原因を探るための精密検査とは?

さらに詳しく 原因を探るための 精密検査とは?

ジ ネ コ の ア ン ケ ー ト 結 果 に よ る と 不 妊 原 因 の な か で も っ と も 多 い の は 「 不 明 」で 、約 4 割 の 人 が 相 当 す る こ と が わ か り ま し た 。

一 般 検 査 で わ か ら な か っ た 原 因 を 究 明 す る 検 査 に は ど の よ う な も の が あ る の か 、フ ァ テ ィ リ テ ィ ク リ ニ ッ ク 東 京 の 小 田 原 靖 先 生 に お 話 を 伺 い ま し た 。

 

小田原 靖 先生 東京慈恵会医科大学卒業、同大学院修了。1987年、オーストラ リア・ロイヤルウイメンズホスピタルに留学し、チーム医療な どを学ぶ。東京慈恵会医科大学産婦人科助手、スズキ病院科長を 経て、1996年恵比寿に開院。治療以外でも患者さんのフォロー 体制が整っている同クリニック。毎月開催されるセミナーのほ か、疑問が残る場合は、専門のカウンセラーによる治療や遺伝、 心の悩みの相談も随時受け付けています。取材の2日前も湘南 でサーフィンをしてきたという小田原先生。同年代の大人サー ファーも多く、みんな腹筋パキパキで、いまだにやんちゃボーイ されているとか。お正月の波乗りも楽しみだそうです。
 

ドクターアドバイス

治療して初めてわかる こともあります

ケースによってはより詳しい検査をプ ラスすることも必要ですが、一般不妊 治療も高度生殖医療も、治療をしてい くたびにわかってくることもたくさん あります。

原因不明でも妊娠は十分可 能なので、あまり落胆せず、前向きに 進めていっていただきたいですね。

卵管の問題なら、内視鏡的な 検索で原因がわかることも

不妊治療を始める前の一般的な検査では、まず女性については卵巣のホルモンなどをみて卵巣機能の評価をしたり、子宮卵管造影をして卵管の通過性をみたりします。

男性は精液を採って、数や正常に動いているかどうかなど精子の状態を確認・診断。

またヒューナーテストという形で、精子が子宮頸管内にきちんと進入しているかを調べます。 

原因不明不妊のなかで、このような外からの一般検査では診断がつかず、さらにもう少し詳しい検査をするとわかってくるものといえば、やはり一番は卵管の問題になるでしょう。

子宮卵管造影は子宮内にシリコン製の柔らかく細いカテーテルを用いて造影剤を注入し、子宮の形や卵管の通過性を確認する検査です。

この検査で卵管の通過性が確認されたとしても、卵管の周囲に癒着を起こしていたり、軽度な子宮内膜症があることまではわかりません。

そこで、外からだけでなく、お腹の中から詳しい状況を調べるために、腹腔鏡による検査を行う場合があります。

これはお腹の数カ所に小さな孔を開けて内視鏡カメラを挿入し、腹腔内を観察する検査。

病変部の詳しい状況がわかるうえ、卵管の癒着を剥がしたり、子宮内膜症の焼却など、治療も同時に行うことができるんですね。 

また、腹腔鏡と同様の特殊検査として、子宮鏡というものがあります。

超音波でみて何か異常がありそうだけれどはっきりわからないという場合、子宮内に胃カメラのような細いファイバースコープを入れて、内部を観察します。

覗いてみると、子宮の中に小さなポリープがあったり、癒着が見つかることも。

これらが不妊要因になっているケースもあるので、原因不明不妊の方にとって、こうした内視鏡的な検索というのも解決への手段になるかと思います。

最近は腹腔鏡検査も日帰りでできたり、かなり細い内視鏡を使うなど、体へ大きな負担をかけずに受けることが可能になってきました。

うまく病変を治療できれば自然妊娠が期待できる場合もあるので、 35 歳以下の方にとっては治療の選択肢の一つとなるかもしれません。

しかしながら、色々な検査を行っても明らかな異常が認められないことも多くあります。

例えば卵管の機能や、受精、着床、あるいは卵子や胚の質、さらには卵質、胚質に対する加齢による影響などは検査で評価することが困難ですので、治療的なステップアップを図って進まざるをえない部分といえます。

着床障害を調べる先進検査 「PGS」「ERA」とは?

体外受精など高度生殖医療にステップアップしてからの精密な検査ですが、これは最後の段階、着床に障害がある場合に行われることがあります。

比較的良好な胚を何度戻しても妊娠に至らない、というような時、受精卵側と着床する子宮内膜側、両方について詳しく調べる検査が、海外では用いられるようになりつつあります。

体外受精においては胚盤胞(5~6日間培養胚)まで到達した胚を移植することが一般的になってきましたが、胚を連続的に観察するタイムラプスシステムの導入により、さらに良好胚を選抜することが可能になってきました。

また、海外では胚の一部を採取して染色体数を確認するPGSを用いて、高い着床率を得たという報告が多く認められます。

日本では未だ臨床応用が認められていませんが、早期の臨床応用が望まれます。 

一方、子宮内膜については子宮内膜組織診(日付診)という検査が昔から行われています。

子宮の内膜というのは排卵した後、徐々に厚くなって着床に適した状況をつくっていくんですね。

組織を採って顕微鏡で調べるとその進み具合がわかり、着床に理想的か、それとも障害を引き起こすような状態か、ある程度診断することができます。

ただし、体外受精の場合、この検査をしてもパターンに当てはまらないことが多々あるようです。

分類から大きく逸脱している場合でも結構妊娠率が高かったり……。

今でも着床障害の患者さんにおすすめることがあるようですが、用いなくなった施設も多いのではないでしょうか。

それに代わって新しく出てきた子宮内膜の検査に、ERA(子宮内膜受容能検査)というものがあります。

これは排卵時の内膜組織を採って、遺伝子レベルで着床可能な状態にあるかどうか調べるもの。何回移植しても不成功な方の場合、この検査で着床の部分がずれていたとわかることもあります。 

PGS、ERAなどの検査法はまだ日本では一般的ではなく、また、その有効性もまだ確定したものではありません。

今後、検査の効果が明確になれば国内でも可能となり、多くの施設に普及してくるのではないかと思います。

原因不明不妊でも 治療成績は変わりません

精密な検査をすることで原因が特定できればいいのですが、それでも解明されないケースも多く、また原因がある程度わかったとしても、ほかにも氷山の下に何かあるかもしれない。

残念ながら、現代の医療においても、不明なことはまだまだたくさんあるというのが現状です。 

ただ、原因不明不妊といわれても、落胆されることはないと思います。

体外受精まで考えた場合なら、原因不明であっても特に治療成績が下がるわけではありません。

妊娠する・しないは「原因がわからない」ということにそれほど左右されないということをご理解いただき、治療のつど、状況を分析しながら進めていっていただきたいですね。

年齢がまだ若く、これから本格的に治療を始めるという方は、原因不明でもステップアップ治療のやり方を踏まえていく考えで間違いはないと思います。

ペースやそれぞれの配分は一人ひとり異なっていくかもしれませんが、1ステップずつ確率の高い方法へ移行し、妊娠を目指していくという形が、基本的にはどなたにとっても妊娠への近道になるのではないでしょうか。

精密検査の種類

<卵管の問題>

 ● 腹腔鏡検査

● 子宮鏡検査  

<着床の問題>  

● 子宮内膜組織診(日付診)

● PGS(着床前診断)

● ERA(子宮内膜受容能検査)

 

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