E2(エストラジオール)の数値について

PCOSのため刺激して卵胞が14mmに。でもE2が低いままです

福田ウイメンズクリニック福田 勝 先生 順天堂大学医学部・同大学院修了。米国カリフォルニア大学産婦人科学教室留学後、順天堂大学医学部産婦人科学教室講師を経て、1993 年福田ウイメンズクリニック開院。2018 年10 月に、より最寄り駅に近く、広々とした場所にクリニックを移転しました。
相談者 : しゃけさん(37歳) PCOS で重度の排卵障害です。ゴナールエフ® とHMG で刺激をして卵胞を育て、タイミング法で治療しています。排卵せずにリセットになることも多く、前回初めて無事に排卵しましたが、化学流産に。今回の周期は排卵した時と同じように注射で刺激し、卵胞が14mmまで育ち、他の卵胞もいくつか大きくなっていました。しかし、血液検査をしたところE2 は21.5pg/ml と低く、微量の出血も。ちなみに前回排卵した周期は、E2を測っていません。卵胞がしっかり育っているのにE2 が低いのはどういう状態なのでしょうか。

そもそも卵胞とE2 はどのような関係性があるのでしょうか?

福田先生●卵胞が発育すると卵胞からE2(エストラジオール)が分泌されます。卵胞がまだ小さいうちは少量しか分泌されませんが、卵胞が大きくなるにつれ、分泌されるE2の量も増加します。したがって、E2 の測定により卵胞の成熟度がわかります。

しゃけさんは、PCOSで重度の排卵障害のようですが、現在の治療法で気になる点はありますか?

福田先生● PCOS に対する治療の第一選択は排卵誘発剤のクロミッドRです。ただしゃけさんの場合、重度の排卵障害ということなので、クロミッドRでは卵巣がうまく反応しないのでしょう。そこでレトロゾールかつゴナールエフRとHMG を併用しているのだと思います。ただ、この場合は多胎妊娠と卵巣過剰刺激症候群(OHSS)のリスクに注意しなければなりません。インスリンなどの検査を行ったかはわかりませんが、メトホルミンの服用が有効の場合もあります。

卵胞が14㎜あるのにE2 が21・5pg/mlと低いままなのはどうしてでしょうか?

福田先生●今回のご相談の大きなポイントになりますが、卵胞14㎜はまだ成熟卵胞とはいえません。卵胞の大きさやその数とE2 の数値はある程度相関するので、「卵胞が未成熟= E2 の数値も低い」ということになります。一般的には16~20㎜ぐらいまで育ったものを成熟卵胞とみなし、H CG注射をして排卵させることになります。
 また、微量ですが出血があるとのことですが、これは少量のE2の分泌が長く続くことで、子宮内膜が剝がれる破綻出血を起こしているのでしょう。大きなダメージが加わったことによる出血ではないので、心配しないでください。

では妊娠に向けて、どんな治療をするのがいいのでしょうか?

福田先生●卵胞がもっと発育できるようにするのが重要です。そのためにレトロゾールと併用しているゴナールエフRという排卵誘発剤の注射量を増やし、長く注射する必要があります。
 また、腹腔鏡下で卵巣に小さな穴をあけ、卵巣内のホルモン環境を改善させる「腹腔鏡下卵巣多孔術」を受けるのも有効な手段です。手術後は、クロミッドRを服用しながらタイミング法にトライすることで、十分に妊娠できる可能性が出てくると思いますよ。
>全記事、不妊治療専門医による医師監修

全記事、不妊治療専門医による医師監修

不妊治療に関するドクターの見解を取材してきました。本サイトの全ての記事は医師監修です。