俵先生に 聞きました!

妊娠にまつわるウソ ! ホント ?

ウワサの真相

「○○したら妊娠できた」「○○はNG!」といった妊娠 にまつわる噂や俗説……。

ウソなのか、ホントなのか、 俵IVFクリニックの俵史子先生に医師の立場から解説していただきます。

俵先生より

いろんな情報がありますが、「これを摂れば必ず妊娠する」というものはありません。
同じ食品ばかり摂り続けるのは良い成分だけでなく、悪い成分もたくさん摂ることになるので逆効果に。
やはり、さまざまな食品からバランスよく栄養を摂るのが望ましいでしょう。
それも1日3食きちんと食べること。
米国のデータでは1日の食事が3.02回以上の女性は、1.34回未満の女性に比べて、体外受精での生産率が21%増加したという報告も。
まずは、毎日の食事をしっかり摂ることが妊娠への近道だと思います。
俵IVFクリニック  俵史子先生
浜松医科大学医学部卒業。総合病院勤務医時代より不妊 治療に携わり、2004年愛知県の竹内病院トヨタ不妊セ ンター所長に就任。2007年、 出身地の静岡に俵IVFクリ ニックを開業。 昨年静岡駅前に移転し、リニューアルオー プン。スタッフの間で今、健康づくりがブームに。食事 だけでなく、運動をプラスして10kg以上やせて健康的 になった人も。経験をもとに、患者さんにも自信をもっ て生活改善を指導できるようになったそうです。

不妊治療や妊娠にいいとされる 食品って本当にある?

harukissさん・ 34 歳 Q.着床するために、ネットで妊娠にいいとされる食べ物や手段は可能な限り試してきました。低温期の豆乳や大豆製品、高温期のグレープフルーツジュースなど。でも、着床はしませんでした。「これ以上何をすれば?」と落胆の気持ちばかりが大きくなってしまいます。
A. 逆に大豆イソフラボンを摂取すると卵子が育ちにくくなることも
低温期に豆乳を飲むというのはおそらく、植物性エストロゲンと呼ばれる大豆イソフラボンを摂取するため、高温期のグレープフルーツジュースは葉酸の摂取を意識されてのことだと思います。
結果を先にいうと、どちらも不妊治療の結果を向上させたり、妊娠しやすくなるという医学的な根拠は証明されていません。
まず大豆イソフラボンについてですが、作用は穏やかながらもエストロゲンに似た働きをするので、大豆イソフラボンだけを抽出したサプリメントなどで摂取すると、個人の体質によっては、低温期が長くなって卵子が育ちにくくなってしまうことがあります。
体内で分泌されるエストロゲンの代わりに大豆イソフラボンがエストロゲンの受容体に結合することで、本来のエストロゲンの作用が低下してしまうのではないかと考えられているようですね。
当院の患者さんのなかにも、大豆製品を多く摂ったり、サプリメントを飲んでいる方で、排卵まで時間がかかる排卵障害を引き起こしているケースが何例かありました。
高用量イソフラボンの摂取で、IV Fやクロミフェンを使ったタイミング療法などで着床率や妊娠率の向上が見られたという一部の報告もありますが、現段階でははっきりとその効果は認められていません。
とにかく、ホルモンの働きはまだまだわからないことが多いので、ネットの情報を信じて安易に摂取しないほうが無難だと思います。
グレープフルーツジュースについてですが、グレープフルーツに含まれている葉酸含有量は1個あたり約 30µg 。
妊活中の女性が葉酸の効果を得るためには1日400µg の摂取が必要なので、 グレープフルーツを 13 個以上食べなく てはならないことになります。
つまり、高温期に毎日グレープフルーツジュースを1杯飲んだから妊娠しやすくなるということはあり得ない、と考えていただいていいと思います。

男性不妊の改善に 「マカ」ってどうですか?

ぴよまちさん・31歳 Q.主人の精子運動率が低いこともあって、マカを試してみようと考えて いるのですが、人によって合う、合わないがあるようでちょっと心配です。 女性が使用すると良い結果が出た人もいるようですが、「基礎体温がガタ ガタになってしまった」という話も聞きます。
A. 軽度の男性不妊患者では精子に改善が見られたという報告もあります
マカは南米ペルーのアンデス高地に植生するアブラナ科の根野菜で、地元では大昔から「滋養強壮植物」として、伝承的に食されてきたそうです。
日本では1990年代後半頃から注目されはじめ、今では多くのメーカーからサプリメントとして販売されていますが、本当にヒトの生殖機能に良い影響をもたらすのでしょうか。
マカの働きや有効性については、以前はマウスなどを使った動物実験に 関する報告が多かったのですが、最近ではヒトを対象にした研究も増えて きたようです。
欧米だけではなく、日本でも研究されているようで、秋田大学産婦人科の研究チームは、原因不明の乏精子症、または精子無力症と診断さた 14名の男性不妊患者に1日3gのマカを服用させたところ、8名の男性で 精子所見が改善されたと報告。
改善が見られなかった6名はいずれも治療 開始時のFSH値が10以上の症例であったことから、すでに精子をつくる 働きが損なわれている、もしくは低下している男性不妊患者には無効だったようです。
また、性欲アップや勃起指数についても、健康な男性や軽度の男性不妊患者なら一部に改善が見られたという報告も。
マカは必須アミノ酸や亜鉛、ビタミンなどを豊富に含んだ栄養的に優れた植物なので、それが体調を整え、 強壮作用をもたらすのではないかと思います。
ただし、マカを飲ん でも男性ホルモンや女性ホルモン量に変化は起こりません。
女性が 摂って基礎体温がガタガタになるというのは考えにくいですね。
薬と同じ効果を求めるのではなく、あくまでも健康維持のためのサプリメントというとらえ方をしたほうがいいでしょう。

妊娠したのは 葉酸を摂ったから?

まりんさん Q.2人目が欲しくて3カ月前から葉酸のサプリを飲んでいました。私の排 卵期は19日前後と遅めでしたが、サプリを飲み始めてから14日に。そのせいか、先日、妊娠検査薬で陽性反応が出ました。葉酸以外は今まで通りの生活だったので、やはり今回の妊娠は葉酸のおかげかも。
A.直接不妊を解消するというより、妊娠の縁の下の力持ち的存在
葉酸はその名前の通り、葉物の野菜全般、海藻類などの植物性食品のほか、レバーなどの動物性食品にも豊富に含まれるビタミンB群の仲間。
よく知られているのは赤ちゃんへの影響で、葉酸が不足すると出生児の神経管閉鎖障害という先天異常のリスクが高まります。
そのリスクを減らすた め、厚生労働省では妊娠前から妊娠3カ月まで、1日400µgの葉酸をサプ リメントで補充するように呼びかけています。
では、不妊の改善に効果があるかということですが、これについては間接的な影響もないとはいえないようです。
葉酸が不足するとホモシステインという悪玉アミノ酸が増え、濃度が上昇すると胚や胎児の生育に 悪影響を及ぼすというデータも。
細胞が正常に分裂増殖できなくなるだ けでなく、胚のグレートが低くなったり、胎児の成長が阻害されるリスクも高まります。
また、葉酸はDNAの合成にも不可欠なので、細胞を形成する根本という意味でも、お母さんにも赤ちゃんにとっても大切なもの。
そのようなことから、妊娠に関しては縁の下の力持ち的存在だといえるでしょう。
当院でも患者さんに摂ることをおすすめしていますが、野菜などに含まれる天然形態の葉酸(ポリグルタミン酸型)は吸収効率が悪いので、合成したモノグルタミン酸型、つま りサプリメントの形で補充する ことが望ましいとお話ししてい ます。
近年は葉酸の効果として妊娠率向上、流産予防さらには妊娠合併症頻度の低下も期待できると言われています。
葉酸サプリメントの摂取量も1日800μgやそれ以上を推奨する報告もあり、しっかり摂取することのメリットは大きいと考えます。

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