周りにいろいろ言われても

田村秀子先生の 心の 玉手箱Vol.26

海外で初めての不妊治療。

そしていきなりの体外受精に、 少し戸惑っているのですが…… 本当の治療はこれから。

「こんな私にカツを入れて!」 秀子先生にお話を伺いました。

きのこさん(主婦• 29歳) Q.結婚と同時にベビ待ちで丸5年。海外で尻込みし ていたこともあり、不妊専門医と会えたのは半年 前です。一度も妊娠の経験がないことを指摘され、 人工授精の対象外となり、2周期後から体外受精を 受けるつもりです。先日、期待を込めて臨んだ60 周期目も陰性でした。これまで5年間、59周期リ セットしても、泣いても何も変わらないと自分を 奮い立たせてきました。でも今回だけは立ち直り 方がわかりません。体外受精も3回と決めている のでもう本当に後がありません。どうかウジウジ している私にカツを入れてください。

きのこさんの投稿に 寄せられたコメントです!

ちゃいさん(会社員・31歳)  AIHはされていないとのことですが、HCGの注射など は打たれましたか? HCGを打った場合は偽陽性が出ます ので・・・。  IVFにステップアップされるとのこと、賢明な判断だと 思います。ただ、思ったのですが、旦那様の数値によって はIVFではなく顕微になると思います。  3回で治療をやめると決めていらっしゃるようですが、 年齢的にはもう少しチャレンジしてもいいのでは? とも 思います。もちろん、お金もかかることですので、他人が どうこう言えることではありませんが・・・。  ステップアップであっさり妊娠される方もいらっしゃい ますので、いろいろ考えて悩むより、やってみるしかない と思います。私も、タイミング→AIH→顕微と進んできま したが、リセットするたびにいろいろ考えました。ただ、 子どもは授かりものなので、どんなに完璧な状態で臨んだ としてもだめなこともあります。  逆にそんなに良い状態ではなかった時に妊娠する方もい るのも事実です!! それを毎回心の支えにして夫婦で頑 張ってます! 元気をだして、IVFに向けて体調を整える ことが、今は一番ではないでしょうか?  お互い、落ち込んだり、いろいろ考えたりすることがあ ると思いますが、かわいい我が子を授かるために、今でき ることをして前向きにやっていきましょう!

妊娠しなかった場合の 自分も想像しながら 前進しましょう

体外受精を始める患者さんに、私がいつも最初にお話しすることがあります。
体外受精で胚移植をすると、いつ妊娠判定をして、そこで妊娠反応が出れば、次はいつ子どもが生まれて、私がいくつの時に子どもはいくつになって……と、その先のスケジュールを全部考えてしまうけれど、それは絶対やめなさいと。
考えるなと言ったって、期待するからどうしてもそう考えちゃうんですが。
それをやってしまうと、楽しい時はいいんだけど、妊娠しなかった場合、どん底に突き落とされます。
一番重要なのは、2回、3回と治療をして、それで妊娠しなかった時に自分がどういう立ち位置にいるのかってこと。
だから水を差すようで悪いけど、「これで妊娠しなかったらどうしよう?」ということは、一応考えたほうがいいよと伝えます。

2回、3回の治療で その都度プレッシャーは 強くなっていく

実は「今回はこういう理由で妊娠できなかったんだ」と、1回目、2回目はいろんな理由を付けて諦められても、3回目にはつぶれてしまうケースが多い。
回数を決めて治療を始めてしまうと、「どうして?もう後がない!」となるわけです。
陸上競技の走高跳や棒高跳みたいに、失敗すると、後になればなるほどプレッシャーをどんどん強く感じるのではないでしょうか?
体外受精や人工授精にともなう期待感というのは、必ずその裏に焦りというか、不安感が表裏一体で付いてきますから、強く妊娠を期待しすぎると精神的に良くない感情に支配されがち。
とはいえ、努力と成果とがイコールでつながらないのが不妊治療です。
だからこそ「自分でこれだけ努力したんだから、自分を褒めてあげよう」と、淡々と自分のやれる最大限の努力を、後悔しないようにやっていくことが大事。
成果を担保されていないからこそ必要なことなんだろうと思います。
1回目の体外受精でよくあることなんですが、「これで絶対に妊娠しなきゃ!」って、思ってしまわないことが大切だと思いますよ。

なぜ3回なの? 気持ちは変化するもの。 カウントする必要なし

きのこさんは 29 歳と年齢的にもお若いので、おそらく周りから、「若いんだし、これくらいの妊娠率があるから、すぐに妊娠できるよ〜」などと言われているはず。
確かにそうなんだけど、周りにいろいろ言われても、あまり気にしすぎないこと。
若い人の体外受精の妊娠率が、3〜4割と言われても、それは同じ人が体外受精を3回したら1回妊娠するという確率ではなく、同じような状況の人を3人集めて体外受精をしたら1人は妊娠した、という結果にすぎません。
ですから、治療の回数を決めて体外受精をするのは、決して賢い方法ではないと思います。
子どもを持つことにそれほど執着がなければいいのですが。
もし3回と決めちゃったのなら、とりあえず一度、3回で治療をやめてみるのもいいでしょう。
今はそうしか考えられないかもしれないけれど、「ここまで!」というよりも、「いやぁ、今回の胚移植は条件が悪かったからね。
場合によってはこれが1回目と考えよう」とか(笑)。
あいまいな部分も残してあげて。気持ちはどんどん変わっていくものだから、先のことは先で考えればいいのです。

秀子の格言

「周りにいろいろ言われても 『絶対に妊娠しなきゃ!』と 思ってしまわないことが大切です」

田村 秀子 先生 京都府立医科大学卒業。同大学院修了後、京都第 一赤十字病院に勤務。1991年、自ら不妊治療をして 双子を出産したのを機に、義父の経営する田村産婦人 科医院に勤め、1995年に不妊部門の現クリニックを 開設。繊細な感性を秘めた、おおらかなお人柄が先生 の魅力。A型・みずがめ座。学生時代のジェットコースター に始まり、スポーツカー、F1、レッドブル・エアレースな ど、思えば今までやたらと“速いもの”にハマってきた田 村先生。スピードへの憧れは、エンジン全開で駆け抜け る先生の生き方そのものなのかも!
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不妊治療に関するドクターの見解を取材してきました。