治療再開のことを考えると焦ってしまいます。

妊娠の機会を逃さないよう、 母乳育児は期間を決めて

 
渡辺 浩彦 先生 滋賀医科大学卒業後、京都大学医学部附属病院産婦人科、大津赤十 字病院、済生会茨木病院などを経て、1971年から不妊治療を行っ ている父親の病院を継承。不妊治療から分娩まで手掛け、365日 24 時間の診療体制を取る。O型・おとめ座。「先日、12 年ぶりに 海外旅行へ出かけました」という先生。なかなか長期でお休みが取 りにくい事情もあり、長年諦めていたところ、今回は気心の知れた ご友人の方々に誘われ、3泊4日の香港旅行でリフレッシュ!
香さん(37歳)からの相談 Q.現在37歳、妊娠7カ月です。採卵3回、顕微授精で移植3回目に妊娠し ました。子どもは2〜3人が希望、出産後に不妊治療を再開する予定ですが、 その開始時期で悩んでいます。凍結卵はないので、治療は採卵から。出産後 3〜4カ月をめどに早めに母乳を切り上げ、38歳の間に何度か採卵したい 私と、「子どもが1歳にもならないうちに、次の子のために無理に断乳するな んて可愛そう」という夫。せっかく授かった第1子に、気が済むまで母乳育 児をしたい、という気持ちもやまやまですが、年齢的にのんびりしている余 裕はないと思うと焦ってしまいます。

1人目の出産後、 不妊治療の開始まで、 どのくらい空けるのがよい?

渡辺先生 経腟分娩であれば、特に決ま りはありません。
もし帝王切開で出産さ れるとしたら、半年くらいは期間を空け られるのがいいと思います。
施設によっ ては、子宮の回復のために1年くらいは 期間を空けたほうがよいとするところも あるようですが、当院では半年くらいを めどにお伝えしていますね。
ただ、それ より前に妊娠しても、子宮の傷が開くと か、胎児や出産への影響はまずめったに ないので、心配しなくても大丈夫ですよ。

完全母乳で育児をしている 間は、妊娠しないの?

渡辺先生 母乳が出るメカニズムとして よく知られているのが、プロラクチンというホルモンの作用です。
出産後、授乳中の 女性は、プロラクチンなどの影響により、 卵巣機能が抑制され、基本的には無排卵、 無月経の状態が続きます。
そして授乳期 間が短いほど、月経が始まる時期は早く なります。
だいたい授乳を行わない場合 で2〜4カ月、授乳を行う場合で6〜 10 カ月で月経が再来するといわれています。
平均すると 70 〜 80 %の方が、産後8カ月 ほどで再び生理が始まります。
また、お子さんの成長に合わせて断乳 をされた場合は、おおよそ6週間以内に 月経が再来します。
そして初回月経の約30 %は無排卵で、第2周期目では 80 %、第 3周期目では 95 %が排卵周期になるとい われています。
つまり、排卵は月経に先 立って起こる場合も十分あるということ になります。
一般には産後2カ月、早い 人で産後 45 日くらいというデータもあり、 個人差が大きいので、一概に「何カ月ま で妊娠しない」「生理が来たから妊娠が可 能」とはいえないのです。
たくさん母乳が出るときは排卵も抑制されていて、ちゃんとした生理は来ない場 合が多いので、妊娠しにくい状態にある とはいえます。
ただ授乳中でも排卵や生 理が戻って来るケースは十分考えられま す。
「最近、母乳の量が減ってきたかな?」 というくらいになれば、授乳中でも排卵 が戻って来る人の方が多く、たとえ授乳 していても妊娠は可能です。
昔の子だくさんの時代を想像してみて ください。
出産を終えた後、すぐ次のお 子さんを妊娠される方は多かったですよ。
だから必ずしも「ここまで」と決めて授 乳を終える必要はないと思います。
1人 目は体外受精で治療を行われたというこ とですが、2人目は自然妊娠もあり得る わけですしね。

出産後は、ホルモンの影響で、 間を空けないほうが 妊娠しやすい?

渡辺先生 ホルモンの影響というより、 加齢による“卵子の老化”が進まないよ うに、やはり治療は少しでも早いほうが妊娠しやすいと思います。
2人目不妊の 治療で特に気をつけたいのは、通院にか なり制約ができるのを覚悟していただき たいということ。
子どもが高熱を出した とか、急に体調が悪くなったとか、子育 て中は予期せぬことの連続です。
仕事を お持ちの方の場合、さらに時間的な余裕 がなくなるでしょう。
そうなると「この 日に来院してください」とか「この日に 夫婦生活のタイミングを合わせてくださ い」という基本的なことも実行するのが 難しくなると思います。
ご主人をはじめ、 家族や職場の方々の理解や協力が欠かせ ません。

早期の治療再開のために、 断乳をしたほうがいいの?

渡辺先生 母乳育児にこだわるお母さま 方は多いのですが、明確な理由がなければ 急いで断乳する必要はありません。
もし早期に不妊治療の再開を望むのであれば、 プロラクチンの分泌を抑える作用のある 薬を処方してもらって断乳するのも一つ の方法かと思います。
たとえば、後で悔 いが残らないように、1年は母乳育児を するというふうに、ご主人と相談されて、 ある程度のリミットを設けてみてはいか がでしょうか。
もちろん、自然におっぱ いの出が悪くなってきたら、その時に授 乳をやめればいいのです。
また、おっぱいがたくさん出る状態が 続いて、もし治療再開までの時間がもっ たいないと考えるのなら、薬で母乳を止 めるという選択肢もあります。
母乳育児 については、いろいろと意見もあります が、当院で2人目不妊の相談に見える方 の多くは、やはり年齢的な問題が大きく 影響しています。
ご夫婦が2人目のお子 さんを強く希望されるのであれば、治療 は早期に始めたほうがいいでしょう。
母 乳育児のために次の妊娠の機会を失うよ うなことがあってはいけません。

Column コラム

●子どもを連れて通院してもOK?

「キッズコーナーや託児所を設ける、お子さま 連れの患者さんと待合室を分けるなど、最近 はほとんどのクリニックでいろいろと配慮さ れているケースが多いので、大丈夫ではない でしょうか。
ただ、治療中はお子さまのはしゃ ぐ声などに対して、非常に敏感になっている 患者さんもいらっしゃいます。
ルールを守り、 通院されている方に対して気を使うこともマ ナーの一つかと思います」

●2人目不妊治療で気をつけたいポイント

1.年齢を考慮して早めに専門医へ

30代後半など、高齢で1人目を出産した場合、 次の妊娠を望むのであれば、年齢やホルモン 値などを十分に考慮して早期に専門医にかか ることが望ましい。

2.通院の制約を覚悟する

育児で忙しくなる場合が多いので、1人目の 治療の時のようには通院や治療を進めること ができない可能性も。
仕事や育児との両立に は周囲の理解と協力が必要。

3.必要に応じて断乳も選択肢に

授乳期間でも月経や排卵が再来すれば、妊娠 は可能。
ただし年齢的に急いだほうがよい場 合は、授乳期間を決めて断乳することも選択 肢に。

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