【Q&A】2人目不妊について~滝口先生

AMHが低いと診断されたとき、誰しもが呆然としてしまいます。

そんな時、どんな方法で進んでいけばいいのでしょうか?

滝口修司先生に聞いてみました。

滝口修司先生 山口大学医学部医学科卒業。山口大学医学部附属病院、済生会山口総合病院、正岡病院などの勤務を経て、2012年より浅田レディースクリニックに勤務。2017年1月、故郷・広島の玄関口である広島駅前に「IVFクリニックひろしま」を開院。
※お寄せいただいた質問への回答は、医師のご厚意によりお返事いただいているものです。また、質問者から寄せられた限りある情報の中でご回答いただいている為、実際のケースを完全に把握できておりません。従って、正確な回答が必要な場合は、実際の問診等が必要となることをご理解ください。

はれさん(34歳)

34歳2人目不妊、不妊専門クリニックへ通院し5ヶ月、タイミング法をしています。
先日AMHを測ったところ、1.45と40代の数値と言われました。
元々高プロラクチン血症、フェリチン不足で薬を服用しプロラクチンは50→15に、フェリチンは5→87まで数値が改善しました。
その他の検査結果は特に問題ありませんでした。
排卵が最近早まっていたため、カウフマン療法をして排卵は14日目と正常に戻りました。
プロラクチンとフェリチンが整い喜んでいたのも束の間、AMHが低いことが判明し呆然としています。
治療方法は体外受精しかないのでしょうか?
金銭的に厳しく、人工授精かタイミング法までしか出来ないと考えています。

まず、プロラクチンについて。
高プロラクチン血症と不妊(卵胞発育障害、排卵障害黄体機能不全)との関係は古くから指摘されています。その一方で、プロラクチンは卵成熟や着床など妊娠成立に必要であることも知られており、プロラクチン値を下げれば良いというものではありません。しかも、プロラクチンは日内変動があり、また摂食などの刺激によっても容易に上昇するため、随時採血での高値をもって治療対象とするのは間違いです。最も重要なのは、下垂体腫瘍(微小腺腫を含む)を示唆するような異常高値を見逃さないことです。これらの下垂体腫瘍は妊娠成立後に増大する危険性があるからです
「はれ」さんのプロラクチン値50は、必ずしも下げる必要はありません。しかし、内服加療後の値が15ですから、このまま内服を続けても特に問題はありません。ただし、高プロラクチン血症が「はれ」さんの2人目不妊の主な原因とはなり得ないと思います。
次に、フェリチンについて。
フェリチンが低いということは、貯蔵鉄が少ないということなので、妊娠成立後に貧血が著明になることが心配されます。また、鉄欠乏と不妊、習慣流産の関係も報告されていることから、ヘム鉄などを摂取してフェリチン不足を改善することは大切です。ただし、フェリチン不足が「はれ」さんの2人目不妊の主な原因とはなり得ないと思います。
AMH値1.45 ng/mlについて。
AMHは卵巣予備能、つまり卵子の残り数や卵巣の反応性を表します。「はれ」さんは34歳ですから、AMH値1.45は34歳の平均値4.0と比べるとかなり低いと言わざるを得ません。ただし、これを40歳代の数値と言うのは、誤解を招く危険な表現と言わざるを得ません。正しくは、「卵子の残り数は40歳代の平均値かも知れないが、受精卵さえできれば34歳相応の妊娠率がある」「ただし、同年代の人よりは早く卵子がなくなる(妊娠できなくなる)かも知れないので、それを留意した治療計画(ステップアップを急ぐ)ことが大切」と言うべきと思います。
今後の方針について。
「はれ」さんはお一人お子さんがおられるということは、「はれ」さんご夫婦は本来妊娠可能なお二人なのです。それにも拘わらず半年間妊娠に至らないことの原因は、プロラクチンが高いからでも、フェリチンが低いからでも、AMHが低いからでもありません。お一人を妊娠してからの年月(時間経過)が卵子の老化を来し、そのため妊娠しづらくなっていると思われます。多くの場合、それは受精障害だと思いますが、断定することはできません。まずは一般的な検査を受けて、例えば卵管が閉塞していないか、などはチェックすることが大切です。卵管閉塞が見つかった場合、体外受精を勧められることが多いと思いますが、体外受精以外の選択肢として卵管鏡下卵管形成術も検討する価値があると思います。
ただし、おそらく一般的な検査では異常は見つからないのではないかと予想されます。これを、原因不明不妊といいます。
「はれ」さんは既に5ヶ月間タイミング法を受けておられますので、次のステップは人工授精になるかも知れません。人工授精で妊娠される方の多くは、初回の人工授精で妊娠されます。逆に、4~6回目までに妊娠しない場合、人工授精では妊娠が難しいと考えるべきです。その場合、おそらく原因は受精障害ですので、体外受精・顕微授精が望ましいと思われます。「金銭的に厳しい」とのことですが、2022年4月以降の保険適応がどのようになるか、あきらめずにじっくりと見極めて行かれると良いと思います。ぜひ、粘り強く頑張ってください。
>全記事、不妊治療専門医による医師監修

全記事、不妊治療専門医による医師監修

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