移植するも流産続き、AMHが低い場合、何個貯めれば安心?

限られた時間での不妊治療では、採卵と人工授精のタイミングの見極めが大事です。さらに、採卵数が少ない人がより質のよい受精卵を得るための方法とは? 普段から気をつけたい点について厚仁病院の松山先生にお聞きしました。

松山 毅彦 先生(厚仁病院  生殖医療部門)東海大学医学部卒業。小田原市立病院産婦人科医長、東海大学付属大磯病院産婦人科勤務、永遠幸レディースクリニック副院長を経て、1996 年厚仁病院産婦人科を開設。厚仁病院理事長。日本産科婦人科学会専門医。日本生殖医学会生殖医療専門医。

ドクターアドバイス

新たな検査を試してみる。

男性側の検査も検討。

基礎体力を上げる努力を!

にいなさん(40歳)からの相談   AMHが低く1回あたりの採卵数が少ないなか、何度か採卵を行い、4年をかけて1個の初期胚と4個の胚盤胞を得ました。しかし、胚盤胞を凍結胚移植するも1回目は化学流産、2回目は心拍確認後に稽留流産、3回目からはアスピリンを服用しましたが判定日からhCGが低く、遅い胎囊確認後に稽留流産、4回目は心拍確認後に稽留流産という結果になりました。残すところ初期胚1つだけになったのですが諦めきれず、採卵を再開しようと考えています。しかし年齢のこともあり、今から十分な胚が得られるかも不安です。何個貯めれば移植に進めるでしょうか。ほかにも今からできることがあれば教えてください。

採卵は早ければ早いほうがいい。移植よりも採卵を優先

般的に、胚盤胞が何個貯まれば移植を始めるべきだといわれているのでしょうか。また、にいなさんのように1回あたりの採卵数が少ない場合、一定数の胚盤胞を得るまで何年も待たなければいけない可能性があり、移植の際に不利になるのではとも思います。

胚盤胞が「何個」とは明確に申し上げられませんが、やはり、にいなさんが移植された時のように3〜4個くらいは必要かと思います。

AMHが低めの方は、1周期あたりの採卵数が少ない傾向があります。一般的に、採卵ができても、すべてが胚盤胞にまで発育できるわけではありませんので、妊娠の可能性を高めるには確保する卵子の個数を増やす必要があると思います。

また、採卵できる個数は年齢が上がると減ってきますので、できるだけ早く採卵を何回か行うことをおすすめします。年齢を重ねるごとに採卵数は減っていく傾向がありますが、子宮の内膜は健康な方なら年齢が上がっても着床率はそれほど変わらないといわれています。ですから、まずは採卵を優先したほうがいいと思います。

年齢以外の要因もあると考えあらゆる検査をしてみるべき

40代でAMHが低い方の場合、採卵数を増やすためにどのような対応策をとればいいでしょうか。

40代になると、にいなさんのような状況の方は珍しくありませんし、当院の患者さんにも多いです。それを踏まえて、その方の体の状況に合わせて対処していくわけですが、まず、その状況を知るための検査をしたほうがいいでしょう。にいなさんの場合、必要だと思われる検査を一通りされているようですが、そのような方に近年、私が提案することが多くなった検査をいくつか紹介したいと思います。

まず、子宮内フローラ検査があります。これは子宮に存在する菌の環境を確認するものです。子宮内の善玉菌が減少すると、着床から生児獲得までに影響を与えるとの報告があるため、流産を繰り返す場合は検査してみる価値はあります。

また、着床の窓が合っているかどうかを確かめる子宮内膜着床能検査(ERA)もあります。子宮内膜に受精卵が着床できる時期は個人差があって、適切な時期に移植することにより妊娠率が上がるといわれています。良質な受精卵を複数回移植しても妊娠に至らない場合は、着床の窓がずれている可能性も考えられるのです。

自身の基礎体力アップや男性側の検査などやれることは多い

にいなさんのような40代の女性が妊娠しやすくなるために必要なことを教えてください。

先ほどお話しした検査をしながら、十分な睡眠と栄養を摂り、適度な運動をするなど、体力づくりをしたほうがいいでしょう。

また、卵子側の理由だけではなく精子側の理由も考える必要があります。精子のDNAの断片化率が上がると、胚盤胞に到達しにくいことがわかってきました。精子の検査も数、運動率等だけではなく、その能力も検査できる時代になってきています。こうした男性側の原因は、これまであまり重視されず、当院も最近になってようやく導入できましたが、新しい切り口で原因が突き止められると、解決の糸口を見つけやすいと思います。

先生から

自身の体力づくりと並行して、あらゆる検査を通してさまざまな原因を探りましょう

>全記事、不妊治療専門医による医師監修

全記事、不妊治療専門医による医師監修

不妊治療に関するドクターの見解を取材してきました。本サイトの全ての記事は医師監修です。