初のIVF-ET陰性。翌月の生理周期が遅れています

緒方 誠司 先生 1995年東京大学教養学部卒業。2002年大阪大学医学部卒業 後、大阪大学大学院医学系研究科修了、大阪大学医学部附属病 院、関西労災病院、箕面市立病院を経て、2009年10月より英ウィ メンズクリニックに勤務。2012 年 8月より、配偶子・胚発生部門 部長、診療情報管理部門部長に就任。同クリニックで活躍される管 理胚培養士の緒方洋美培養部門部長は自慢の奥様。「2人目が生ま れたばかりなので、休日は家族サービスです」と、優しい笑顔に。家 庭、仕事の両面で奥様をサポートされる理想のご主人です。

海外で初の体外受精

戸惑うことも多く、 日本での治療も考えたい

KOKOさん(40歳)からの相談 Q.海外(オーストラリア)で初めて体外受精を受けて陰性でした。採卵後、2日目 の胚移植をしましたが、12日目に生理がきて血液検査で陰性と判定。その後 ですが、翌月の生理がまだきていません。ただ出血・生理がきたため、生理後、 10-14日あたりに主人と自然にトライしています。胚移植後はずっと黄体ホルモ ン補充をしていました。それが翌月の生理まで影響するなんてことはありますか?  もう少し待ってみようとは思いますが、こういった場合は何か治療があったりす るものでしょうか? 日本だと検査で調べる等されるのでしょうか? 日本との違 いに戸惑いも多く、卵管の疎通性も調べませんし、主人も私も問題ないとは言わ れましたが、治療前の検査は血液検査、エコー&内診だけでした。詳しい説明も なく、ショックすぎて、日本での治療も考えています。

胚移植後の周期の乱れ

現在はオーストラリアで不妊治療をされているようですが、胚移植後の次の周期に乱れがあるのが気になるとのことです。
緒方先生 採卵後、新鮮胚移植をされているので、一時的に卵巣が疲れているという可能性があると思います。
胚移植のせいではなく、採卵をした後の周期だからだと思います。
卵巣機能が落ちているせいで、卵胞発育が遅く、生理周期が全体として長くなっている可能性があります。
ご主人とは自然妊娠を目指してタイミングも取られているようですので、独自に妊娠判定をされるのもいいと思います。
移植の次の周期にタイミングを取ることも問題ありません。

海外の不妊治療

初めての体外受精です。海外ということもあって不安も大きいかと思うのですが、先生から何かアドバイスはありますか?
緒方先生 不妊の治療方針については、日本と海外では大きく異なると思います。
もちろん、国や施設によっても大きく違うと思いますしね。
当院でも海外から転院されてくる患者さんが時々いらっしゃいますけれど、何となくコミュニケーションが取りづらいといわれます。
人種や生活習慣などが関係する場合ありますので、日本に帰ってきて日本人に合った治療を受けるというのも一つの選択肢かと思います。
日本のほうが患者さんに細やかに対応するという傾向や、一人ひとりに合わせるという意識が強い気がします。
逆に海外から見ると、日本の治療は過剰だととらえられてしまう部分もあるかもしれませんが。

今後のアプローチ

最初の体外受精の結果が陰性だった原因を聞いても「わからない」といわれたそうですが……年齢的なことが要因でしょうか。
緒方先生 オーストラリアやアメリカでは、40 歳で自身の卵子を使用して、初めての体外 受精を行うという治療のケースは少ないのではないでしょうか。
向こうでは 40 歳以上で体 外受精となると、卵子提供による治療が中心になると思いますので、おそらく高齢の患者さんの治療の経験やデータがほとんどない状態だと思います。
一方、日本の卵子提供は、まだルールが整 備されていないため、海外にわたって卵子提供を受けるというご夫婦も多く、経済的にも社会的にもハードルが高い治療です。
そのため、体外受精を行う患者さんの平均年齢は日本では高齢化が進み、日本産科婦人科学会や当院の体外受精の平均年齢は 39 歳にまで上 がっています。
日本では 39 歳、 40 歳といえば、 まだまだ治療年齢のピークの層なのです。
オーストラリアは不妊治療の先進国で治療 技術のレベルは大変高いのですが、この年齢層へのアプローチという意味ではあまり経験値がない。
つまり自身の卵子を使用する治療を望んでおられるのなら、日本に帰国して治療を行うほうが有利だということです。
ご主人が一緒に来られない場合でも精子凍結で治療できますので、一度、ご夫婦で検討されてはいかがでしょうか。
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