体外受精を行う場合、卵巣の刺激方法として大きくわけて低刺激と高刺激があります。そこで、ときわ台レディースクリニック院長の藤野剛先生にそれぞれの特徴を教えてもらい、そのうえで相談者さまの今後、どんな採卵方法を選択したらいいかなどをアドバイスしてもらいました。
今後の採卵方法と高刺激の体への影響について
低刺激の採卵方法と高刺激の採卵方法、それぞれの特徴を教えてください。
高刺激は、薬などを使ってたくさん卵子を育て、採卵する方法です。メリットは1回の採卵でたくさんの卵子が取れるので、それだけ妊娠する可能性が高くなります。デメリットは、卵巣を強く刺激する薬や排卵をコントロールする薬を使うため、体に負担がかかり、卵巣がふくれあがって水が溜まるOHSSなどのトラブルが生じることがあります。また、採卵時に局所麻酔を使うことが多いため、麻酔による副作用がみられることもあります。
一方で、低刺激は、高刺激に比べて使う薬の量を抑えるため体への負担は高刺激に比べて少なくなります。また、採卵を無麻酔で行う医療機関が多いため、麻酔による体の負担も軽減できます。デメリットは、採卵できる卵が高刺激に比べるときわめて少ないので、それだけ妊娠できる可能性が低くなります。
どちらの方法にもメリット、デメリットがありますが…
そうですね。上でも述べたように高刺激、低刺激それぞれ特徴がありますが、採卵できた卵子が多ければ多いほど、妊娠できる可能性は高くなります。だからといっても全員の患者さんに高刺激がいいかというと、そうではありません。
そのため当院では、基本は高刺激法での治療を提案しますが、患者さんの年齢やAMH、卵胞数、ホルモン値などを細かく確認。それぞれに合った刺激法や薬を選ぶなど、オーダーメイドの治療のやり方を提案しています。
今回の相談者さまの場合、高刺激のできるクリニックへの転院を検討していますが、先生のご意見をお聞かせください。
poppoさんが検討されているように、高刺激をやってくれるクリニックへ転院してみるのはいい考えだと思います。
1回目の採卵の際、4個中1つだけ胚盤胞になりましたが、そのグレードが5AAとのこと。グレードとしてはかなり良いので、poppoさんの卵子の劣化はそんなにすすんでいないと思われます。ただ良いグレードの胚盤胞でも染色体異常で着床できないこともあります。もし複数個胚盤胞ができれば、今回のように1つ着床できなかったとしても、まだ残りの胚盤胞があるため、再度、採卵からスタートしなくても妊娠できる可能性があります。そのためには、高刺激法でたくさんの卵子を育てて、1回でできるだけ多くの卵子を採卵しておくことが重要になってきます。
また、今だと通院に往復5時間かかっていますが、仮に今のクリニックと高刺激をやってくれるクリニックが同じくらいの距離にあるとするならば、高刺激で一度にたくさん採卵できれば、毎回採卵のために通院する負担も軽減することができるので、転院してみるといいでしょう。
精子採取の際に体液がまじると、受精できない原因になりますか。
精液に血液や汗などの体液がまじったとしても、問題ありません。採精した精液は遠心分離機にかけてきれいにし、精子だけを取り出して卵子と受精させているので、安心してください。
Poppoさんの持病であるバセドウ病は、不妊の原因になりますか。
バセドウ病は、不妊や流産、早産の原因の1つになりますが、薬でコントロールしていれば問題ありません。そのため不妊治療中、妊娠した後もきちんと処方された薬は服用するようにしてくださいね。