チーム医療で臨む不妊治療~培養士の役割

生命の源に携わる神秘的な仕事にスタッフ全員で向き合う

レディースクリニックあいいくでは胚培養士からのアイデア共有、看護師のメンタルサポートなどみんなで意見を出し合いながら患者さんを診ていくチーム医療を行っています。

樋渡 小百合 先生

2005年鹿児島大学医学部医学科卒業。鹿児島大学産婦人科に入局、県立大島病院、国立病院機構都城医療センター、愛媛県松山赤十字病院等を経て、2016年より鹿児島大学産婦人科生殖医療グループで修練、診療を行う。2019年医療法人愛育会愛育病院およびレディースクリニックあいいくに入職、2020年より院長。日本産科婦人科学会専門医、日本生殖医学会生殖医療専門医。

ARTの成功の鍵となる役割を担う胚培養士

胚培養士は私たち医師が採卵した患者様の大切な卵を、磨き上げられた確かな技術で受精させ、培養、凍結、融解…と、妊娠へ導いてくれる職人さんです。すべての工程において繊細な技術と高い集中力が求められ、ARTの成功の鍵となる役割を担っています。

当院では体外受精にステップアップする前に、培養士よりご夫婦に個別で約1時間かけて丁寧に説明を行っています。採卵日当日の受精方法の決定や新鮮胚移植をどうするか、初期胚凍結や胚盤胞凍結についても、ご夫婦と胚培養士が話しあい、納得できるように決定していきます。また受精確認は基本的に培養士からお電話で説明し、凍結確認は来院して、もしくは電話で培養士から説明しています。

顕微授精の受精率や胚盤胞到達率など培養技術に注目

体外受精をされた患者様は、ご自分の未来の赤ちゃんがまだ受精卵である時期、すなわち命がうまれる最初の瞬間から映像としてみることができ、それはとても神秘的なことだと思います。わが子の大事な瞬間を見守ってくれる、お世話してくれる培養士さんの存在をもっと身近に感じて、専門的なことも含め気軽に聞いてみてください。

病院を選ぶ際は、培養士さんのレベルの高いところが良い結果をもたらしてくれる病院だと思っていますので、顕微授精の受精率や胚盤胞到達率など培養技術に注目してみたらよいのではないかと思います。

絶大なる信頼をよせる「右腕」的な存在

私にとって、培養士の大谷さんは「右腕」的な存在です。技術力の高さを言うまでもありませんが、いつも温和なのに冷静で、仕事に対する自信と情熱、向上心を兼ね備えています。チームリーダーとしても皆の信頼を得ていると思います。

「皆で意見を出し合いながら」、患者に寄り添うチーム医療

当院の医師は2名体制で治療方針について、意見を出し合い検討し、共有しながら決定しています。そして医師、培養士、看護師、臨床心理士、受付スタッフが忌憚なく意見を出し合って、多くの患者様を妊娠という結果に導くため、不妊治療に納得して向き合っていただくための環境を整えるよう心がけています。

また当院のすぐ向かいには愛育病院があり、クリニックで妊娠した方をスムーズに安心して妊娠分娩管理に繋げることができます。妊婦健診や分娩を担当する医師や助産師とも、大きな意味で「チームあいいく」として治療内容の情報を共有することができ、分娩後にママになった姿や赤ちゃんを直接見せていただくことが当院のスタッフにとってもモチベーションにアップに繋がっています。

2001年鹿児島大学大学院農学研究科修了。2007年医療法人愛育会愛育病院およびレディースクリニックあいいくに入職。生殖補助医療胚培養士、体外受精コーディネーター(日本不妊カウンセリング学会認定)

誠意をもって患者さんと向き合う

培養士が患者様と接する機会は正直多くありません。しかし、患者様とお話しさせていただく時は、受精の報告や胚の発育、凍結状況の説明など治療過程で重要な部分を担っています。

良好な結果をお伝えできるように培養士は全力を注いでいますが、時には悪い結果をお伝えしなければならない時もあります。発する言葉次第では患者様を大変傷つけてしまう可能性もあります。そのため、私たち培養士が大事にしていることは、まず患者様がどんな思いで治療に臨んでいるのか気持ちを想像すること、そして患者様の立場に立ち、より丁寧な説明をした上で事実をしっかり伝える、患者様の話をじっくり聞き、もしご質問があればそれに誠意を持って対応するよう心がけています。

「人の話をよく聞く」、相手の立場になって考えてみる

院長からいただいた印象深い言葉の一つに「人を動かしたいなら、まずは自分の言動から」があります。培養士のリーダーとしてスタッフにこうあってほしいと思うとき、まず最初にこの言葉を思い出すようにしています。

部署が違ったりするとお互いの立場があり意見の相違が生じることがありますが、その時はまず相手の話をよく聞き、一度相手の立場になって考えてみることが大切だと思います。そうすることで他部署間でもいろいろな前向きな意見も出やすくなると考えています。

長く働き続けられる職場環境なので、技術が安定

当院の培養スタッフは私を含め6名在籍しているのですが、勤務年数25年以上の2名を始め、多くの方が長く働いています。彼女たちに話を聞くと「命に向き合うという仕事の重みを常に感じつつ、それがやりがいにもなっています。上手くいかなかった時は患者様と同様に辛い思いをすることもありますが、医師や他の胚培養士たちと、ひとりでも多くの患者さんが妊娠・出産できるように熱意をもって取り組んでいます」とのこと。

ベテランから若手まで、皆が勉強熱心で各自が責任感をもち、またスタッフたちが強い信頼関係を築けていることが当院の強みかと思います。さまざまな経験を積むことで技術を高め、患者様に安定した技術を提供し続けたいと思います。

 

―最後に、患者様へのメッセージをお願いします

体外受精・顕微授精で思うような結果がでない時は落胆したり悩んだり、良い結果がでた時はすごく喜んだり、陰ながらわれわれも患者様と同じように一喜一憂しています。受精から胚盤胞に育つまで僅か5~6日間ですが、その間、お預かりした赤ちゃんの源を大切に大切にお世話させていただいています。そこには胚培養士のいろんな思いがこもっています。その思いが良い結果を導いてくれると信じて日々頑張っています。

>全記事、不妊治療専門医による医師監修

全記事、不妊治療専門医による医師監修

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