不育症の定義と検査について

教えて不育症 のこと!第1回 テーマ 不育症の定義と検査について

妊娠しても流産を繰り返してしまう――。

「もしかしたら不育症?」と心配している方もいるのでは。

まだまだよく知られていない不育症について、 秋山レディースクリニックの秋山先生が丁寧に解説していきます。

秋山 芳晃 先生  東京慈恵会医科大学卒業。東京慈恵会医科大学附属病院、国 立大蔵病院に勤務後、父親が営んでいた産科医院を継ぎ、不 妊症・不育症診療に特に力を入れたクリニックとして新た に開業。O型・やぎ座。現在、仮の場所で診察を行っていま すが、いよいよ3月には従来の場所でリニューアル開院の 予定。床や天井、窓枠など内装は着々と出来上がって、毎日 チェックしに行くのが楽しみだそうです。

ここがPOINT!

● 不育症には不妊症と重なっている部分も

● 2回以上流産が続いたら受診や検査を

● 適切に対処すれば次の流産は8割以上防げる

「不育症」とはどんな 病気なのでしょうか?

不育症とは、妊娠はするものの、流産 や死産を繰り返してしまって生児が得ら れない状態のことを指し、2回の初期流 産を繰り返した場合を「反復流産」、3回 以上の流産を繰り返した場合は「習慣流 産」とすることもあります。

流産・死産 の時期や回数による決まりは特にありま せんが、2回流産あるいは死産をしてし まったら、不育症として対応するのが一 般的ではないかと思います。

不育症は不妊症とは別のものとして考 えられていますが、明確な線引きがある かというとそこは難しく、着床障害など と一部重なっている部分もあると思うん ですね。

ですから、ホルモンの測定や子 宮内ポリープの有無、子宮の形状を調べ るなど、検査も不妊症と共通しているものもあります。

施設によっては不妊症の患者さんにも 不育症の検査や治療を行っているケース もあるようです。

不妊症はもちろん、不 育症に関してもまだ解明されていないこ とが多いので、そのような対応が本当に 正しいかどうかは、まだ結論が出ていな い状況といえるでしょう。

生殖年齢である女性の 約1%に出現する疾患

不育症の頻度は生殖年齢女性の約1% 程度と考えられています。

不妊で悩むご 夫婦は7~ 10 組に1組といわれているの で、それに比べると不育症で悩む方はそ の 10 分の1くらいでしょうか。

厚生労働省不育症研究班と文部科学省 の研究によると、一般市民の中で2回以 上の流産歴を持つ女性が 4.2 %、3回以上 の流産歴を持つ女性が0・ 88 %であることが判明しました。

女性の年齢分布から 有病率を計算すると、毎年 3.1 万人の不育 症患者が出現していることに。

これらの 不育症患者は累積するので、患者さんの ご年齢を 25 ~ 34 歳までと仮定しても、約30 万人以上の不育症患者が潜在している 可能性があります。

臨床での印象としては、以前より不育 症の方は増えている気がしますが、不育 症という言葉が一般的に知られるように なったのはここ 10 年くらい。

その頃から 増加を感じ始めたので、理由としては「広 く認知されるようになったから」という こともあると思います。

また、妊娠される年齢が高くなったと いうことも影響がないとはいえませんね。

流産は妊娠の約 15 %に起こるとされてい ます。

この確率は加齢とともに上昇し、40 歳以上では 25 ~ 50 %程度に。

流産した 絨毛(妊娠の胎児側の成分)の染色体を 調べると、約 70 ~ 80 %に染色体異常が認められます。

このようなことから考える と、近年の晩婚化や高齢での妊娠も遠か らず不育症につながる原因となっている かもしれません。

不育症の半分は原因不明。

異常がなくても流産を 繰り返してしまう場合も不育症の約半分は原因不明といわれて います。

ホルモンの異常や子宮の形態の 異常が本当に流産の原因になっているの か、まだはっきりとわかっていない部分 も多いんですね。

そのなかで、絶対とは いえないけれど、高い確率で流産してし まうことがわかっている因子もあります。

たとえば、抗リン脂質抗体。

この悪い抗 体を持っていると、治療をしなければ9 割以上は流産してしまうというデータが 出ています。

前述したように、まった く正常で、流産するような 因子がなくても 15 %くらい の方は流産してしまい、そ のうち7~8割は染色体の 異常。

つまり受精卵側の問 題で、偶然起こってしまう というのが大部分なんです ね。

それが不幸にも繰り返 して起こってしまうという ケースもあります。

不育症と確定診断して、 100%効果のある治療を していくというのは若干難 しいところもありますが、 検査としては幅広くやって いって、正常でないものに ついてはそれを解決するよ うに対応して、できるだけ うまくいきやすい状態を 作っていく、というのが基 本的な考え方になるのでは ないでしょうか。

1回でも妊娠 10 週以降の 流産なら不育症検査を

不育症の検査で調べる内容は、大きく 分けて次のようなものになります。

①子宮の形の異常

②ホルモンの異常

③ご夫婦の染色体の異常

④免疫の異常(自己抗体・抗リン脂質抗体)

⑤血液を固める働きの因子の異常 (図表参照)

学会では、最初に行う一次スクリーニ ング、それらで異常が見つからない時に 選択的に行うべき検査、と段階的に検査を行うべきとしています。

保険がきかない検査もあるので、患者 さんの経済的・心理的負担を考えるとそ のほうが良い場合もあるかもしれません。

しかし実際にはいくつかの異常が重複し て見つかることもしばしば経験しますの で、当院ではある程度網羅的に、それぞ れの検査に適した時期にまとめて検査を 行うことが多くなっています。

もちろん 患者さんのご希望もあるので、検査の内 容についてよくご説明したうえで、最終 的には相談して決めていきます。

検査のタイミングですが、2回流産が 続いてしまったら受診されてみてもいい と思いますね。

「3回続いたら検査をして みましょう」という考え方の先生もいらっ しゃると思いますが、最近では2回の流 産で不育症の検査をすすめる、というの が一般的なのではないかと思います。

ま た、1回でも、妊娠 10 週以降の流産であ れば、血液を固める働きの因子の異常な どの原因も考えられるので、当院では不 育症の検査をおすすめしています。

不育症の検査はある程度特殊ではあり ますが、不妊治療を行っている多くの施 設でお受けになることができると思いま す。

「不育症外来」など専門的な科で受け ることも良いと思いますが、検査の内容 についてはほとんどの場合大きな差はな いのではないかと考えています。

ただし 検査や治療の必要性に関しては個々の先 生方のお考えもあると思いますので。よ くご相談のうえ方針を決めていただく必 要があります。

検査で異常が出て、妊娠後も治療を続け る必要があるという結果が出たら、当院で は妊娠される前に不育症に詳しい大学病院 の先生に一度ご紹介しておくようにしてい1回でも妊娠 10 週以降の 流産なら不育症検査をます。

妊娠するまで当院で不妊治療を行い、 妊娠したら大学病院の産科で不育症の治療 を行いながら妊娠経過をみていただく。

そ のようにうまくバトンタッチできるシステ ムを作っています。

不育症は適切に対処をすれば、次の妊 娠では 80 ~ 85 %のケースはうまくいくと いわれているので、もし流産について不 安をお持ちのようでしたら、一度検査を 受けてみることをおすすめいたします。

不育症スクリーニング検査(厚労省不育症研究班による)

一次スクリーニング

子 宮 形 態 検 査(HSG、 経 腟 超 音 波(2D、3D)、 sonohysterography) 内分泌検査(甲状腺機能fT4、TSH、糖尿病検査) 夫婦の染色体検査 抗リン脂質抗体検査(抗CLβ2GPI複合体抗体、 抗CL IgG、抗CL IgM、ループスアンチコアグラント)

選択的検査

抗リン脂質抗体検査(抗PE IgG、抗PE IgM) 血栓性素因スクリーニング (第Ⅻ因子活性、プロテインS活性もしくは抗原、プ ロテインC活性もしくは抗原、APTT)

研究的段階の検査

内分泌検査(PCOSのスクリーニング) 抗リン脂質抗体検査(抗PS IgG、抗PS IgM) 免疫学的検査(NK活性、Th1/Th2比) 自己抗体(抗核抗体、抗DNA抗体) ストレス評価(K6)

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