反復不成功後だけでなく、移植前に着床能を調べる検査を実施
効果と安全性が確認されれば新しい検査や治療も柔軟に取り入れているという松本レディースリプロダクションオフィス。卵子や胚の質を少しでも向上させるために、費用対効果も考えながらサプリメントも積極的におすすめしているそうです。着床外来も設置し、着床に悩む患者さんに対応。松本玲央奈先生に詳しいお話を伺いました。
ご希望があれば移植前の段階で着床に関する検査を提案しています
以前は反復着床不全といって、何度か良い胚を移植したのに結果が出ない方に「では、子宮の中を詳しく調べてみましょうか」と検査をご提案していたのですが、ある時、患者さんのほうから「そういう検査があるのならもっと前にやりたかった」というお声をいただきました。子宮の環境をより良くしてから胚を移植したほうが着床する確率が上がったのではないかと思います。
確かにその通りだという部分もありましたので、今は胚を凍結した段階で検査の資料をお渡しして、移植前に受けたいという方にはそのタイミングで実施するようにしています。
検査は1つだけやっても原因を探れないので、肉眼的に観察するもの、組織を調べるものなどいくつかの検査を組み合わせて行います。
まず行うのは子宮鏡の検査。着床には子宮内の環境が非常に重要なので、内視鏡を使って慢性子宮内膜炎の所見の有無、子宮内膜ポリープ、子宮筋腫の存在などを肉眼で見て診断します。
組織検査としては、慢性子宮内膜炎の有無を調べる子宮内膜組織検査(CD138染色)、細菌のバランスをみる腟培養検査、子宮内フローラ検査などを実施しています。
子宮腺筋症や子宮筋腫、内膜症性囊胞がある方には「シネMRI」検査を実施
また当院では、子宮腺筋症や子宮筋腫、内膜症性囊胞などがあり、着床に不安を抱えている方には「シネMRI」という検査も行っています。MRIの画像を細かく撮り、パラパラ漫画のようにして子宮の蠕動運動を見るのですね。異常な動きが亢進している場合はお薬で生理を止めて偽閉経状態にもっていき、病変の勢いを抑えたところで胚を移植します。子宮筋腫の場合は手術を選択することもあります。新しい検査ではありませんが、実施している施設はまだ少ないのではないでしょうか。
これらの検査を組み合わせることで、多角的かつ効率的に着床能を調べることができます。着床の環境を調べて改善することは妊娠にとって重要。早い時期にしておくことで治療の期間も短縮できるでしょう。検査の効果もあるのか、ご年齢問わず、当院の着床外来を経た患者さんの半数以上が無事妊娠・出産されています。
国内外で実績のあるバイアグラⓇ腟内投与に着目
卵子の質を上げるのはなかなか難しいことですが、少しでも状況を良くするために当院ではサプリメントを活用しています。胚質を向上させるために、また、良い胚がなかなか採れないという方にはメラトニンとコエンザイムQ10をおすすめしています。サプリメントなので効果には個人差がありますが、メラトニンは結構良い結果につながっているようです。さらに子宮内のフローラを整えたいという方にはラクトフェリンのサプリメントもご提案しています。
当院には漢方外来もあり、患者さんの希望があればご紹介することも。漢方薬には即効性はありませんが、体全体の調子を整えるためにはいいものかもしれません。冷え性や不眠などが改善されれば、妊娠にとっても良いスパイラルに入れます。
今後取り入れたい治療については、バイアグラⓇの腟内投与を考えています。血流が良くなって子宮内膜が厚くなることを期待しているのですが、この療法は国内外の臨床である程度成果を上げています。費用対効果も良いので、治療の選択肢の一つとして追加したいですね。
卵子と着床について先生のお考えを聞きました!
着床に有効と思われる検査や治療は?
子宮内フローラ 、 PRP 療法、エンブリオグルー、 ERA、ビタミンD、 PFC-FD 療法
慢性子宮内膜炎、 PGT-A、甲状腺機能
子宮鏡検査、腟培養検査、シネMRI など
AMH の数値と卵子の質は相関していると考える?
どちらともいえない。
一般的には関係がないといわれていますが、卵巣の機能が悪くて、AMH 値が低く、卵子の質も良くないというケースも少なくありません。
年齢以外の理由で、卵子の質が良くない人の共通点は?
子宮内膜症、PCOS の方が多いでしょうか。あとは原因不明になります。
採卵や高グレード胚盤胞ができない人へおすすめしているものは?
睡眠の質を高めること、バランスの良い食事、適度な運動、漢方、サプリメント
クリニックでおすすめしているサプリは?
メラトニン、ラクトフェリン、ビタミンD、コエンザイムQ 10