ERAで移植のベストな タイミングがわかるって本当?

着床不全を解消すると注目ERAで移植のベストなタイミングがわかるって本当?

体外受精における胚移植。自分にとって最適な時期を調べることができるERA(子宮内膜着床能検査)について、ART クリニックみらいの村田泰隆先生にお話を伺いました。

ART クリニックみらい●村田 泰隆 先生 名古屋大学医学部大学院修了。IVF 大阪クリニック・なんばクリニック勤務、竹内病院トヨタ不妊センター長、エンジェルベルクリニック不妊センター長を経て、2016 年ART クリニックみらい開院。5 年間で約3200 例を妊娠・出産に導く。医学博士。

受精卵がうまく着床するタイミングは人それぞれ

妊娠というのは、受精卵と子宮内膜、相互がバランスよく協調したときにはじめて成立します。人の子宮内膜には、受精卵の着床に適した一定の期間、「着床の窓」が存在するのですが、この窓の時期や幅には個人差があって、なかには一般的なタイミングよりもなかなか窓が開かない(窓が後ろにズレている)人や、早く窓が終わってしまう(前にズレている)人がいると言われています。

「着床の窓」が存在することは昔から知られていますが、臨床的にヒトの着床の窓の存在が示されたのは1990年代の臨床研究になります。そしてこれまで、窓の存在、状態を調べる研究がいろいろされてきましたが、臨床的に有効活用できる検査法はありませんでした。そんな中2009年、スペインで新しい検査法が研究開発されました。世界で最初に登場した、ERA(EndometrialReceptivity Analysis) です。

このERAは、子宮内膜が、受精卵の受け入れが可能であろう時期(一般的には排卵から5〜6日目に相当する、受容期と考えられる時期)に、子宮内膜の組織を一部採取して行います。組織から遺伝情報のRNAと呼ばれる物質を取り出し、着床能と関わりがあると選び出した236の遺伝子に注目し、それら遺伝子がどれくらい発現しているかを解析します。その発現パターンから、子宮内膜が着床期(受容期)にあるのか、または着床期前なのか、後なのか、を判断します。検査は、胚移植を行う場合と同じ環境、タイミングで実施する必要があります。また、この周期での胚移植は実施できないのと、検査結果が出るまでに3週間ほどかかり、一定の時間が必要です。

私自身も昔から、「着床の窓」が前後にズレていることで妊娠を逃している方が一定数いるだろう、と臨床上悩んでいて、一般的なタイミングで胚移植をしてもなかなか着床しない方に、経験値から見当をつけて1日遅く移植してみたり、受精卵を二日にわたってポンポンと撒くように移植してみるなど、試行錯誤することがありました。そんな中、このような、個々よって異なる「着床の窓」の状態を科学的に示してくれる新しい方法が登場し、着床の窓問題のブレイクスルーになったと感じています。

着床に適した時期を12時間単位で特定できる検査

早くは海外から輸入して、2015年〜2016年頃から取り入れている施設もありますが、当院では、検査会社の日本支社ができた2017年以降に導入をはじめ、これまで4年弱で150人以上の方に検査を行ってきました。このERAは着床にふさわしいタイミングを12時間単位で判定してくれます。受容期の前または後、と判定されたときは、再検または24時間以上ずらしての移植を、受容期ではあるが、前のほう、後ろのほう、と判定されたときは、12時間ずらしての移植がアドバイスされます。実際の移植では、ERA検査を行った時と同じ状態の子宮内膜をもう一度準備し、推奨された時間に胚移植を行うことになります。

検査会社のデータによると、この検査を行った方の約30%が「着床の窓」がズレている、また、着床期であるが前のほう、後ろのほう、と判定される方を合わせると、約55 %の方が、移植時間の修正が必要であった、と報告されています。

当院のデータではそれぞれ10%、25%ほどでしたので、比較して大変少ないものでした。当院の場合、修正が必要な方の6割が12時間の修正であり、12時間単位で判定可能なERAは、非常に有用な検査だと感じています。判定を参考にズレを修正し、個々に合わせたタイミングで移植を行ったところ、着床に至った方が約8割。その後、残念ながら流産してしまうケースもありますが、現在治療中の人を計算にいれなくても、6割5分くらいの方が継続妊娠されており、検査後の好成績を実感しています。

着床不全の検査として、主に反復不成功(胚移植を複数回繰り返しても着床に至らない)の方を対象に行っています。検査費用は自費であり、施設によりますが12万円〜15万円くらいと高額ですので、どのタイミングでご案内するかは難しいところです。時間がかからず無料なら全員にご案内したいところですが(笑)、基本的には、良好胚盤胞を3回程度移植しても着床しなかった場合、患者さんに説明と相談のうえ、「検査したい」という方に対して積極的に実施しています。

ERAは自然周期で検査することもできますが、当院ではホルモン補充周期の融解胚移植を基本にしていますので、ERAもホルモン補充周期で行います。再現性を重視しているためで、移植周期と全く同じ環境、同じ時間で行いましょう、ということです。ERAの結果を確実に生かすための大切なポイントと考えています。自然周期では、排卵を誘発するLHサージが自然に生じてしまうので、時間を完全にコントロールすることができません。「着床の窓」は、ホルモン環境によっても大きく変動するので、自然周期や採卵周期では、周期ごとにばらつきが生じる可能性があります。当院での治療は、新鮮胚移植を行うのは限られたケースのみとし、胚盤胞で全胚を凍結保存しホルモン補充周期での融解移植、を基本としていますが、それは、最初から、何よりも「着床の窓」を意識しているためです。

大切な受精卵を確実に妊娠へと導くために

ERAを希望する方は当院でも年々増えてきています。最近の特徴として、初回の胚移植を行う前に検査を希望する方も時にいらっしゃいます。それはどういう方かというと、年齢が高めの方、胚盤胞がめったにできない希少胚の方、などです。たとえば、PGTーA(着床前胚染色体異数性検査)をやってようやく「A判定が1個」という方などは、この受精卵を逃すと後がない、時間や費用がかかっても、確認できることはすべて確認してから移植に臨みたい、ということですね。

年齢が上がると「着床の窓」がズレやすくなる傾向があるようなので、年齢の高い患者さんこそ、胚のせいばかりにせず、早い段階でERAを案内したほうがいいのかな、と感じているところです。年齢が高くなると窓が後ろにズレやすく、子宮内膜に炎症があると前にズレやすい印象がありますが、まだはっきりした傾向はわかっていません。これから検査症例が増えることで、患者背景と着床の窓の関係について、どんどん新しいことがわかってくると期待しています。

体外受精では、生命力の高い良質な受精卵を得ることが大前提ですが、せっかく得られた良好胚を、「タイミングが悪かった」ために失うようなことは是が非でも避けたいものです。知らず知らずのうちに「着床の窓のズレ」によって「本来生存能力のある胚を失ってしまう」ケースがあるわけですが、ERAの登場によって、そのような胚を、また悩めるご夫婦を救える時代がきたと思います。

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不妊治療に関するドクターの見解を取材してきました。