ここ2カ月、FSHが高値に。

卵巣機能は急に低下するもの?

臼井 彰 先生 東邦大学医学部卒業。東邦大学大森病院で久保春海教授の体外受精グルー プにて研究・診察に従事。医局長を経て、1995年より現在の東京・亀有にて 産婦人科医院を開業。院内をリニューアルして雰囲気が一新。ウッド使いが癒や されるオリエンタルモダンな空間に。診察室の天井からの採光が特に素敵で、ま るでリゾートホテルのロビーにいるような気分になります。

ドクターアドバイス

年齢要因などでFSH値が上昇してきた人 は、ロング法などFSHが含まれた薬を使 う高刺激の排卵誘発を行っても反応が期待 できないので、低刺激 法や自然周期採卵を ご提案しています。

FSH

FSH(卵胞刺激ホルモン)は脳下垂体 から分泌されるホルモンで、卵胞の発育 をうながす重要な役割がある。
その周期 の卵巣機能の状態を示すので、月によっ て値が変動することも。生理2、3日目 に測定し、5~8mIU/ml程度なら問題 なく、10mIU/ml以上の高値なら卵巣 機能が落ちているとみられる。
高い場合 はエストロゲン補充療法やカウフマン療 法などを行って、適正な数値に安定させ てから採卵に向けた治療を行う。
クッキーさん(37歳)からの相談 Q.今まで、FSHの値は高くても10mIU/mlだったのに、2 カ月連続で16mIU/mlに。昨年の10月に初めて高刺激 (アンタゴニスト法)を行い、毎日フェリングⓇ150を 打って、採卵前にはHMGも打ったと思います。それ が原因で値が上がったのでしょうか。ただ、翌月には 8.5mIU/mlとそれほど高くなく、先生からは「次に 下がっていなかったら、エストラーナテープⓇで下げら れるので」といわれました。このテープで下げられるの でしょうか。仕事を始めたばかりでストレスはあると思い ますが、卵巣機能の低下ってこんなに急にくるものですか?

「FSH」とは どのようなホルモン?

FSH(卵胞刺激ホルモン)は、卵胞を育てるために欠かせないホルモンです。
今月排卵する卵は、100日ちょっと前に卵巣で原始卵胞が起こされて準備が始まり、その後、どんどん成熟。
生理の2日目、3日目には胞状卵胞がいくつかあり、それらを脳下垂体から分泌されたFSHが刺激して発育を促します。
このような働きから、卵胞刺激ホルモンといわれているんですね。
卵巣の機能が良ければ、脳からの命令、つ まり、FSHが頑張らなくても卵胞は簡単に成長してくるのですが、機能が悪くなると、頭は一生懸命働いてFSHをたくさん分泌しようとします。
ですから、年齢が高い人や、若くても卵巣機能が良くない人はFSHの値が高くなってきます。
正常値の目安は基本的には一桁で、5~8 くらいであれば卵巣の機能には問題がないといえるでしょう。
10mIU/ml を過ぎると少し機 能が下がっている状態。
20 、 30mIU/ml になっ てくるとかなり高く、だいぶ機能が落ちてきているといえます。
また、FSHとともにLH(黄体形成ホルモン)の値も上がってくれば、更年期に近い状態になってきます。

急に数値が上昇して、 また下がったのは 薬の影響? それとも卵巣機能の低下?

フェリングⓇなどの排卵誘発のお薬もFSH成分で卵胞を刺激するものですが、1、2回程度の治療であれば、それほど影響はないのでは。
治療のすぐ後であればFSH値が上昇してしまう人も時々いらっしゃいますが、少しお休みすればまた元の状態に戻ります。
それから治療を開始すれば問題はないでしょう。
実は、FSHは周期によって変動があるホルモン。
ずっと高い数値が続くようなら、本当に卵巣機能が落ちていることが考えられるので注意すべきだと思いますが、クッキーさんのように1、2周期悪くても、また正常な値に戻ることはよくあるのです。
また、FSHは生理の2日目、3日目に計測しますが、その頃にもう卵胞ができてしまう人もいます。
そういう場合はエストロゲン(卵胞ホルモン)の数値も上昇するので、FSHが低くなることも。
卵胞ができてくれば「もう働かなくていい」と分泌が減ってくるんですね。
しかし、それは一時的な現象なので、正確な卵巣機能の目安にはなりません。
主治医の先生も提案されたように、この原理を利用したのが、エストラーナテープⓇなどを使うエストロゲン補充療法です。
補充をすれば理論的にはFSHの値は下がってくるので、そこから排卵誘発剤を使うと効果が期待できるのではないかと思います。
クッキーさんは、薬の影響ではなく、年齢要因などで急な卵巣機能の低下も心配されていますが、確かにそういったこともないとはいえません。
AMH(抗ミュラー管ホルモン)の値が低く、 42 歳相当とのこと。
AMHとFSH、どちらも卵巣の機能を推し量る指標になるものだといわれていますが、僕はAMH=残っている卵子の数の目安、FSH=その周期の卵巣状態の目安、というふうに考えています。
確かにこの2つは指標となりますが、これだけでなく、年齢も重要なファクターに。40 代でAMHやFSHの値がいいからと いって、必ずしも妊娠率が高いとはいえません。
卵子は採れるかもしれませんが、年齢によってその質は下がっていきます。
逆に、クッキーさんくらいの年代の方でどちらの値が悪くても、卵子が採れれば妊娠される方もたくさんいらっしゃいます。
結果を出すためには、採卵できるうちに、少しでもホルモンの状態が良いうちに、治療を急いでいただきたいということですね。

FSHが高い場合の治療法に ついて教えて!

FSHの値がかなり高い場合は前述したようにエストロゲン補充療法や、少し時間をかけられる人は、生理をリセットして卵巣機能を回復させる「カウフマン療法」などを数周期かけて行うこともあります。
そのようにして、本来の卵巣の仕事を思い出させてあげて、適正な値に安定してから不妊治療をスタートします。
卵巣刺激に関しては、クッキーさんはアンタゴニスト法で行ったということですが、当院ではFSH値が高めの人は刺激を低くしています。
15 以上の方はクロミッドⓇやフェマーラⓇなどの飲み薬を使うなど、低刺激の方法をメインにして選んでいますね。
まったく薬を使わない自然周期採卵という選択もあると思います。
高刺激といわれるロング法やアンタゴニスト法ではFSHの注射を使いますが、もともとFSHの値が高い人に同じ成分をプラスしてももうお腹がいっぱいの状態で、あまり意味がない。
それよりも他の方法のほうが効くのではないかと思います。2個、3個と数は少なくてもいい状態の卵子が採れれば、妊娠の可能性は十分あるのではないでしょうか。
FSHが高値で、卵巣の機能が少し落ちていてもこのようにいろいろな方法があり、先生もいい卵を作るために工夫をされていると思うので、まだ希望を持って治療に臨んでいただきたいと思います。
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不妊治療に関するドクターの見解を取材してきました。