体外受精・顕微授精における受精卵(胚)の詳しい説明が聞きたい

「できるだけ早く赤ちゃんが欲しい」、「年齢的にもそろそろステップアップを考えたい」と思っても、今さらちょっと聞きにくい高度生殖医療(ART)のこと。体外受精と顕微授精はどう違うの? どちらが妊娠しやすい? 私たちにはどちらの方法が合うの? 浅田レディースクリニックの浅田義正先生に伺いました。

浅田 義正 先生 名古屋大学医学部卒業。1993 年、米国初の体外受精専門施設に留学し、主に顕微授精を研究。帰国後、日本初の精巣精子を用いた顕微授精による妊娠例を報告。現在、愛知県の勝川、名古屋駅前のほか、昨年5月には東京・品川駅前にもクリニックを開院。

体外受精と顕微授精どちらを選ぶべき?

「体外受精」では、採取した卵子を精子と同じ容器に入れて受精を待ちます。「顕微授精」では、元気な精子を1つ選び、顕微鏡下で卵子に直接注入します。

顕微授精は、受精障害がある場合、卵子や精子が少ない場合に特に有効です。海外では、「体外受精と顕微授精の妊娠率に大差はない」とする医師もいるようですが、当クリニックでは顕微授精のほうが約15%高くなっています。

受精卵(胚)はその後、5~6日間かけて胚盤胞になるまで培養し、凍結させたのち、次周期以降に凍結胚を融解して子宮に戻します。これが「胚移植」です。

しかし、体外受精・顕微授精で手助けできるのは、受精卵をつくるところまで。その後の受精卵が胚盤胞まで育つのは、残念ながらそのうちの半分以下です。ご夫婦の年齢、遺伝子の相性など、たくさんの要因が影響するため、培養期間中に成長が止まってしまうことも少なくありません。

受精卵は、長らく「形のよいものほどグレードがよい」と見た目で判断されてきましたが、近年では着床前診断でPGTーAという受精卵の着床前胚染色体異数性検査も行えるようになりました。

生殖医療も日進月歩。患者さん自身ができることは、確かな技術力と最新の機材が備わっているクリニックを選ぶことだけです。どうぞ信頼できる医師のもと、納得したうえで治療してください。

●KOMOREBI Terrace(木漏れ日テラス)

浅田レディースクリニックでは、培養室が見えないことへの患者の不安を取り除くため、「見えるLab®」に取り組んでいます。KOMOREBI Terraceから「生命を育む森」である培養室を見てもらうことで、「赤ちゃんを望むことをもっと身近に感じてほしい」と考えています。KOMOREBI Terraceでは、人と人とのつながりを感じてもらえる「ほっとする空間」を目指しています。

●受精卵が胚盤胞になるまで

受精から約1日後に、受精卵(胚)は培養液の中で前核期2分割卵になります。2日後には4分割、3日後には8分割卵になります。以前は初期胚移植としてこの段階で移植されることもありましたが、現在では約5日後の胚盤胞になるまで培養を続け、それを凍結して適切なタイミングで移植するのが主流です。その成長過程は定期的に撮影・記録され、もし胚盤胞まで育たなかった場合でも、どの段階で不具合が生じたかがわかるようになっています。胚の培養は熟練したエンブリオロジスト(胚培養士)が担当しますが、失敗は許されない神経を使うストレスフルな作業です。「見えるLabⓇにしたのは、患者さんが自分の受精卵がどこで、どのように培養されているかを見られるようにしたかったとともに、スタッフが気持ちよく働ける空間にもしたかったから」と、浅田義正先生。

●「良好胚」とは?

規則的に分割し、細胞分裂した際のそれぞれの細胞の大きさが均一で形が整っていて、フラグメントと呼ばれる細胞の破片が少ないことが「良好胚」とされます。胚の発育スピードも重要なので、タイムラプス(定期撮影)で記録します。しかし、フラグメントがあっても着床する胚はあり、受精卵の形が多少いびつだったとしても、正常に妊娠・出産するケースも多々あります。「良好胚だと思ったのに妊娠しない、逆に良好胚でなかったのに妊娠するケースもあります。なので、ご自身の受精卵が良好胚でなかったとしても悲観しないでください。そこが生命の神秘でもあり、不妊治療の難しさやもどかしさでもあります。私たち生殖医療従事者は、日々経験を積み、技術を磨き、真摯に取り組むしかありません」(浅田義正先生)。

培養3 日目受精卵の評価方法

細胞数・細胞の大小不同・フラグメントの程度を総合的に評価し、A~Eの5段階で評価します。

細胞数➡通常6~9細胞に成長

細胞同士の大きさ➡均一なほど良好

フラグメントの量➡少ないほど良好

※フラグメント:受精卵が分割をする際に発生する細胞断片

 

>全記事、不妊治療専門医による医師監修

全記事、不妊治療専門医による医師監修

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