妊娠前に知っておきたい 秋山芳晃 先生のセルフメンテナンス・チェック
健 康 的 な体 で、元 気 な 赤ちゃんを産 むためには 今から何をしておけばいいのでしょうか。
妊娠する前に知っておくこと・やっておくことを 秋山レディースクリニックの秋山芳晃先生に教えていただきました。
「体重と妊活」 について
肥満・やせは 不妊の原因に?
脂肪の量が極端に増減すると 月経異常などを起こすことも
体重は女性の性機能に大きな影響を及ぼすとされています。
体重の過多・過少、いずれにおいても月経の異常、不妊娠や分娩異常の頻度が高まります。
脂肪細胞にもエストロゲンという女性ホルモンをつくる働きがあるので、脂肪の量が増えても、また、極端に減ってもバランスが崩れやすくなってしまう。
それにより、生理不順になりやすくなるなど、排卵に障害を起こしてしまうんですね。
脂肪の量は女性ホルモンと関連があるということを知っておいていただきたいと思います。
肥満の人が妊娠しにくいのは、前述したようにエストロゲンの産生と代謝がうまくいかなくなるためだと考えられています。
また、内臓脂肪が多くなると、インスリンに対する体の反応が低下する「インスリン抵抗性」が起きることがあり、それによりインスリンが増加すると、卵巣機能の低下につながってしまうことも。
排卵障害を引き起こす多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)という疾患がありますが、欧米では 40 %以上が肥満を合併。
日本では約 20 %で、必ずしも肥満の人が当てはまるわけではありませんが、その病態にはインスリン抵抗性が関連しているといわれているんですね。
さらに肥満状態だと、レプチンという摂食抑制とエネルギー消費亢進をもたらすホルモンが増加し、排卵に関わる脳のホルモンや卵胞発育調節の不調を引き起こしやすいと考えられています。
一方、やせの人が妊娠しにくいのも脂肪細胞に関連しており、極端に脂肪が少ないとそこでつくられるエストロゲンも減少。
十分な量が得られないため、生理周期が不規則になることも。
やせでもっとも深刻なのは、急激なダイエットなどで極端に体重が減少した場合です。
体重減少性無月経といって、重症の排卵障害を引き起こし、脳から卵子を育てるホルモンがほとんど出なくなってしまうのです。
体重を戻しても、一度そのような状態になると簡単に排卵しないので、過去に過激なダイエットをした経験がある人は、早めに不妊治療をスタートしたほうがいいでしょう。
妊娠しやすい 適正な体重は?
BMIでいうと 21 ~ 23 の範囲で 体重をキープするのが理想的
自分は肥満なのかやせすぎなのかを調べる方法として、BMI(BodyMassIndex)という指標があります。
これは体重と身長の関係から算出される体格指数のこと。
月経異常との関連を見ると、月経異常の頻度はBMI 22 ~ 23 でもっとも低く、 24 ~ 25 で2倍、 35 以上では
5倍に。
また、BMIが 18 ・5未満でも月経異常が起こりやすくなるといわれています。
やせでも 19 を切らなければ妊娠に関して大きな影響はないとされていますが、BMI 30 以上の肥満女性は不妊のリスクが標準体重の人と比べて2倍になり、妊娠した後も胎児や母体に起こる合併症の危険性が明らかに上昇します。
このような傾向から考えると、妊娠を希望している方はBMI 21 ~ 23 の範囲で体重をキープされるのが望ましいかと思います。
太っている人は体重が減るだけで排卵率が上がるというデータもあります。
妊娠へ向けてダイエットも有効な治療の一つだと思いますが、どんな方法がいいかは生活習慣や体質など、その方の背景によっても異なるので一概にこれがいいとはいえません。
過食や糖分・脂肪分の摂りすぎを控え、バランスの良い食生活を心がけることが一番ですが、なかなかうまくいかないという人も多いと思います。
最近は栄養士による食事指導を行っている病院も多いので、一人で頑張るのが難しい方はそのような機会を積極的に利用してみてはいかがでしょうか。
不妊治療を すると太る?
脂肪の量が極端に増減すると 月経異常などを起こすことも
女性ホルモンの一種であるエストロゲンには細胞を増殖させる働きがあるので、排卵誘発などでこのホルモンが過
剰になると、脂肪細胞も増えてしまう可能性があります。
また、排卵後に出るプロゲステロンというホルモンには、受精卵を着床しやすくするために子宮内に水を溜め込む働きがあるので体がむくみやすくなったり、腸の動きを鈍くする作用で便秘ぎみになることも。
このようなことから、強い卵巣刺激を繰り返していると体重が増えやすくなることもあるかもしれません。
もともと肥満ぎみの方は特に過食などに気をつけて、うまくコントロールしながら治療を続けていただきたいと思います。