治療をスタートしたばかりの頃は、わからない ことばかり。
不安や疑問を解消して安心して臨 めるように、不妊治療についてのA to Zをご 紹介。
1回目のテーマは自分でできる排卵日予 測の方法など、「正しいタイミングのとり方」に ついて。
秋山レディースクリニックの秋山芳晃 先生に、わかりやすく解説していただきました。
自分で排卵日を予測するためには、どのような方法があるのでしょうか。
排卵日を知る主な方法として、「基礎体温」「頸管粘液」「排卵日検査薬」の3つがあります。
それらについて簡単にご説明していきましょう。
■基礎体温
どなたでも手軽にできる方法ですが、これだけで確実に排卵日を推定するには難しい部分も。
基礎体温は毎周期同じではなく、前日の生活環境やアルコール摂取の有無、環境温度の変化など、様々な要因が影響を与えます。
また、この方法で推測される排卵日は体温陥落日、低温相最終日、高温相初日など、いろいろな説が。
超音波検査上の排卵日との一致率は体温陥落日で 28 %、低温相最終日で62 %といわれているので、基礎体温をみながらリアルタイムに排卵日を予知できることは少ないといわざるを得ません。
ただし、あとで「いつ排卵日であっ たか」を推測する参考にはなるので、次に述べる頸管粘液に注意する時期や、排卵検査薬の開始日を決める目安にはなると思います。
■頸管粘液
頸管粘液は子宮頸管から分泌される粘液で、排卵時期以外は粘り気がありますが、排卵日が近くなると分泌量が増えて、透明で伸びるおりものとして感じられることがあります。
この頸管粘液の変化も、基礎体温と併せて1つの目安になるでしょう。
■排卵日検査薬
これは、脳から分泌される排卵の引き金である「LH」というホルモンの上昇を尿で調べる検査。
採血して血中のLHを調べることが最も信頼性が高いと考えられますが、尿中のLHも血中のLHと比較的よく相関するといわれています(分泌ピーク時は、血液検査より数時間遅れるといわれています)。
状況により1日に2回行うと、より明確に診断できるかもしれません。
検査薬で陽性が認められた場合、2日以内に排卵する確率は 84 ~ 91 %という報告がありますが、排卵が極端に不規則な方などは検査開始時の判断が難しかったり、最後まではっきりした陽性にならないケースもあります。
■その他
排卵して生理が来るまでの期間は約 14 日間といわれています。実際には 11 ~ 17 日くらいと幅がありますが、生理が順調であれば予定の生理開始日から逆算して 17 ~ 11 日前までの間に、できるだけ多く性交渉を行うという対応もあるかと思います。
排卵日を意識しないで隔日、あるいは週2~3回性交渉を行っていくことは、タイミングを狙って性交渉を行う場合と妊娠率がほとんど変わらないという説も。
性交渉の機会が元々多く、不妊期間の短いご夫婦であれば、特に排卵日を意識しないで性交渉を持ち、数ヵ月様子をみていただいてもいいかと思います。
卵子と精子、それぞれの生存期間は?もっとも妊娠率が高いのはいつ ですか。
以前、卵子の生存期間は排卵後 24 時間といわれていましたが、現在では実際に受精能力があるのは8時間くらいと考えられています。
一方、精子は卵管の中では2日程度。
人工授精などで調整された精子は、もっと短くなるといわれています。
最も妊娠しやすい時期については、 データ(左上グラフ参照)によると、排卵日5日前から翌日まで妊娠例があり、最も妊娠率が高かったのは排卵の2日前。
次いで排卵日前日、排卵日3日前となっています。
排卵前々日から排卵日までが妊娠し やすいタイミングと思われ、この時期に複数回性交渉を持っていただくことで、頸管粘液や卵管内にフレッシュな精子が常に供給されている状況が作られやすいと考えられます。
毎日性交を行っても、精液所見はあまり増悪しないので、排卵前の性交は多いほうがいいかもしれません。
排卵日前の各日における性交による妊娠率
その周期に複数回の性交を行った場合の各日における妊娠率。排卵2日前が最も高く、次いで排卵前日、 排卵3日前となる。
年齢が異なっても同様の結果に。