胚盤胞まで育ちません1

「刺激?自然?   排卵誘発はどの方法がいいですか」

採卵では半数以上が空胞。

授精した卵も 胚盤胞まで育ちません

浅田 義正 先生 名古屋大学医学部卒業。1993年、米国初の 体外受精専門施設に留学し、主に顕微授精 を研究。帰国後、日本初の精巣精子を用い た顕微授精による妊娠例を報告。2004年、 浅田レディースクリニック開院。2006 年、 生殖医療専門医認定。2010年、浅田レディー ス名古屋駅前クリニック開院。国内の高度生 殖医療を牽引し続け、今年9月には「講演 以上に伝えていきたいことがある」と、『ド クターアカデミー浅田塾』を開講。生殖医療 を真摯に考え不妊治療が好きだという若き 人材を育成すべく、第1期として来年3月ま で計5回の開講を予定している。

ドクターアドバイス

●採卵のタイミングを見極めることが重要
●新鮮胚移植ではなく凍結融解胚移植にすべきです
●凍結融解胚移植の技術が万全なクリニックの選択を
hachiさん 28 歳 Q.原因不明の不妊で人工授精を3度行うも陰性で、体外受精へ切 り替えました。2度挑戦しましたが一度も胚盤胞まで育ちませ ん。最初はアンタゴニスト法で、20個卵胞を刺し11個が空胞、 9個をスプリット法で受精させるも最終的に残った2個は桑実胚 で停止。次はロング法で、卵子の質を上げようと漢方やサプリも 服用しましたが、10個のうち空胞6個で4個を採卵。卵胞は13個 見えましたが、子宮裏側にあった左卵巣の3個は採卵しませんで した。採卵した4個のうち2個は受精せず、新鮮胚移植した1個は 陰性。残りの1個を培養しましたが4分割で停止しました。卵子 は採れるので年齢的にも諦めるのは早いと言われましたが、心 身的にも経済的にも辛くどうしていいかわかりません。

治療データ

【検査・治療歴】

治療歴2年。AMH2.43。人工授精を3度行うも陰性。体外 受精を2度挑戦するも一度も胚盤胞まで育たず。最初はアン タゴニスト法で、20個卵胞を刺し11個が空胞、 9個をスプ リット法で受精させるも最終的に残った2個は桑実胚で停止。

【現在の治療方針】

ロング法で10個のうち空胞6個で4個を採卵。採卵した4 個のうち2個は受精せす、新鮮胚移植した1個は 陰性。残 りの1個を培養したが4分割で停止。

【精子データ】

精液量1.5ml、精子濃度99.3、運動率96%、奇形率問題なし

卵の成熟と採卵のタイミング

hachiさんは排卵誘発の方法を変えて 2 度の体 外受精を行っていますが、どちらも卵が胚盤胞まで育 たないというのはどんな原因が考えられますか。
浅田先生  1 度目は 20 個刺して 11 個が空胞、 9 個 しか採れなかったということですが、まず“空胞” という言い方が疑問です。
要するに、卵があるの に採れなかったわけですよね。
これは卵の成熟度 が悪いんだと思います。採るタイミングが悪かっ た、あるいは採り方が技術的に下手だったという ことですね。
元々中身のない卵胞がたくさん育つ わけはなくて、卵子は原始卵胞から排卵まで 6 ヵ 月かかって育ってきますから、本当に最初から中 身がなければ育たないか、もっと前に消えている と思いますよ。
HCGをちゃんと打ったりタイミ ングを変えたら採れるようになるはずです。
「あな たの卵胞は中身がなくて空っぽです」というのは 間違いで、本来採れるべき卵が採れなかったとい うこと。
空胞という説明は実に拙いと思います。
採卵のタイミングが早すぎたということでしょうか。
浅田先生 そうだと思います。
20 個のうち 9 個とい うのは採卵率が悪いですよね。
その上で成長も悪い ということは、まだ卵の中身も未熟だから結果も悪 くなるということ。 2 度目の経過を見ても、桑実胚 とか 4 分割胚で停止というのは、明らかに採卵のタ イミングが悪くて胚盤胞まで育たなかったという気 がします。
この先生が何を基準にHCGを打つタイ ミングを計っているかということですが、最初の結 果から卵の成熟障害が考えられるので、 2 度目はも う少し考えるべきでしたね。
たぶん、「一番大きい 卵胞が 18 ㎜とか 20 ㎜になって、それが 2 ~ 3 個揃っ たらHCGを打ちましょう」というように教えられ て、患者が若い人でも高齢でも、卵の成熟が良い人 も悪い人も同じタイミングでやっているんじゃない でしょうか。
それでアンタゴニスト法がダメだったのでロング 法に…と排卵誘発の方法を変えていますが、僕に言 わせたら方法ありきではないよと。
卵を採るタイミ ングというのは、卵胞の大きさとホルモン値、年齢 とAMH値で判断して、成熟しているかどうかを見極める。
採卵技術の上手い下手ももちろんあります が、上手い医師がやっても採れなければ、それは成 熟度が悪いということなんですね。
要するに、卵の 採れが悪い、受精率が悪い、成長が悪いというのは、 卵の成熟度を改善する努力をすべきで、排卵誘発の 方法が問題なわけではないと思います。
それからたぶん、この先生は新鮮胚移植のタイミン グだけで治療されているんでしょうね。
新鮮胚移植で は早期に黄体ホルモンが上がり、結局移植成績が下が るので早めに採る、というのが昔のやり方。
凍結融解 胚移植なら、ちゃんと卵の成熟を待って良いタイミン グで採卵すれば成績も当然良くなるわけです。

採卵は技術

浅田先生でしたら融解凍結胚移植をされるという ことですね。
浅田先生 そうですね。
卵の成熟障害が疑われるの で、まず卵を採るタイミングを変えてみる。
そして 採卵の時に黄体ホルモンが上がったら、卵は全部凍 結して融解胚移植にすべきだと思います。
それには 凍結融解胚移植の技術がしっかりしたクリニックを選ぶことも大切。卵が育たないのは、元々の質が悪 いということももちろんありますが、もうひとつは 成熟度。
それからラボの受精の技術、顕微授精の技 術、培養の技術でも全然変わってきます。
当院でも、 昔は胚盤胞到達率は高くなかったのですが、培養液 を変えたり培養技術をどんどん上げていくことで胚盤胞到達率の向上に努めてきました。
ですから、当然技術の差はありますよね。
2 度目の時に、「子宮裏側にあった左卵巣の 3 個は 採卵しませんでした」という記載もありますが、せっ かくできた卵が「子宮の裏側にあったから採卵でき ない」というのも可哀想ですよね。
通常は膣から針 を刺していくわけですが、卵巣が癒着している場合 など子宮を貫通して採卵することもあります。
子宮 は硬い筋肉の塊なので針を刺しても全然問題はない んですが、怖いからやらないという先生がいるんで すね。
こういうケースはいくらでもありますし、卵巣チョコレート嚢胞など条件の悪い患者さんもいま すが、それでも採卵するのが技術。採卵はあらゆる状況で本来可能なんです。
経験が少なかったり、リスクを恐れる医師が多い ということですね。
浅田先生 「体外受精はできますよ」と言っても、 いろいろなケースに対しての対応が不十分。
ひと通 り誰かに教わって、こういうふうにしなさいと言わ れてやっているだけで、この患者さんの場合はどう するべきか、という自分なりの工夫と経験が十分で ないのは残念ですね。

諦めるにはまだ早い

hachiさんは、もう子どもは諦めるしかない のかもしれない…と不安に感じていらっしゃるよう ですが。
浅田先生 諦める必要など絶対にありません。
技術 のしっかりしたクリニックを選んで再出発されたら どうでしょうか。
28 歳という若さでAMHも2 ・ 48なので、これで妊娠できずに終わったら、不 専門医としては恥ずべきでしょう。
良い時期にちゃ んと卵を採れば、 1 回採卵しただけでご兄弟が 2 ~3 人できるかもしれませんよ。
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不妊治療に関するドクターの見解を取材してきました。