多嚢胞性卵巣症候群で 通院していますが、 治療の進め方に疑問が…
宮崎 和典 先生 大阪医科大学医学部卒業。学生時代の新生児医療への興味がきっ かけとなり、体外受精や不妊治療の世界を志す。同大学産科婦人 科講師を経て、1992 年に不妊症、不育症治療専門クリニック、宮 崎レディースクリニック開業。開業当初より泌尿器科の専門医による 男性不妊外来を開設する。A 型・しし座。最近、また釣りにはまって いるという先生。「青モノは泳ぐのが速いから難しいよ」と、楽しそう。 以前はタイの大物を狙っていたが、今は和歌山沖のトローリングでカツ オを追いかけているそうです。
りんさん(28歳)からの相談 Q.数年前に多嚢胞性卵巣症候群の可能性があると診断されました。生理周期は27 〜90日とバラバラで、一番多いのは40日前後です。昨年12月、過去1年半 くらいの生理日一覧と3カ月間の基礎体温表を持って婦人科へ行きました。診断は 「基礎体温がガタガタだけど、二相になっている時もあるから排卵している可能 性もある」とのこと。排卵誘発剤を使用する可能性もあること、高温期になった ら血液検査をするということで終了しました。卵胞チェックは月1回、私はもっと 行きたいのですが、排卵検査薬の使用をすすめられました。自力で高温期になっ ていないので、血液検査もまだ、排卵誘発剤の件も初診以来出ていません。多 嚢胞性卵巣症候群は対症療法と聞いたことがありますが、こんなものなのでしょう か? また卵胞チェックはどれくらいの頻度で病院に行くものなのでしょう。
多嚢胞性卵巣症候群の重症度
数年前に診断された多嚢胞性卵巣症候群ですが、現在の治療方針がこれでいいのか不安を感じておられます。
宮崎先生 月経周期を拝見すると、平均 45 日くらいになるのかな。
もしかすると、きちんと排卵しているのは、年に数回程度なのではないでしょうか?
毎月きちんと月経があるにもかかわらず、排卵が起こっていない人はたくさんいらっしゃいます。
多嚢胞性卵巣症候群にもいろいろなタイプがあり、ホルモン値もわからないので一概にはいえませんが、月経があるということはそこまで重症ではないのかもしれません。
血液検査でインスリン抵抗性を認めた場合、糖尿病の治療薬、メトグルコⓇに柴苓湯などの漢方薬を併用すれば、排卵障害の改善に効果が期待できるのではないでしょうか。
超音波検査の頻度
月に1回の卵胞チェックだそうですが、頻度についてはどう思われますか?
宮崎先生 卵胞が超音波で見えるようになるまでには、少なくとも5日くらいの日数がかかるので、有効な治療をしている間は、4、5日おきに診察を受けるのが本当は望ましいと思います。
もしかすると担当の先生は不妊専門医ではないのかもしれませんね。
排卵誘発剤を使用する、しないにかかわらず、診てもらったほうがいいと思います。
ある日、超音波で診て何もなかったとしても、5日後に排卵していることだってありますから。
やはり排卵している限りはそうしていかないと。
超音波検査の重要性
自宅で行える排卵検査薬の使用もすすめられたとのこと。りんさんの排卵周期はかなり不規則なようですが、それでも4、5日おきに診てもらったほうがいいのでしょうか?
宮崎先生 自然の排卵を待って、何度も診察を受けるのは大変ですし、妊娠できるチャンスも限られます。
おそらく3カ月に1回の月経ではなかなか排卵できていないはず。
排卵誘発剤の使用など、有効な治療を行えば、それほど頻繁に通院しなくてもよくなるというメリットもあります。
副作用が心配といっても、生活に支障が出るほどではありませんので、やはり治療を受けたらいかがでしょうか。
排卵誘発剤はまずクロミフェンなどの経口薬がファーストチョイスとなるでしょう。
経口薬で効果がなければ、HMGなどの注射薬を使用することになります。
卵巣の反応がよくて少量で済む方と、通常よりたくさん注射をしないと排卵しない方がおられますが、副作用が出ないよう反応を見ながら行います。
そして、かなり排卵が不安定な状態ですので、排卵検査薬の使用はあまりおすすめしません。
多嚢胞性卵巣症候群の方はLHが普段から 10mIU/ ml を超えるような方も多いので、 卵胞がないのに反応して疑陽性になるケースも。
検査薬だけに頼るのはあまり有効ではないので、やはり卵胞チェックをしてもらいましょう。
早く妊娠したいのであれば、まずはきちんと自分の体の状態を知るためにも、専門医のもとで治療を受けるべきでしょう。