採卵と卵管水腫手術 どちらが先か 迷っています

内田 昭弘 先生 島根医科大学医学部卒業。同大 学の体外受精チームの一員として、 1987年、島根県での体外受精 による初めての赤ちゃん誕生に携 わる。日本産科婦人科学会、日 本不妊学会、日本受精着床学会、 日本更年期医学会に所属。島根 県松江市出身。趣味は休日のゴル フ。熱帯魚も好きで、疲れたとき は魚たちに癒されているそう。
zumiさん 36歳 Q. 10 年ほど前から不妊症の治療に通い、 体外受精、胚移植を繰り返しましたがダメでした。 今夏に4回目の体外受精を考えていますが、 その前に卵管水腫の手術を、と考えていたら、 採卵が先と言われました。 一般には、手術を優先すると思うのですが?

採卵?卵管の手術?

zumiさんは、卵管水腫と診断され、転院前の病院では手術を先にするようにすすめられましたが、現在のクリニックでは採卵が先だと言われて悩んでいます。
内田先生 一つは「卵管水腫手術」、これは子宮の環境づくりのこと。そして「胚盤胞培養(移植)の持つ意味」がキーなのかなと思います。
つまり、「胚盤胞培養ができて胚盤胞に発育していく受精卵がしっかり得られれば、子宮の着床環境はその後でいくらでもつくれるよ」と、おそらく転院先の医師はお考えなのでしょう。

採卵を重要視するのは?

まず採卵することが先だということですが、なぜですか?
内田先生 zumiさんの場合、まず年齢的なことが考えられます。現在 36 歳ですので、できるだけ若いうちでの採卵がいいでしょう。良い条件の胚盤胞を確保すれば、妊娠の可能性も高いということです。これは内田クリニックでも同じ考えです。

採卵後は凍結保存をしておいて、子宮の環境を整えてから胚盤胞をゆっくり戻してやればいいのです。

アメリカでは、すでに 50 代の女性 への提供卵子のプログラムが行われています。これは、 20 代の女性の卵子とご主人の精子から得られた受精卵を、 50 歳の女性に移植して妊娠させるものです。つまり、極端な言い方をすれば、zumiさんも 36 歳のときに採卵して得られた胚盤胞で、子宮環境が整えられれば 50 歳になってからでも移植ができるということです。
内田クリニックでも、先に良好な胚盤胞を得るために採卵をしてから、子宮環境を整えることをおすすめします。
卵管水腫の症状ですが、月によって違うのであれば、排卵誘発剤の影響なども考えられます。胚盤胞を戻すタイミングで手術しなくてすむ可能性も考えられますね。  
いろいろな治療方針があると思い ますが、転院先のクリニックの診断を拝見すると培養環境をしっかり整え、自信を持たれている施設という見方もできるでしょう。今通院されているクリニックの医師を信じて、ストレスをためないで治療を続けてください。
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