赤ちゃんとママを守る葉酸

妊娠前からはもちろん、妊娠中も摂取を心がけて!常位胎盤早期剝離から 赤ちゃんとママを守る葉酸

妊活を始めたら、積極的に摂るべき栄養素のひとつとして知られる「葉酸」。

先天性疾患のリスクを下げるため、これまでは“妊娠初期”に特に重要とされ てきましたが、研究が進むにつれ“妊娠中”の摂取も大切と判明。

さらに、マ ルチビタミンと一緒の摂取でその働きは高まるとのこと。

日本医科大学多摩永 山病院の中井章人先生に、お話を伺いました。

日本産科婦人科学会第 69 回学術集会

去る 4 月 14 日に催された、公益社団法人日本産科婦人科学会第 69 回学術集会にて、日本医科大学多摩永山病院の中井章人先生よるランチョンセミナー講演がありました。

「サプリメントと周産期疾患」をテーマにした講演では、これまで妊娠初期に積極的に摂取するよう推奨されていた葉酸が、実は妊娠中にも摂るべきであること、また、さらに葉酸とともにマルチビタミンも併用することで、常位胎盤早期剝離といった妊娠後期の疾患のリスクを減少させることを示唆。

妊娠前から出産時まで、普段の食事では不足しがちな葉酸をはじめとした栄養素をどのように補うか、といったことも今後の課題として提議されました。

以下、今回の講演内容をまとめました

日本人は葉酸不足 サプリメントで補充を!

栄養面では、たんぱく質や糖質、脂質などは不足が少なく、カロリーが十分でも、葉酸をはじめとしたビタミン、ミネラルは不足しがちです。

これは妊婦に限らず、日本国民全体にいえること。

米国やカナダなどでは政策として、1998年から小麦粉やシリアルなどの主食に葉酸添加を義務付けたので、不足は解消傾向にありますが、日本においては2000年になってやっと厚生労働省が動き、「妊娠1カ月前から妊娠3カ月までは、健康食品等から1日400㎍の摂取を」という基準を設けました。

「葉酸不足による神経管閉鎖障害のリスク低減」のためですが、葉酸を含むビタミン B 群は、細胞分裂やDNAの複製といった代謝に深くかかわっているため、不足すると、妊娠にまつわる疾患以外の、さまざまな疾患に影響することも考えられます。

妊娠を希望される方はもちろんですが、病気の予防として、葉酸は万人が意識して摂るべき栄養素だと思います。

「安定期」までは胎児の問題 それを過ぎたらママの責任

妊娠 12 週までの流産は、胎児に染色体異常があることなどが原因で、防ぎようがありません。逆に、 12 週以降まで無事に育った胎児には、生きる力があるということ。

よく「安定期に入る」という言い方をしますが、実は大きな間違いで、そこからは胎児の力ではなく、母親の生活習慣が大きくかかわるのです。

特に気をつけてほしいのが栄養面で、流産・早産、胎児発育不全、常位胎盤早期剝離といった胎盤に関連する妊娠合併症は、葉酸の欠乏による胎盤の形成不全が原因で起こると報告されています。

150万例の統計から見ると、葉酸が十分な場合では早産率は 0 ・70倍、死産率は0・75倍、新生児死亡率も0・77倍と有意に減少しています。 

また、葉酸単体ではなく、他のビタミンB 群やビタミン A 、 E といったマルチビタミンを一緒に摂取した場合では、さらに有意な数値が示されました。

葉酸を体内に取り入れるためには特定の酵素が必要なのですが、その酵素の働きをマルチビタミンが高めてくれるためと思われます。

欧米人に比べてアジア人は酵素の遺伝子変異率が高く、この酵素が少ないとも考えられます。

それゆえに、葉酸はもとより、葉酸の働きを高めるマルチビタミンの同時摂取が、より効果的と考えるに至りました。

母体の低葉酸栄養は 常位胎盤早期剝離の引き金に

胎盤に関連する妊娠合併症のなかでも、常位胎盤早期剝離は、発症数はそれほど多くないものの、胎児だけでなく母体の命をも脅かす重篤な疾患です。

妊婦が 35 歳以上の高齢の場合に発生しやすいとされるほか、慢性的な高血圧や糖尿病などの持病があったり、妊娠高血圧症候群、肥満の場合も高リスクとされています。

さらに、低葉酸栄養も、常位胎盤早期剝離発生のリスク因子のひとつであることがわかってきました。

母体の葉酸不足が、深くかかわっているのです。

妊娠前から妊娠初期での積極的な摂取が推奨されている葉酸ですが、妊娠中、出産後の健康維持としても、摂取を心がけたほうがいいでしょう。

すべてのリスクを回避できるわけではありませんが、葉酸とマルチビタミンの摂取を習慣づけることをおすすめします。

葉酸はアジア人で特に不足しやすく、またビタミン B 群は水溶性のため排泄されやすいことなどを考慮すると、サプリメントなどを利用して毎日摂取する必要があるといえるでしょう。

米国やカナダのように食品への葉酸添加が義務付けられていないのですから、個人の意識において、不足しがちな栄養素を補うよう心がけてください。

きちんとした食生活を実践している方でも、妊娠を希望される方や妊娠中は特に、サプリメントの利用を検討するべきではないでしょうか。

妊娠中も「葉酸」が必要な理由

流産・早産、胎児発育不全、常位胎盤早期剝離といった、胎 盤に関連する妊娠合併症は、母体の葉酸の欠乏による胎盤の 形成不全が原因で起こることが報告されている。

「常位胎盤 早期剝離」とは、胎児がまだ子宮内にいるうちに、胎盤が子 宮から剝がれてしまう疾患で、重症の場合は胎児のみならず 母体の命にも危険が及ぶ。

妊娠高血圧症候群や慢性的な高血 圧、糖尿病、肥満もリスク因子として考えられているが、葉 酸の積極的な摂取によって危険因子の改善が期待できる。

葉 酸の働きを高めるためには、ビタミンB群をはじめとしたマ ルチビタミンと一緒の摂取が望ましいとされる。

妊娠前から「葉酸」が必要な理由

葉酸は、たんぱく質や細胞の新生に必要な核酸(DNA、RNA) をつくるのに重要な役割を担う栄養素で、不足すると「二分 脊椎症」「無脳症」といった神経管閉鎖障害「口唇口蓋裂」「ダ ウン症」などの先天性疾患が発症するリスクが高まる。

胎児 の重要な臓器は妊娠3週目あたりから形成され始めるので、 妊娠に気づいてからの摂取では遅く、そのため厚生労働省も 「妊娠1カ月前から妊娠3カ月までは、栄養補助食品あるい はサプリメントから1日400㎍の摂取を」と呼びかけている。

(※「神経管閉鎖障害の発症リスク低減のための妊娠可能な 年齢の女性等に対する葉酸の摂取に係る適切な情報提供の推 進について」平成12年12月28日/厚生省)

 

日本医科大学産婦人科 中井章人 教授 日本医科大学附属多摩永山病院・女性診 療科・産科部長。日本産科婦人科学会専 門医。大学病院と地域の診療所が密に連 携する「セミ・オープンシステム」や「助 産師外来」をいちはやく取り入れ、医療 体制の充実に注力。 日本産科婦人科学 会が推奨する治療指針「産婦人科診療ガ イドライン」の評価委員会も務める。

 

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