低刺激で着床せず。高刺激のできる施設へ転院したほうがいい?
明大前アートクリニック 北村 誠司 先生 昭和62 年、慶應義塾大学医学部卒業。平成2年、同大学産婦人科IVFチームに入る。平成5年、荻窪病院に入職。平成20 年、虹クリニック、院長として就任。平成30 年2月、明大前アートクリニック開設。医学博士。日本産科婦人科学会専門医。日本生殖医学会・生殖医療専門医。日本産科婦人科内視鏡学会評議員。
POPPOさん(35歳)低刺激専門クリニックで体外受精を2回実施。1回目は注射なしで4個採卵中、1個が胚盤胞になり凍結。5AAを戻しましたが着床せず。翌月の採卵で小さい単位の注射を2回し、2個採卵、受精せず。採卵しても胚盤胞になる確率が低いので、多く採卵するために高刺激のできる施設へ転院したほうがいいのか迷っています。田舎暮らしで通院に往復5時間かかるため、体への負担が気になりますが。また、精子採取の際に体液が付着した場合、受精の妨げになりますか?
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低刺激による採卵が原因でなかなかうまくいかないのでしょうか。
北村先生●1回目に関しては数は少ないけれど、5AAというグレードの高い胚盤胞ができていますよね。受精卵の出来としては決して悪くはないと思います。2回目に関しては受精卵の詳細が書かれていないので何ともいえませんが、採卵数が少ないので、受精しにくいとはいえないです。
低刺激だと採れる卵子の数が少ないので、この方がおっしゃるように確かに胚盤胞を確保できる機会も減りますが、良い卵子が出てきて顕微授精で受精させればまた良好な胚盤胞ができる可能性は十分あります。
今の治療法は決して悪くはなく、このまま低刺激で採卵していっても妊娠のチャンスはあると思いますね。
高刺激ができるクリニックに転院することを考えているようですが。
北村先生●もちろんその選択肢もあると思います。ご本人が今の治療に納得していない、違う方法を試してみたいということであれば、高刺激ができるクリニックへの転院を考えてみてもいいのではないでしょうか。まだ35歳というご年齢ですから、低刺激・高刺激、どちらの選択肢もありだと思います。
遠方の施設で高刺激の治療を受けるとなった場合、お体への負担を気にされているようです。
北村先生●この方は高刺激でたくさん卵子が育ってきそうです。卵巣が腫れてお腹が痛くなるといった症状が出てくるかもしれませんから、遠方の施設だと確かに負担が大きいかもしれません。ただ、クリニック側も刺激をする前に体質やホルモン状態を調べる検査をきちんと実施し、副作用が出そうな方だったらお薬の量や数をコントロールして、なるべく安全な形で行いますので、深刻な状態になることはないと思います。
また、高刺激になると毎日注射を打たなければならない場合もありますが、自己注射という選択肢もあるので通院の回数はかなり減らせるのでは。一度高刺激のクリニックで詳しいご説明を受けてみてはどうでしょうか。
精子採取の際に体液が付着したというご質問に関しては?
北村先生●もし血液や唾液が混入した場合、少量ならば取り除いて使えますが、量が多くなってくると受精の障害になる場合があります。採取時は体液や異物が入らないよう注意し、もし入ったとわかったら必ず病院に申告してください。