排卵誘発法の選び方に 「正解!!」はありますか?
HMG注射が効きにくい
女性機能はストレスが大敵。 無理のない 治療スケジュールを
クロミッドⓇで排卵誘発した際に卵胞が3個でき、お腹が張るということですが、そもそも 20 〜 30 個というレベルでなけれ ばお腹は張りません。可能性として、ミッフィーさんは便秘など別の問題があると考えられるでしょう。
卵胞ができやすい体質なら、HMGで卵胞ができないということはまずありえません。卵巣が腫れやすいことを考慮して、主治医がHMGを処方する前に何らかのホルモン剤などを処方したのかもしれませんね。月経周期が不規則な人には時折見られる症状ですが、ミッフィーさんは年齢的にもまだ 36 歳で月経周期が正 常ということですし、基礎体温も問題なさそうなので、HMGを使えば 20 個以上 の卵胞ができるはずです。今回の相談内容はあまり一般的な例ではなく、考えられるのは、その周期にたまたま調子が良くなかったということ。卵巣年齢に関しても、前回の検査から 10 カ月の間に特別なハプニングがなければ急激に変化しません。心配せず次回の周期に再チャレンジし、その際の注射の量を増やす必要もないでしょう。
女性の卵巣の機能は、周期によって状態がまったく違うことがあります。とても反応が良い周期もあれば、悪い周期もあります。ミッフィーさんもたまたま卵巣機能が低調だったと考えられ、このような時には無理をせずキャンセルして、卵巣を休ませてあげることが大切です。
補足的な事例として、全胚凍結自然周期胚移植についてお話ししましょう。顕微授精、体外受精、凍結胚移植の治療周期数は1:1:1と同レベルです。しかし、出産率は凍結胚移植が圧倒的に高い。その理由は明らかで、アンタゴニストやアゴニストなど作用の強い薬は黄体機能を障害し、着床しづらくします。良質の卵子の数を増やすために排卵誘発剤を用いますが、やはり子宮や卵巣には大きな負担がかかってしまいます。そのため、全胚凍結して薬の影響がなくなった周期に移植するのです。それだけ、女性の機能はストレスによって大きく左右されます。基本的な検査で数値が良好だと言われれば、常に状態が良いと思ってしまいがちですが、 35 歳を過ぎれば助成金が使える 回数も限られるということを考慮し、無理をせず、状態の良い時だけチャレンジする、そのような切り替えも大切ではないでしょうか。
良質の卵子 10 個を目標に 排卵をコントロールする
体外受精や顕微授精をする女性の年齢が35 歳以上で、不妊の原因が特に見当たらな い場合、クロミッドⓇなどを用いる低刺激はお勧めしません。日本産科婦人科学会のデータでも 35 歳以上は低刺激の妊娠率が調節刺 激の半分以下とはっきり示されているからです。ただし、卵胞の数が多くなりすぎてはいけません。理想は 10 個、多くても 15 個 まで。卵子自体の質も落ち、卵巣が腫れるという副作用があります。
排卵誘発剤は大きく分けて注射と飲み薬があり、注射はHMGとFSH。FSHは自己注射ができて150単位までは保険適用となり、男性不妊にも使えることが大きなメリットです。卵胞を刺激するLHが少ないので卵巣が腫れやすいタイプの人に向いているとも考えられます。別の観点では、HMGは閉経した経産婦の尿から製造しているため不純物を含み感染症のリスクが言われています。特に欧米では敬遠され、遺伝子組み換えのFSH製剤(リコンビナントFSH製剤)が主流になっています。しかし、FSHの金額はHMGの約3倍。OHSSのリスクなど特殊なケースの場合にFSHとHMGを使い分ける意味合いはありますが、一般的な体外受精や顕微授精での臨床的な差はほとんどありません。高額なのに結果が変わらないというのは患者さんにとって大きなデメリットになるでしょうから、どちらを選ぶのかを主治医としっかりと話し合って決めましょう。
排卵誘発法の一例として挙げられるアンタゴニスト法は、FSHもしくはHMGを使い、卵胞の大きさが 16 〜 18mm ほどになったらアンタゴニスト、続い てアゴニストを投与。これで卵胞の数を増やし、 10 個程度は採卵できるようにし ます。ミッフィーさんの場合も、この排卵誘発法が合っているような印象です。