AMHの数値が低く、受精できても着床しない、胚盤胞まで育たないなどの理由の一つとなるのが患者さんの年齢。高齢で低AMHの場合、どんな治療法を選択すればよいのでしょうか。また、卵子の質を上げたり採卵数を増やす方法は? 鈴木レディスホスピタルの鈴木康夫先生に教えていただきました。

鈴木康夫 先生(鈴木レディスホスピタル)1990年金沢大学医学部卒業後、国立金沢病院(現・金沢医療センター)産婦人科勤務を経て、1996年に鈴木レディスホスピタル副院長、2008年より院長に就任。高度な不妊治療を行う専門機関として、タイミング法や人工授精などの一般不妊治療から、体外受精・顕微授精などの高度生殖補助医療(ART)まで、患者さん一人ひとりに向き合った丁寧な治療を提供している。

かれんさん(40歳)採卵6回で凍結胚盤胞は3個。体外受精1回目は2個移植を行いましたが着床することはなく、生理がきてしまいました。あと1つ凍結胚盤胞が残っていますが、あまりグレードかよくないそうです。新たに採卵を行っていますが、低AMHで採れる卵の数も1~3個。受精はしても、なかなか胚盤胞までは育ってくれません。採卵周期では、生理2~3日目からクロミッド内服、注射での刺激はできそうな時に時々という感じです。ERA検査もずれの異常なしでした。

40歳でAMH値0.13の場合、どのような刺激方法がよいでしょうか。

年齢的にAMH値も卵子の質も低くなっているのは否めませんから、あまり強い刺激はしないほうがよいでしょう。たとえば、飲み薬(クロミッドかレトロゾール)のみにするか、飲み薬を主体に服用開始3〜4日後から注射を2日に1回使用してみるという方法が考えられます。薬との相性には個人差がありますから、クロミッドを使用していて結果が出なければレトロゾールにする、あるいはその反対にすることを試すのも有効でしょう。

顕微授精を試してみることについてはどうでしょう。

たしかに、受精するか否かでいえば顕微授精のほうが受精率は高いです。しかし、体外受精のほうが受精率は低いけれど2日目以降の長期培養をするときれいな胚盤胞になり、妊娠につながることが多いという論文もありますし、私も実感としてそう思います。やはり、精子と卵子が融合する場所としては、最終的には自然により近いほうがいいということなのでしょう。

ただし、これはあくまでも卵子が充分に採取できる方の場合です。

妊娠の成立には多少の偶然性関与しますので受精障害がない方でも通常の体外受精で受精しないこともあります。

かれんさんのように採卵数が少ない方は1個しかとれない周期は顕微授精を試したり、もし複数個採れたなら体外受精するグループと顕微授精をするグループに分けて行う方法がよいかと思います。

ほかにも何かできる治療法はありますか。

今回のかれんさんのケースは、すべて凍結胚盤胞移植のようですが、凍結初期胚を試してもよいのではないでしょうか。胚盤胞よりも妊娠率は低いのですが、胚盤胞まで育てるには卵に多少なりともストレスが加わります。どれだけ培養液がよくても、タイムラプスで一度も外気に触れさせずに培養できるようになったとしても、やはり生体の環境に勝るものはありませんから、初期胚の段階での凍結も試していただきたいですね。

患者さんのなかには「凍結」という言葉にマイナスイメージをもたれる方もいますが、それは、家庭用の冷凍庫を思い浮かべるからですよね。家庭用は約−30度で、食品の細胞の周りに氷の結晶ができ、細胞が破壊されるため味や品質が変化してしまいます。ここで言う「凍結」は、氷の結晶ができないように受精卵を水抜き後、細胞保護液に置き換えてから−196度で凍らせる技術であり、半永久的に変化なく保管できるものです。ARTでの年間出生数約55,000人のうち8割は凍結胚移植という日本産科婦人科学会の統計でも明らかなように、日本の凍結技術は非常に高いということを知ってください。

最後にアドバイスをお願いします。

どうしても年齢的な要素はありますが、卵が採れるうちは胚盤胞まで育たたないなら初期胚で戻してみたり、二段階移植など、まだまだ試してもいいバリエーショはあると思います。そして、経済的肉体的負担を承知で言うならば繰り返し採卵を行い、採っては凍結、採っては凍結でストックを増やしていくという考え方もあります。

1回の採卵で複数とれることが理想ですが、それが困難であれば採卵回数を増やしてなるべく凍結胚を増やすというのも一つの方法だと思います。

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不妊治療に関するドクターの見解を取材してきました。