Q 黄体ホルモンの不足は 流産の一因になる?

臼井 彰 先生 東邦大学医学部卒業。東邦大学大森病院で久保春海教授の体外 受精グループにて研究・診察に従事。医局長を経て、1995年より 現在の東京・亀有にて産婦人科医院を開業。腰痛以外は元気その ものという臼井先生。少しでも腰の痛みを軽減するために、バランス ボールを使って体幹を鍛えるトレーニングを計画中だとか。

ドクターアドバイス

●黄体ホルモンは妊娠の維持に必要。足りないと流産につながることも。
●自然周期で妊娠したのなら、黄体ホルモンはしっかり上がっていたはずです
maiさん(37歳)からの相談 Q.先日、2 度目のAIHが台風の影響でできず、タイミング 法に切り替えたところ、病院で妊娠の陽性反応が出まし た。しかし数日後、胎のうが確認できないまま出血し「初 期流産かも」といわれました。また4日後に病院へ行く 予定ですが、現在、出血量も増え、もうダメだろうと諦 めています。しかし、1つ疑問があります。黄体ホルモ ンが不足しているとの診断を受け、半年程前からHCGと デュファストンⓇを処方されていたのに、今回デュファスト ンⓇが出されていなかったのです。病院に電話したら「今 回はAIHではないので必要ない」と。黄体ホルモンの不 足は流産の一因になると聞いたことがあるのですが、本 当なのでしょうか?

黄体ホルモンが不足すると妊娠しづら かったり、流産の原因になるのでしょうか。

臼井先生 黄体ホルモン(プロゲステロン) は、着床や妊娠の維持に欠かせない女性ホ ルモンです。妊娠が継続できない=流産の 一因になるといえるかもしれません。

黄体期(高温期)の中期で採血をして、 黄体ホルモンの値が 10ng / ml 以下の場合、 黄体機能不全という診断になるので、そのような場合は薬で黄体ホルモンを補充していきます。薬にはmaiさんが処方 されているデュファストンⓇという飲み薬、坐薬や腟剤のほか、HCG注射も黄体機能を賦活する作用があるので、機能不全の状態や程度によって、どのような形で補充するか決めていくことになるかと思います。

お薬を使っていけばほとんどの場合、黄体ホルモンの値は上がっていくので、心配されることはないでしょう。

今回、デュファストンⓇを処方されな かったから流産に至ったのではないかと疑われていますが。

臼井先生 確かにデュファストンⓇは妊娠しやすいように黄体ホルモンを上げる手助けになりますが、飲まないから流産したということはないと思います。残念ながら流産という結果になりましたが、妊娠されたということなら、補充しなくても黄体ホルモンはしっかり上がっていた可能性が高いですね。

排卵誘発剤を使ってずっとエストロゲンの値が高い状態だと、黄体ホルモンとエストロゲンの比が変わってきてしまうので、黄体ホルモンを補充したほうがいいのですが、自然周期だとエストロゲンの値は それほど上昇しないので補充の必要はあ りません。ですから、担当医の先生は「今回はAIHではないので必要ない」と判断 されたのではないでしょうか。

maiさんの年齢だと、どこにも異常が なくても約 20 %、 10 人のうち2人が妊娠し ても流産してしまいます。黄体ホルモン補 充をしなかったというより自然流産の可 能性が高いので、ここで立ち止まらず、次 に向けて頑張っていただきたいですね。

黄体ホルモン補充は今後も続けたほう がいいですか?

臼井先生 黄体ホルモンは周期によって変動することもあるので、心配なら毎月測定してもらうこともできると思います。

maiさんは一度測って黄体機能不全の傾向が見られたようなので、ずっと補充をされているのでしょう。長く服用しても体に悪い影響はないので、このまま補充を続けていってもいいのでは。

病院側も最善の方法をとっていると思いますが、モヤモヤが残るようなら疑問点をきちんと聞いて、治療の希望があれば申し出てもいいと思います。先生としっかりコミュニケーションをとって、納得できる不妊治療を受けていただきたいですね。

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