日本の不妊治療環境、ちょっと変じゃない?

ジネコ2019年冬号で取り上げた「2000人アンケート。発端となったのは不妊治療中のゆなさんからのメールでした。このアンケートの拡散に協力してくれた人も含めて

結成されたのが「不妊・不育治療の環境改善を目指す当事者の会。  メンバーのゆなさん、mary さん、ぽころぐさんに話を伺いました。

不妊・不育治療の環境改善を目指す当事者の会(@funinfuiku2020)メンバー9名

 

ゆな さん @yunakinenbi
30代、パート。2014年11月より妊活開始。検査にて男性不妊が判明し2016年4月より本格的に治療開始。現在は治療お休み中。ジネコと共同でアンケート企画を実施(ジネコ2019年冬号参照)

 

mary さん @maryism_mary
30代、会社員。妊活1年半+不妊治療5年を経て現在妊娠中。染色体構造異常の均衡型相互転座キャリア。個人ブログ「めありずむ」運営。http://www.maryism.net/

 

ぽころぐ さん @pocoloooog
30代、会社員。約4年の妊活・不妊治療を経て、顕微授精による移植で2018年に出産。個人ブログ「ぽころぐ」運営。https://awesomeworldlife.com/

 

明ノ富士 さん @akeno_fuji
30代、会社員。妊活・不妊治療約3年を経て体外受精にて妊娠中。

 

るんぺる さん @runpel_
30代、会社員。体外受精を経て妊娠中。不妊治療情報を@info_fertilityで発信。

 

ふじこ さん @fujikowitter
30代、会社員。体外受精を経て妊娠中。反復流産から不育対策を継続中。

 

あっこ さん @akkoi450
30代、3回目の流産をきっかけに退職。6年の不妊治療を経て現在妊娠中。

 

まっちゃん さん @q7oarw6c0RFvq7e
30代、会社員。2017年から不妊治療。新型コロナの影響で移植周期に入れず延期中。

 

ばんび さん @BamBamBambi22
30代、会社員。2017年から不妊治療を開始。不妊原因は不明のまま体外受精で妊娠。

 

ツイッター上で疑問をつぶやいたら同じ感覚の人たちとつながった

 

SNSでつながった9名の女性によって作られた「不妊・不育治療の環境改善を目指す当事者の会」(以下、当事者の会)。立ち上げの一つのきっかけを作ったのがゆなさんです。

昨年、ゆなさんはある産婦人科医の「日本は高齢が原因の不妊が多い」とのツイートに疑問を感じて実施したアンケート結果をジネコに送ってくれました。それをもとにジネコでも不妊治療に関するアンケートを新たに実施(2019年冬号参照)。その際のアンケートの拡散に協力してくれた人も含めて、のちに結成されたのが当事者の会なのです。
「maryさんとぽころぐさんにも拡散を協力してもらいました。以前からツイートやブログを見て尊敬していたお二人と、一緒に行動を起こせて嬉しかったです。その後、NPO法人fineのイベントで今のメンバー数名が顔を合わせ、ほかにも個人的に会う機会が重なり、自然に距離が縮まっていきました」とゆなさん。

そして同じ頃、明ノ富士さんが「当事者による勉強会」を企画し、賛同した人たちがツイッターのグループメッセージで連絡を取り合うようになり、11月に初顔合わせとなりました。これがきっかけとなり、当事者の会が始まったそうです。

「個人的には独身、子なし、不妊治療中、妊娠中、出産経験者など状況やライフステージが異なる立場の人たちの間に大きな壁があると感じていました。それぞれが必要な社会的サポートを受けられる土壌にしていくことで、分断が今より少なくなればいいなという思いを持って会に参加しています」(maryさん)

※写真:1月17日、松戸市議会議員の岡本ゆうこさんと打ち合わせ

困ったな、おかしいなと思うことはどんどん声に出していい

 

「みなさん本当に素敵な人たち。一緒に問題を考えられることにワクワクしました。そこで、まずはいろんな人に会おうということになり、12月から不妊関連の業界の人に会い始めました」(ゆなさん)。とはいえ、それぞれに仕事や治療があるため、アポが取れたら行ける人が行くという、ムリのないスタイルで始動。一気に動きが出てきたのは2020年1月、自身も不妊治療経験者である、立憲民主党・松戸市議会議員の岡本ゆうこさんにお会いしてからとのこと。

「最初から政治家に要望を伝えることを主目的とし活動を始めたわけではありませんでしたが、ご縁をいただきお会いすることになって。せっかくの機会なら、私達が何を要望したいのかをまとめようという話になり、急遽要望書を作ることになったんです」とmaryさん。1月17日に要望書を岡本さんに見てもらったところ、数日後に会う予定があった党代表の枝野さんに、直接渡していただくという流れに。そして22日に、国会で枝野さんが不妊・不育治療の問題を取り上げてくれました。

「あまりに早い展開で驚きましたが、声を上げれば届くんだなと実感、感動しました」とぽころぐさん。その後は同党のイベントに参加したり、不妊・不育治療問題に関心のあるほかの党の政治家にも積極的に会って、そのつど当事者の意見を伝え続けています。

「保険適用だけでなく、不妊・不育治療を取り巻く環境すべてを改善していきたい。そういう問題提起をツイッターでし続けていたら、優しくて強い素敵な人たちとつながることができました。だから、治療を続けていておかしいな、困ったなと思うことはどんどん声に出すといいと思います」とmaryさん。ゆなさんは以前、治療がうまくいかず、自分のことを責めて落ち込んでしまうことも多かったそうですが、患者を取り巻く環境にも問題があるのでは? ということに気づき変わったとのこと。「自分は悪くないんだって思えるようになりました。とてもラクになりました」(ゆなさん)。

ぽころぐさんは以前より不妊治療の現状を少しでもよくしたいという思いからブログやツイッターで情報発信をしていたこともあり、もっと何かできることがあればと思いこの会に参加したそう。「まさかSNSでこんな出会いがあるとは思っていませんでした。バラエティー豊かな面々と、できることを今後もやっていきたいです」(ぽころぐさん)

当事者が思いや意見を発信することで、少しずつ社会を動かせるということを行動をもって教えてくれた皆さん。当事者の会の活動は意義深いものであり、今後の活動が益々楽しみです。

当事者の会のこれまでの活動

 

●1月17日 立憲民主党・岡本ゆうこさんに要望書提出

不妊・不育症治療の全面的な保険適用、施設間の知識・技術格差を是正、不妊・不育治療と仕事の両立・再就職支援など8項目を盛り込んだ〈不妊・不育治療の環境改善に関する要望書〉。maryさんが作成したものを元にそれぞれの意見を加筆修正し、岡本さんに提出。19日に受け取った枝野さんが22日の国会で取り上げてくれました。「その前から不妊治療に関してお話される予定だったのかもしれませんが、不妊だけでなく、不育という言葉を添えてくれたので、私たちの思いが届いたんだと感動しました」。

●2月16日 「立憲フェス2020」に参加

立憲民主党の議員やパートナーと呼ばれる市民を集めて行われる党大会で、当事者の会のブースを出展。そこで枝野さん含む、不妊治療経験のある議員によるトークショーが実現。高度生殖医療を含む不妊治療費の保険適用を請願する署名活動も行いました。

▼フェスで配布したリーフレット

●3月24日 超党派の政策グループ「直諌の会」の国会議員と勉強会を開催

2月26日に国民民主党の源馬謙太郎衆議院議員とpolipoli (インターネット上の政治プラットフォーム)を介して、不妊治療に関する意見交換を行ったことをきっかけ(写真)とし、3月24日に超党派の政策グループ「直諌の会」の国会議員複数人と厚労省の職員を含む勉強会を実施。主に不妊治療の保険適用について要望を伝えるとともに意見交換を行いました。
この他にも、様々な議員の方と面会し要望を届けています。

●3月27日 新型コロナウィルスに関する緊急アンケートを実施

当事者の会のツイッター上で不妊症または不育症の検査や治療で通院中の方に向けて、現在、検査や治療をどうしているかを問いかけるアンケートを実施しました。

>全記事、不妊治療専門医による医師監修

全記事、不妊治療専門医による医師監修

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