Q 黄体ホルモン製剤服用後、 不正出血が続き不安です
岩政 仁 先生 熊本県出身。1984年熊本大学医学部卒業後、1990年同大学 院博士課程修了、医学博士取得。大学院での排卵にかかわる研究 で日本産科婦人科学会学術奨励賞受賞。1996年に熊本で初めて 顕微授精胚移植による妊娠に成功。2007 年に「ソフィアレディー スクリニック水道町」開業。「人の喜ぶ顔が見たい」がモットー。
目次
ドクターアドバイス
●不正性器出血は、排卵障害だけでなく異常妊娠の可能性も。迅速に診療へ。
●自分がどんな治療を受け、何を処方されているか把握しましょう。
さくさん(25歳)からの相談 Q.現在妊活中なのですが、排卵誘発剤とプロゲストンⓇを 服用しています。8/10からプロゲストンⓇを飲みはじ め、8/13におりものに血が混ざったような出血があり、 その後から茶色の出血とピンクの出血が少量続いていま す。インターネットで検索をすると「プロゲストンⓇを飲 んでいると服用中は生理はこない」とばかり出てくるの で、病院に行ったほうがいいのか不安になっています。 今月の生理予定日は8/8からでしたが、遅れていたの でプロゲストンⓇを処方されました。生理予定日からずっ と胸が張っていて、生理の腹痛のような鈍痛が続いてい ます。ただ単に生理が遅れていただけなのでしょうか。 ホルモンやその他の血液検査は異常なしでした。
排卵誘発剤と黄体ホルモン製剤を同時服用 することは一般的な治療法なのでしょうか。
岩政先生 排卵誘発剤は「卵子を育てる 薬」、黄体ホルモン製剤は「黄体機能不全治療のための薬」で、医師や医療機関の方 針により使う薬が違うこともありますが、 その組み合わせは特に問題ありません。黄 体ホルモン製剤の副作用には、月経前に起 きるようなむくみ・乳房緊満感などがある ので不安だったのは理解できます。
不正性器出血とはどのようなもので しょうか。
岩政先生 不正性器出血の原因は多岐にわ たります。機能性出血といって、ホルモンバ ランスの崩れで起こる出血。排卵時期に起こ る出血、黄体機能不全による月経前の少量の 出血。ほかにはホルモン製剤の影響や、排卵 が起こらず出血してしまう「破綻出血」など もあります。何らかの原因となる疾患があっ て出血する場合は、器質性の不正性器出血と いい、子宮頸管ポリープ、子宮内膜ポリープ、 子宮筋腫、子宮がんなどが原因として考えら れます。また、妊娠に関する出血として、流 産による出血や子宮外妊娠(現在は異所性妊 娠といいます)による出血などもあります。
今回の出血について教えてください。
岩政先生 さくさんは排卵誘発剤を投与さ れ服用しているので排卵障害の可能性が 考えられます。がしかし、ホルモンの採血 では異常がないことから、排卵障害までは いっておらず、排卵誘発剤を用いて過排卵 刺激を行い妊娠しやすくしようという治 療だったのかもしれません。
今回の出血は、①排卵誘発剤の効果が認め られず、黄体ホルモンを内服しても子宮内 膜が継続できない「破綻出血」、②月経予定 日を越えていることから、実は月経が始まっ ているのに黄体ホルモン剤を飲んだことで 起こった少量の出血、③流産による出血や子宮外妊娠での出血などが考えられます。
患者様のなかには、ご自身の状態がよく わからず、お薬の服用や治療を医師の言う 通りに任せたままにしてしまう方が時々い らっしゃいます。さくさんにお願いしたい のは、不妊治療は必ずしもよい結果が出る とは限らないので、なぜそれが必要か、今 自分がどういう状態にあるかということを、 ご夫婦でよく考えていただきたいのです。
この状況でもし私が診させていただくな ら、まず妊娠反応を確認し、超音波検査も 並行して行います。これでもし妊娠してい たら、不正出血は「異常妊娠」となるので、 子宮外妊娠などの可能性を考え、早急に検 査・治療も必要になるでしょう。不正出血 が起こってしまったら悠長に構えてはいけ ません。
先生からのアドバイスをお願いします。
岩政先生 不正出血などがあった時は素早 い対応が大切です。その不正出血は、排卵 障害かもしれない、妊娠かもしれない。少 しでも不安に思われるなら、早く病院へ行 きましょう。治療内容に関してもご自分の 状態をよく把握していただき、不安が起こ らないようにしていただきたいと思います。