卵胞16㎜、P4値1.2で HCGを打つのは 早すぎませんか?
福田 勝 先生 順天堂大学医学部・同大学院修了。米国カリフォルニア大学産婦人 科学教室留学後、順天堂大学医学部産婦人科学教室講師を経て、 1993 年福田ウイメンズクリニック開院。採卵がある朝でも毎朝の犬の 散歩は欠かさず、行ってからクリニックに来られる先生。その愛犬も年 を取り、以前のようにたくさん歩くこともなくなってきたとか。「コースはす べて犬任せ。犬が行くと言えば私もついていくだけです」(笑)。
Donaさん(45歳)からの相談 Q.不妊専門クリニックに1年少し通っています。以前も別のクリニックに3年通って いました。今回は完全自然周期で採卵予定です。昨日D13で卵胞16㎜と7㎜、 E2が220、P4が1.2で待てない数値と言われ、21時にHCGを打ったのですが、 タイミングが早いような気がして悶々としています。前回低刺激の時はD19で卵 胞19㎜と10㎜が2つで、E2が839pg/ml、P4が2.7ng/mlで、P4が高く待 てない数値と言われ、当日HCGを打ち、2日後に採卵したところ、採れた2個は 未成熟卵でした。同クリニックで5回採卵していますが、採卵当日はだいたい22 ~24㎜で排卵済みだったことは1度もありません。前回を踏まえ、今回のほう が卵胞も小さく、P4の数値も低いので、もう1日くらい待ってもよかったのでは ないかという思いがあります。前回とは別の先生ですが、見解が違うのでしょうか。
個人差はある
HCGを打つタイミングは先生によって 見解が違うのでしょうか?
福田先生 人間の体はそれぞれ違いがあり、 機械のようにはいきません。
ですから卵胞 計測で得られるデータというのは、絶対的 なものではありません。
一概に何㎜までき たからどうしましょうというふうにはいか ないということです。
もちろん前回までの データなどは参考にしますが、すべてが一 定ということはありません。
データをもと にそれぞれの医師がご自分の経験値から決 めているのだと思います。
ですから、その 医師のもっている経験値で判断に違いが出 てくることはあると思います。
HCGを打つタイミング
卵胞 16 ㎜、E2が220pg/ml でHCGを 打ったのは早すぎではないのかと疑問を抱 いていらっしゃいます。
福田先生 16 ㎜という大きさは特別小さい という感覚はありませんし、E2が220pg/ml というのも問題ないと思います。
ただし、自然周期で排卵する卵胞の大き さには個人差があります。
卵巣刺激をし た時とは卵胞の数、大きさに違いがあり、 自然周期でやろうと思ったら、前の周期 は採卵しないで、排卵時のデータを得て から採卵の周期にもっていくという方法 をとることがあります。
採卵時の卵胞の大きさに関しては、卵巣 刺激をした時は一般的に卵胞径が 18 ㎜未満 の場合は未成熟な卵子となるケースが多い ですが、逆に 25 ㎜以上だと大きすぎて過熟 になります。
そうなると変性して退行卵に なる可能性が高くなります。
したがってHCGを打つタイミングが非常に重要という ことです。
P4をはかる意味
P4の数値が 1.2ng/ml というのも低かった のではと気にされているようです。
福田先生 ほとんどの施設ではP4を測って いないと思います。
P4値で採卵の時期を決めるということはなく、やはり卵胞の計 測とE2の値で決めていきます。
Dona さんはP4値が 1.2ng/ml だったということで すが、この値は私は問題ないと思います。
逆に少し高くなっているかなという印象が あります。
一般的に卵胞数が多い時やE2値が高い 時はP4は高くなる傾向があります。
昔は P4が高いと卵子の質が悪くなるといわれ ていましたが、最近では卵子の質には関係 がないといわれています。
P4の上昇で問 題になるのは、着床する環境が悪くなる可 能性が高いということです。
胚が着床でき るのは子宮の「着床の窓」が開いている時 期だけで、通常窓が開くのは排卵後 1 週間 くらいといわれています。
P4が高くなる ということは、早く黄体化が始まっている ということですから、窓が通常より早く閉 まり、着床の環境が悪くなる可能性が高く なります。
ですからP4が高い時は新鮮胚 の移植はせず、凍結しておいて移植の時期 を変えることが必要です。
新鮮胚の移植を 考えているのであればP4を測るメリット がありますが、最初から凍結することがわ かっていれば測る必要もないと思います。