4CCや4BCの胚盤胞と グレード1の初期胚、 妊娠率が高いのはどっち?

いくみさん(35歳)からの相談 Q.通院しているクリニックでは、評価がCCであろうと、やはり初期胚よりも胚盤 胞のほうが妊娠率が高いという見解ですが、いろいろ調べてみると「胚盤胞のグ レードがCCの場合は、染色体異常や流産の確率が上がる」という情報があるた め、少し心配になりました。G1やG2のグレードが良い初期胚と、BCやCCな どのグレードの胚盤胞を比べた場合、どちらが妊娠率が高いといえるのでしょう か。クリニックの培養士さんには「胚盤胞までなっているので、4CCだったとし ても、今ある初期胚よりは妊娠率は高い」といわれました。現在、凍結中の受 精卵は、G1、G2の分割胚が1個ずつ、4BCと4CCの胚盤胞が1個ずつ、計 4個あります。次はどの受精卵を移植したらいい? また、着床率を上げるため にはエンブリオ・グルーなども効果的なのでしょうか。
北村 誠司 先生 慶應義塾大学医学部卒業。1989年からIVFおよび内視鏡手術に 従事。子宮鏡下手術による胚移植の改善や、腹腔鏡下手術による 子宮筋腫、内膜症の解消・改善を積極的に図ると同時に、妊娠困 難症例に対しても新しい治療を取り入れて対応。本院(荻窪病院) 泌尿器科の男性不妊専門医の協力により、TESE-ICSIや逆行性 射精など、男性不妊の治療体制も整えている。「タイムラプス・エン ブリオ・モニタリングシステム」は2016年の5月から導入。情報量 が増えるので、これまでより受精卵の状態がわかってくるようになった とか。高齢の人や反復不成功の人におすすめしているそうです。

胚盤胞は4CCと4BCのものを凍結してあるそうですが

、これらのグレードについてどう思われますか。
北村先生 まず4CCについてですが、このグレードだと着床する可能性が非常に低く、凍結しても変性してしまうリスクが高いので、移植の対象になることも少ないと思います。
もちろん施設によって見解が違うので、なかには4CCの胚盤胞でも戻すケースはあると思いますが、やはり「4CCでは移植しても厳しい」というのが標準的な考え方だと思いますね。
培養士の方の言葉には少し疑問を感じます。
4BCの胚盤胞の場合、当院の妊娠率はだいたい 10 ~ 13 %程度。
BCのCの部分 は胎盤になるほうの細胞で、Cのレベルではその数が少ないということです。
妊娠率は低いのですが、可能性はゼロではないので、戻すか戻さないかは施設によって意見が分かれるところでしょう。

それらのグレードの胚盤胞を戻すより、良い状態の初期胚を選んだほうが妊娠の可能性は高まるのでしょうか。

北村先生 初期胚がグレード1ということは、きれいに分裂して7~8細胞までいっているのではないでしょうか。
それだったら、当院なら初期胚で戻すことを検討すると思いますね。
胚盤胞のグレードが4CCレベルだと、染色体の異常が多く、流産の率がかなり高まるといわれています。
中身を詳しく調べるためには着床前診断をしないとわかりませんが、「タイムラプス ・ エンブリオ ・ モニタリングシステム」なら、培養段階でもある程度、いいものかどうか選別することができます。
これは 24 時間継続して受精卵の観察が 可能な培養器なのですが、4BCや4CCだと多核だったり、受精する時間や第一分割の状況が悪い場合が多い。
あくまでも見た目の評価ということになりますが、やはり見た目が良くない受精卵は中身も良くないことが多いように思います。
初期胚でもそれほど妊娠率が低いわけではないので、「もしかしたら途中で成長が止まってしまうかもしれない」というマイナスの可能性を考慮しても、グレード1の初期胚を移植したほうが妊娠を期待できると思います。

エンブリオ ・ グルーについては、どのような考えをおもちですか?

北村先生 やった方とやらない方に大きな有意差はありませんが、妊娠率は数パーセント上昇するようなので、当院では移植する方全員に実施しています。
エンブリオ ・ グルーは粘度のある、いわゆる接着剤のようなもの。
使うことにより、受精卵が子宮内膜に接着している時間が長くなると思います。
極端な効果はなくても、着床を促すためにできることの一つだと思うので、「今できることはすべてやる」という意味では、おすすめしたいと思います。
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