人工授精での副作用について

排卵誘発剤の注射HMGで 卵巣が腫れ腹水の副作用が。

継続?

それとも体外受精

内田 昭弘 先生 島根大学医学部卒業。同大学の体外受精チームの一員として、1987 年、島根県の体外受精による初の赤ちゃん誕生に携わる。1997年に 内田クリニック開業。生殖医療中心の婦人科、奥様が副院長を務める 内科、大阪より月1回来院の荒木先生による心理カウンセリングをもって 現在のクリニックの完成形としている。現在は、患者さんの個別管理の レベルアップに対応したハードとソフト面の充実に取り組んでいる。プライ ベートでは、気候のいいこの時季には趣味のゴルフに熱が入り、運動不 足になる冬を前に体力アップを心がけているそうです。
まなさん(34歳)からの相談 Q.毎月28日周期で生理があり、少量の4日を含め計10日間くらいです。1回目 の卵管造影検査は左が詰まっていることがわかり、2回目の検査で両方の卵管に圧 をかけて通りました。人工授精専門病院でHMGを10回打って卵子を8個育て、 HCGで排卵させ人工授精をしました。その結果、腹水が溜まり卵巣は5㎝に腫れ、 妊娠には至りませんでした。治療年数は1年で人工授精は初めてですが、もう一度 挑戦するのが怖くてできずにいます。私は副作用が出やすい体質なのでしょうか?  転院も考えているのですが、ほかの病院でも人工授精による副作用が出るとなると 怖いです。しかも、卵子を8個排卵させても妊娠に至らなかったということは、もう 何をしても妊娠しないのでは? と絶望的になります。いっそのこと体外受精に進む べきか、転院して人工授精をするべきか悩んでいます。

排卵障害の疑い

まなさんの副作用の症状をどう考えますか?
内田先生 これは人工授精の副作用ではなく、排卵誘発剤の副作用です。
この排卵誘発剤を使った周期で卵巣が腫れたという事実から、おそらく、基本的に排卵障害があるのではないでしょうか。
PCO(多嚢胞性卵巣)のパターンと考えられますね。
体質というよりは、卵巣がそういう状態にあるということです。
卵巣に排卵障害がベースにあって、さらにPCOという推測があるので、今後の治療としては、排卵誘発剤の使い方をしっかり吟味することがポイントだと思います。

副作用を減らす方法を考える

2回目の人工授精に進むべきでしょうか?
内田先生 まだ 1 回しか人工授精をしていないので、もう少し継続してもいいと思います。
その時に、1回目の人工授精が副作用の出た周期とするなら、2回目は前回の所見をもとに排卵誘発剤の種類と内容と量をしっかり検討してもらいながら人工授精をする。
それで副作用の出方が違ってくるはずです。
また自分からも、前回、卵巣が腫れて大変だったので、その副作用を少なくする方法がないだろうかということを先生に聞くことですね。

注射で誘発

内田先生だったら、どのような治療をお考えですか?
内田先生 もう1回、人工授精をしようと言います。
人工授精の場合には内服薬より注射薬のほうが妊娠率が高いので、排卵誘発剤としては注射薬を使うかもしれません。
それを使うにしても、薬の種類をチョイスして量を少なくし、卵子が 8 個も育たないようにして1周期やってみる。
それが最初のプランだと思います。

自分の意志で治療を進める

体外受精の治療ができる施設への転院について、どう考えますか?
内田先生 今の施設が体外受精を行っていないのであれば、それも考えていいと思います。
卵管に問題があれば、体外受精に進む可能性も出てきますから。
今回の所見とデータをもとに、次はどうするかを転院先の先生に質問してみてはいかがでしょう。
余裕があれば、2 カ所の施設に相談してみるといいですね。
前回はこうだったけど、こうならない人工 授精はありますか?
という聞き方をしてみ る。
または、体外受精までできる施設に行き、自分はどういう治療をしていくのが一番だろうかという聞き方をする。
そうして人工授精か体外受精か、検討をするということだと思います。
施設の情報を得る、治療方法を学ぶことも大切でしょうか?
内田先生 子どもが欲しいと思った時に、医療機関に行って教えてもらい、いわれるままに治療をしてもらおうと思っていてはいけないということです。
自分たちで学ぶようにしないと、次のステップに進もうという時になかなか動けない。
ご夫婦で勉強して前に前にと進んで行けることは、治療において大きな力になります。
副作用が怖いという気持ちもわかりますが、まず自ら学び、相談するということではないでしょうか。
>全記事、不妊治療専門医による医師監修

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