流産を繰り返した後の治療について

妊娠しても流産を繰り返してしまう――。

「もしかしたら不育症?」と心配している方もいるのでは。

まだまだよく知られていない不育症について、 秋山レディースクリニックの秋山先生が丁寧に解説していきます。

秋山 芳晃 先生 東京慈恵会医科大学卒業。東京慈恵会医科 大学附属病院、国立大蔵病院に勤務後、父親 が営んでいた産科医院を継ぎ、不妊症・不育 症診療に特に力を入れたクリニックとして 新たに開業。秋山レディースクリニックで は年間2000人ほど子宮がん検診を実施。 不妊治療はもちろん、がん予防から更年期 治療まで、一生を通して女性の体をケアす る施設を目指しています。
きょろちゃんさん(40歳)からの相談 Q.1人目は自然に授かりましたが、36歳から開始した2人目の子づくりが何度 も初期流産してしまいうまくいきせん。不育症検査を受けたら「凝固因子活性」 の項目のみ引っかかり、アスピリンを服用するしか対策がないようです(ヘパリ ンまで必要ないとのこと)。不妊治療担当の医師からは、「気休め程度にしかな らないが、染色体検査を受けてみますか?」と提案され、受けるべきかどうか 悩んでいます。染色体検査は高額な検査。受けた結果、異常が見つかり、着床前診断へ進む方向ならやる意味もあると思いますが、気休め程度で受けると いうのは納得がいきません。また、体外受精については「今まで人工授精で妊 娠できているし、体外受精をするとさらに流産率が上がってしまうので必要ない」 といわれました。検査と治療法について、本当にそれでいいのでしょうか?

1人目は自然で授かったのに 2人目の妊娠で流産を 繰り返すこともある?

秋山先生 頻度は正確にはわかりませんが、これまでの臨床の経験だと、確かにそのような方もいらっしゃいますね。
大きな原因はおそらく年齢だと思いますが、きょろちゃんさんと同じ 40 歳の方だと流産率は 25 ~ 50 %程度。
不育症の要素がなくても、年齢を重ねれば流産する確率は高くなっていきます。
1人目を出産した後の流産率というのは、 1回も出産したことのない人の流産率より若干低いのですが、それでも繰り返し流産してしまうという方もいるんですね。
「1人目は問題なく出産したので2人目も大丈夫」ということは必ずしもいえないと思います。
きょろちゃんさんは凝固因子の軽い異常が あるということですが、これは1人目を妊娠された時期にもあったけれど、その時には何も起こらなかったという可能性も。
それとは逆に、異常があったけれど2人目の妊娠を望んだ時に調べたらなくなっていたり、1回目の妊娠・出産を契機に不育症に関わるような良くない要素が出現することもあるようです。

染色体検査を受けたほうが いいのでしょうか

秋山先生 初期流産を繰り返しているということですが、それはどの時期の流産なのでしょうか。
化学流産なのか、それとも胎嚢がちゃんと確認できた後の臨床的妊娠の流産だったのか。
仮に臨床的妊娠の流産を繰り返してしまっているとするならば、ご夫婦の染色体を調べる適応はあると思います。
ご夫婦いずれかに「転座型」と呼ばれる染色体異常が認められれば(不育症の患者さんの1~2%程度に見つかるといわれています)、学会の審査を経て、着床前診断の適応があるかもしれません。
これは、体外受精を行い、分割した受精卵の一部を取り出して染色体を調べ、異常のない受精卵を移植することで染色体異常による流産のリスクを回避するというものです。
しかしながら、着床前診断を行うことで自然妊娠より生児獲得率が高くなるという証拠は今のところありません。
また、着床前診断を行わず、繰り返し妊娠にトライした場合の累積生児獲得率(最終的に赤ちゃんを出産できる可能性)は 80 %程度と、決 して低くないとされています。
担当の先生は、染色体検査はいわゆる気休めで「異常があったとしても対策はないが、異常があるかもしれないと心配するよりも、すべて調べ尽くして、やるだけやったという安心感で妊娠継続に差が出ることもあるので、受ける意味はある」とおっしゃっているようですが、確かにそのようなメリットもあると思います。
1つ不安な要素がなくなれば、アスピリンの治療だけで次回の不妊治療にも問題なく臨めるのではないでしょうか。
不育症の患者さんへの対応として、十分な検査やフォローによる安心感で妊娠継続率が改善するという説もあります。
担当の先生がおっしゃっているのはそういうことだと思いますね。

異常が見つかって 着床前診断で良い受精卵を 戻せば解決するという わけではない?

秋山先生 事前に受精卵を選別して、良い卵を戻せばうまくいきそうなイメージがありますが、高齢になればかなり高い確率で卵に染色体異常がみられます。
一見問題がなさそうなものを選んだからといって、100%妊娠するとは限りません。
前述したように、繰り返し着床前診断をし ながら体外受精を行う場合と、流産を覚悟しつつ現状の治療で繰り返し妊娠をしていった場合、最終的にうまくいく確率はそれほど変わらないといわれています。
着床前診断はハードルが高く、最後の切り札のように思われている方も多いようですが、今のところはまだ完全な方法とはいえないんですね。

アスピリンはどんな薬? 効果はありますか?

秋山先生 アスピリンは血液が固まりやすくなるのを改善するお薬です。
何も異常がない人に使っても効果はないといわれていますが、原因不明の流産を繰り返し、不育症の検査が陰性の人にも使われることが多いようです。
血液が固まりやすいという検査結果が出た人には、臨床でも効果があると感じますね。
きょろちゃんさんは凝固因子活性の軽い異常が見つかったようですから、やはり使ったほうがいいと思います。
凝固異常の種類によってはアスピリンを使って効果がなければヘパリンを投与する、というのが学会である程度定められているガイドラインなのですが、凝固異常の種類がヘパリン投与の適応があるものかどうかわからないので、今のところ、担当の先生がおっしゃるようにアスピリンによる治療だけで問題ないかと思います。

不妊治療について 体外受精は本当に 必要ありませんか?

秋山先生 統計的には自然妊娠よりも体外受精のほうが5%程度流産率が高くなりますと、流産を防ぐという意味で体外受精をするというのはあまり意味がないと思います。
体外受精をして、形態的に良い受精卵を移植することで流産率が低下するという可能性はないとはいえませんが、明確な根拠は乏しく、流産を繰り返しているからといって積極的に行うのは一般的ではないと思いますね。
ただし、不育症うんぬんではなく、年齢が 高くなってくれば正常な方と同じように自然な形では妊娠しづらくなってきます。
現在、どのような治療をされているのか不明ですが、アスピリンを飲みながら数回、人工授精にトライして、それで結果が出なければ、さらに高度な治療である体外受精にステップアップしていくという流れになるかと思います。
いずれにせよ、先生からよくご説明を聞いて、納得する形で治療を進めていっていただきたいですね。
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不妊治療に関するドクターの見解を取材してきました。