初めての人も安心して治療をスタートするために

苔口昭次の不妊治療講座

不妊の原因はおもに「卵管因子」「排卵因子」「子宮因子」「男 性因子」の4つに分かれます。

検査でそれぞれの原因が見つ かった場合は、どんな治療を行うのでしょうか。

第2回は原 因別の治療について、苔口昭次先生にお話を伺いました。

 

苔口 昭次 先生 1984年、宮崎医科大学を卒業。卒業と同 時に岡山大学医学部産婦人科学教室に入 局。高知県立中央病院産婦人科勤務、神 戸掖済会病院産婦人科部長を経て、2004 年9月より英ウィメンズクリニック勤務、 2013年3月に院長就任。

「不妊原因別の治療のすすめ方」まとめ

●卵管の詰まり具合によっては、FT法や体外受精が有効です。

●PCOSの治療は、生活習慣の見直しとお薬の連日投与を行います。

●多発性筋腫や子宮内膜症の場合は、体外受精で治療前に受精卵を確保。

●精子所見に少し問題がある方は、禁煙と泌尿器専門医の受診を。

卵管の狭窄や 閉塞の場合の治療について

当院では通水検査、子宮鏡検査、卵管造影検査の3つを行い、卵管の詰まり具合を調べます。卵管が狭窄していて、通水検査を3回行っても妊娠しない場合は、FT法(卵管鏡下卵管形成術)をおすすめします。

FT法は、卵管鏡を内蔵したバルーンカテーテルを子宮から卵管に挿入して卵管内部を観察します。同時にバルーンを押し進めて閉塞している部分を広げる手術です。卵管の問題は、子宮に近い卵管の近位部に見られることが多く、FT法が効果的です。術後の妊娠率は 30 %程度で、そのうち 90 %の方が6カ 月以内に妊娠されています。人工授精などさまざまな治療を行っても妊娠しない場合は、体外受精をおすすめします。

FT法はおもに 38 歳くらいまでの比較的若 い方を対象にしていますが、それ以上の年齢の方には相談して行うこともあります。たとえば、当院では体外受精からFT法にステップダウンをする場合です。この選択により 43歳で妊娠された方もいます。

●FT法と効果

円筒状のバルーンカテーテルの内腔に、内径 0.5mmの微細なファイバースコープを挿入し、加 圧式のフレキシブルなバルーンカテーテルを卵 管内に押し進めることにより、卵管形成を行い、 同時に卵管内腔を観察する方法です。カテーテ ル外径は1.2mm。原則外来日帰り手術(静脈麻酔 を実施)とし、FT法は卵管鏡バルーンカテー テルシステム(テルモ社製)を用いて行います。

PCOSなどで排卵に問題が ある場合の治療について

正常な月経周期は 28 〜 32 日で安定しています。月経不順・排卵障害がある場合は長期間放置すると妊娠しにくくなる可能性がありますので、早めの受診をおすすめします。BMI(体格指数)が 18 ・ 5 以下のやせ型の人も注意が必要です。ダイエットなどで1カ月に2〜3㎏減量すると脳・視床下部がダメージを受け、月経不順になることがあります。体重が戻っても妊娠しやすい体に戻るまでに時間がかかりますので気をつけましょう。月経不順・排卵障害の方には、排卵誘発剤を毎月投与して排卵を促す治療を行います。

また、月経不順がある方の 5 〜 10 %にPC OS(多嚢胞性卵巣症候群)が見つかります。PCOSは運動不足、喫煙、脂質の多い食事など生活習慣の乱れによって起こりやすいため、まずは生活習慣の改善を促します。それで妊娠に至らない場合は、内服薬を使います。お薬の種類には保険が利くクロミッドⓇと、利かないレトロゾールがあります。最近の報告ではレトロゾールのほうが累積妊娠率は高いといわれていますので、当院ではレトロゾールを使用する場合もあります。それでも結果が出ない場合は、ゴナールエフⓇという自己注射の少量連続投与を行います。たとえば、ゴナールエフⓇの連日投与と人工授精を加えた治療を3回行っても難しい場合は、体外受精をおすすめします。

子宮筋腫や子宮内膜症がある 場合の治療法について

子宮筋腫には「粘膜下筋腫」「筋層内筋腫」「漿膜下筋腫」の3つがあります。なかでも妊娠の妨げになりやすいのは、粘膜下筋腫と筋層内筋腫です。筋層内筋腫は7㎝を超えると手術することがあります。粘膜下筋腫は通常1〜2個のことが多いですが、5個以上ある多発性筋腫もあります。小さな筋腫でも子宮内腔に突出して着床の妨げになるので、最初から手術をおすすめすることがあります。とくに多発性筋腫は再発率が高いので、再発する前に妊娠をめざすことが重要です。術後3カ月から妊娠・出産が可能ですので、年齢にもよりますが、体外受精で卵子を手術前に確保して術後に移植する選択をおすすめしています。

子宮内膜症がある方は、自然妊娠をめざす場合、子宮内膜症がない方に比べて 1.5 〜10 倍妊娠しにくくなるといわれています。ある文献によれば、子宮内膜症があると卵管の中に卵子を取り込めない可能性は 64 % ともいわれています。子宮内膜症の治療は、体外受精で卵子を確保してから妊娠をめざしていくのが一般的です。子宮内膜症がある方は体外受精で卵子の質が悪くなるという報告もありますが、当院では卵子の質にはほとんど影響がないと考えています。

男性に原因があった場合の 治療法について

精子の正常値は濃度 4000 万個/ml 、 運動率 50 %が目安ですが、当院には濃度 3000 万個/ml 、運動率が 30 〜 15 %など、 正常値よりやや低い方が多く来られます。このような方の場合、原因のひとつに喫煙が考えられます。喫煙は精子によくないといわれていますし、禁煙しても1年程度は精子への影響が残りますので注意が必要です。

また、数値が正常値よりも微妙に低い方の なかには、精索静脈瘤が見つかることがあります。精索静脈瘤は睾丸に流れる静脈のこぶのことで、精子所見が悪い方の5人に1 人に認められます。そもそも睾丸は 32 ℃程度に保つ必要がありますが、 37 ℃以上に 温めてしまうと静脈が肥大し、精子所見に影響することがあります。とくに2人目不妊の方などは、年齢とともに精索静脈瘤も悪くなっていきますので、泌尿器専門医の受診をおすすめします。2018 年4月から精索静脈瘤の手術が保険適用になりましたので、4万円弱程度の自己負担で手術が可能になり、早期の回復が期待できます。

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不妊治療に関するドクターの見解を取材してきました。