子宮腺筋症やPMSで 痛みやイライラがひどく、 治療に安心して臨めません

痛みや不安で精神的にもつらい時、それをうまく落ち着かせなが ら治療に臨むことはできるのでしょうか。

臼井医院不妊治療センターの臼井彰先生に伺いました。

臼井 彰 先生 東邦大学医学部卒業。東邦大学大森病院で久保春海教授の体 外受精グループにて研究・診察に従事。医局長を経て、1995年 より現在の東京・亀有にて産婦人科医院を開業。臼井先生は、ファ ン感謝デーにも参加するほど読売ジャイアンツの大ファン。今季から 高橋由伸監督に代わりますが、監督に就任するうれしさはあるけれど、 選手としての姿が見られなくなるのがとても寂しいとか。
おひさまとおつきさまさん(36歳)からの相談 Q.20歳頃から子宮内膜症チョコレート嚢腫があり、スプレ キュアⓇやディナゲストⓇを服用していましたが、32歳で結 婚したので中止。一度妊娠したものの、9週で流産。その後、 かなりの激痛と大量の出血がありましたが、医師は「子宮腺筋症のせいだ」といって、何の処置もしてくれませんでした。 半年後、あまりの痛さにMRIの検査を受けると、子宮や卵巣、卵管などの癒着や変形が発覚。「手術か体外受精のどち らかを選んで」といわれましたが、検査が進むにつれ、子宮 腺筋症がひどすぎて「手術したら全摘になる」と告げられま した。PMSや緊張性頭痛もあって痛みやイライラもつのり、 精神安定剤もすすめられましたが、体外受精をするので断り ました。もうどうしていいかわからず、とてもつらいです。

●これまでの治療データ

検査・ 治療歴

子宮腺筋症の治療はスプレキュアⓇ半年、ディナゲストⓇ2年半ほど(その 前は痛み止めで我慢するのみ)。
流産後、あまりの痛さに耐えきれずに、半 年間またディナゲストⓇを服用。
その後タイミング療法を2年半継続後、人工授精を2回行うはずが、2回とも主人のタイミングが合わずに実施せず。
病院での治療以外、1年間鍼治療も経験。

不妊の原因と なる病名

子宮腺筋症・癒着・チョコレート嚢腫

現在の 治療方針

子宮腺筋症の手術は不可能といわれているので、体外受精に臨むために 現在、検査中(MRIや採血など)。

精子 データ

正常

子宮の疾患

もともと子宮内膜症だったそうですが、流産した時に子宮腺筋症といわれたそうです。これはどんな病気なのですか?
臼井先生 子宮内膜症と子宮腺筋症、どちらも子宮内膜が異常な発育を起こす病気です。
本来なら子宮の内腔にあるべき子宮内膜の組織が子宮の周りや骨盤内で発育してしまうものを子宮内膜症、子宮の壁である子宮筋層内で発育してしまうものを子宮腺筋症と分類しています。
子宮腺筋症は筋層内に入り込んで広がっていくので、子宮全体が肥大してしまうんですね。
そのため、過多月経になったり、生理痛がひどくなる人が多い。
この方のように子宮内膜症と子宮腺筋症を合併しているケースもあります。
流産後にかなりの出血と痛みがあったようですが、それはやはり子宮腺筋症があったせいかもしれません。
子宮の収縮が刺激になって引き起こされた可能性もあります。

手術のメリット

手術で子宮腺筋症の病変を切除するのは不可能だといわれたそうですが。
臼井先生 限られていますが、一部の施設では切除手術を行っているようです。
腺筋症は筋層内に入り込んでいますから、病変を切除するというより、子宮を削るという方法になるんですね。
難しい手術ですが、なかには小さくなるケースもあるようです。
妊娠に直結するというより、子宮自体の状況を改善して痛みなどを軽減する治療なのではないでしょうか。
妊娠を希望する方が受けるべきかどうかのメリットは、正直、やってみないと何ともいえないと思います。

まずやるべきことは?

子宮腺筋症によるものなのか、生理中は腹部はもちろん、腰や背中、頭など、全身のあらゆる箇所に激痛が起こるそうです。さらにPMS(月経前症候群)もあり、精神的な不安も強いとか。痛みや不安を改善する方法はありますか。
臼井先生 以前、ディナゲストⓇを飲まれていたようですね。
このお薬はエストロゲンの増加を抑制するもので、服用している間はある程度痛みを抑えることができていたのではないかと思います。
同じ作用のスプレキュアⓇも使用されていたようですが、これは保険適用の期間が半年間で、長期間の服用は認められていません。
あまりにも痛みが強いようでしたら、それを軽減するために再びこれらのお薬や低用量のピルなどを使われてみてはどうでしょうか。
排卵が止まれば痛みが治まり、スプレキュアⓇの場合は特に病変が縮むなど子宮の状態も良くなります。
「妊娠を望んでいるので痛みを軽減する薬は使わない」と我慢していると、痛みで精神的にもイライラがつのり、PMSもひどくなって不安感も増してくるのではないかと思います。
「妊娠も早くしたい」と焦る気持ちもわかりますが、この方にとって最善なのはまず痛みを取ることだと思います。
鍼治療に1年間通ったり、施設からは休息も提案されたようですが、それよりも積極的に痛みを緩和する薬を使った治療が必要だと思いますね。
痛みが取れれば気持ちも安定して、不妊治療もスムーズに進むと思います。

痛みに合わせた治療方針

痛みを抑えるために排卵を止めてしまう治療と体外受精、うまく両立していけるのでしょうか。
臼井先生 前述したようにスプレキュアⓇは長期間使えるお薬ではありません。
あまり長く使っていると、エストロゲンの減少でうつっぽくなってしまうケースもあります。
今、痛みがとても強いということなら、先にディナゲストⓇを使って痛みを抑え、途中で点鼻薬のスプレキュアⓇに切り替えて、そのままロング法に移行していく、という形をとったらどうでしょうか。
 この方は以前一度妊娠されているので、採卵していい卵子が採れれば妊娠する可能性は十分あります。
子宮腺筋症の場合、着床率は通常の方と比べてもそれほど落ちないといわれているので、うまくコントロールしていけば期待はもてると思いますね。
また、不安感が強いようでしたら、妊娠中も服用できる精神安定剤があるので、それを処方してもらえば問題ないと思います。
我慢してストレスを溜めてしまうより、上手にお薬を使っていただきたいですね。
妊娠・出産後には子宮腺筋症の症状はだいぶ良くなると思いますが、しばらくするとまた病態は進行していきます。
家族計画にもよると思いますが、痛みが強いようでしたら、出産後、子宮の全摘出を考えられてもいいかと思います。
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不妊治療に関するドクターの見解を取材してきました。