丸く、腫れぼったい
・歯肉が、疲労時やストレスがかかっている時に腫れやすい
・歯肉が退縮して、歯と歯の間にすき間ができてきた
・歯が長く伸びてきた
・歯の表面を舌で触るとザラザラする
・歯磨き時などに歯肉から出血しやすい
・起床時に口が苦く、ネバネバして気持ち悪い
・歯肉を押すと白い膿がにじみ出てくる
・歯の動揺がある
・歯と歯の間に食べ物が挟まりやすい
・上顎の前歯が出てきた
・人から口臭があるといわれる
上の項目に1つでも当てはまったら、歯周病の恐れがあります。歯科医院で健診を受けましょう。