胚盤胞まで育ちません。

1つだけ急成長してしまい 質の良くない卵子を採卵。

胚盤胞まで育ちません。

福井 敬介 先生 1989年、日本大学医学部卒業。卒業と同時に愛媛大学産 科婦人科に入局、愛媛大学大学院医学専攻科修了。2000 年愛媛大学産科婦人科学助教授。2001年、「高度な生殖 医療をより身近な医療として不妊カップルに提供したい」と、福 井ウィメンズクリニックを開設する。開院15周年となる今年、 初期のスタッフが定年退職になるため職員の新陳代謝を感じるよ うになったそう。節目の年を新しい気持ちで迎え、県外からの患 者さんも積極的に受け入れられる体制を整えているそう。
まめこさん(41歳・主婦)からの相談 Q.体外受精デビューして3周期。1周期目は、D3よりセロフェ ンⓇ1錠、D8にHMG注射で1個採卵し受精するもG3で 胚盤胞にならず。2周期目は、D3よりセロフェンⓇとHMG、 D5で1つだけ16㎜と急成長し、他の卵胞は育たず採卵見 送り。3周期目は、D3のチェックですでに9㎜の卵胞が1つ。 他の卵胞を育てるためにD3とD5にセロフェンⓇとHMGで、 最初の大きな卵胞だけが成熟してD8に1個採卵、G3で胚 盤胞にならず。D2〜3のホルモン値はLHFSHなので少 し気になるのですが、問題ない範囲と言われています。生 理は20代の時から25日できっかりきます。刺激法にするか、 完全自然にしたほうがいいのか悩んでいます。

成長した卵胞が ほかの卵胞を妨げる

初期卵胞は 4 〜 5 個あるものの、いつも一 つだけが急成長してしまい、結果的にあまり 質の良くない卵子が1つ採れるだけで胚盤胞 まで育たないケースですね。
残留卵胞ではな いと主治医に言われているようです。
まめこさんの場合は、年齢も関係すると思 います。
まず、 40 歳を超えると月経周期が短 くなります。
その要因としては、年齢が高い と卵胞数が少なくなるために、体が危機感を 覚えて脳から卵子を育てる指令を出す。
つま り卵胞刺激ホルモンを出すことが挙げられま す。
そこにセロフェンⓇやクロミッドⓇを投与 するとますます助長されてしまうので、卵胞 が1つだけ発育するのだと思います。
なぜ1つだけ急成長するかというと、スタートラインが同じだとしても、一番速く発 育した卵胞がほかの卵胞の成長を抑えつける 物質を出してしまうからなのです。
セレク ションをかけようとしているとも言えます。
HMG注射だけなら均一に刺激を与えるので そんなことにはならないと思いますが、とて もデリケートなことなので、様子をみながら 選んでいくことが重要でしょう。
まめこさん の場合は、たとえ刺激を強めたとしても同じ 状況になるのではと思います。

完全自然周期のなかで 個人に合わせて対策を

卵胞の成長が速い人の場合、基礎レベルを 下げて、いったんリセットしたほうがいいで しょう。
もしくは、年齢の高い人はまずスピー ドが比較的遅い完全自然周期でやってみたほ うがいいと思います。
それでも、卵胞の成長 スピードは速いと思いますが。
年齢の高い人が完全自然周期を採用する際 に難しいのは、成長スピードに合わせた採卵 時期の見極め方です。
早く排卵してしまって、 採卵しようとしても卵子がなかったり過熟に なっていたりと、なかなかタイミングが難し いのです。
その対策として、完全自然周期の なかで、採卵前の排卵を抑制する方法があり ます。
注射で排卵しないように抑えこんで採 卵のタイミングを調整するというやり方です。
また、早期に採卵するという方法もありま す。
年齢の高い人はLHサージが早めに出て しまうので、LHサージ開始後に通常よりも 早めに採卵します。
もちろん未熟な場合もあ るのですが、培養して受精できる状態にもっ ていくことができますから。
過熟になるより は可能性がありますよね。
実は、完全自然周 期もキャンセル数を減らすための対策を立て る必要があるので難しいのです。

完全自然周期のメリットは 体への負担が少ないこと

当院は、年齢に関係なく排卵が定期的にある 方へのファーストチョイスとして完全自然周期 を採用しています。
無排卵などの場合は別です が、排卵周期に 5 日程度の幅がある人などは完 全自然周期から始めます。
何回まで行うかをよ く聞かれるのですが、当院でデータを取ったと ころ、この方法で妊娠した人の 8 割以上が 2 回 目までで成功したことがわかりました。
ですか ら、まず 2 回は完全自然周期でやってみて、それ以降は低刺激などほかの方法を考えることに しています。
完全自然周期の良いところは、一番に体への 負担が少ないことです。
また、ほかの刺激法に 比べて費用がかからないこと。そして、体への 負担が少ないために次の周期も繰り返しできる ことです。
さらに当院では妊娠した時の流産率 が格段に低いというデータもあります(下図)。
一方で自然周期をおすすめする方は、 20 〜 30 代前半で、卵管が詰まっていたり抗精子抗体と いったはっきりとした原因がある方です。
当院 の場合は、 1 回で 20 %程度の妊娠が望めます。
もちろん、年齢の高い人には先ほど申し上げ た対策を立てるなど、完全自然周期のなかでそ の人に合わせた方法をとっています。

検査を行いながら 個人の状態に合わせた対策を

当院で、年齢をはじめその人の状態に合わせ てどのように対策を立てるかというと、まず情 報を集めながら最良の方法を考えていきます。
完全自然周期のなかで排卵の自然なタイミング やホルモンをからめた排卵のタイミングを診 る。
また、子宮内膜の自然の状態や着床状態を 調べるといったことです。
その人の自然な状態 を知ることは、対策を立てるうえで非常に有効 です。
まめこさんの場合は、生理が 25 日きっかりで くるということなので、完全自然周期をやる価値はあると思います。
その過程でさまざまな対 策をとりながら進めていくほうがいいのではな いでしょうか。
もし薬を使う場合は、フェマーラⓇがいいか と思います。
初期卵胞がいくつかあるそうな ので、フェマーラⓇによってすべての卵胞に 均等に卵胞刺激への感受性を上げていければ エントリーできる数も増えるでしょう。
また、 ホルモン値はLHが F SHより高いとありま すが、そういった方にもフェマーラⓇが有効で はないかと思います。
同じ刺激法で 3 周期う まくいかなかったら、ほかのやり方を考えた ほうがいいでしょう。
その際、まめこさんの 場合は、先ほど申し上げた理由で完全自然周 期法をおすすめします。
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不妊治療に関するドクターの見解を取材してきました。