不妊症検査で 診断されたのですが 下垂体機能不全とは?

一時は断念した不妊治療を再開したいけれど、気になるのは、 8年前に検査で診断された下垂体機能不全の診断について。

宮崎レディースクリニックの宮崎和典先生に詳しく伺いました。

宮崎 和典 先生 大阪医科大学医学部卒業。学生時代の新生児医療への興 味がきっかけとなり、体外受精や不妊治療の世界を志す。同 大学産科婦人科講師を経て、1992年に不妊症、不育症治 療専門クリニック、宮崎レディースクリニック開業。開業当初 より泌尿器科の専門医による男性不妊外来を開設する。A 型・しし座。2014年春より、常勤の新しいドクターの就任が 決定。「患者さんのために、より目の行き届いた治療が行える と思います」と、宮崎先生もはりきっていらっしゃいます。

ドクターアドバイス

無月経となった原因は体重減少の可能性が高い
ひどい生理痛があるなら子宮内膜症の検査を
治療再開には男性不妊の検査も不可
れのさん(32歳)からの相談 Q.結婚後、なかなか妊娠に至らず、24歳の時に受けた不妊症検査で「重症脳下垂体機能不全」と診断されました。当時は詳しく調べようもなく、そのまま2年ほど卵子を育 てる1日おきのホルモン注射と排卵誘発をしてタイミング療法を行いましたが、体調不良やストレスなどで精神的に参ってしまい、治療を中断。医師からはステップアップ をすすめられました。 現在、主人とも相談して治療再開を検討中ですが、下垂体機能不全がレアなケースで あると何かで読んだこともあり、再開するにも不安です。不順でいつ来るかわからな かった生理がこの1年は定期的に来ているのですが、妊娠に至らないことを考えると、 排卵はしていないのでしょうか。人工授精体外受精なら妊娠は望めるでしょうか?

●これまでの治療データ

検査・ 治療歴

検査歴は、血液のホルモン検査、子宮卵管造影検査。
ホルモン注射と 排卵誘発剤注射でのタイミング指導を合計3年弱くらい受ける。
結婚 歴13年。

不妊の原因 となる病名

重症脳下垂体機能不全?

現在の 治療方針

現在は治療お休み中。

精子 データ

ヒューナー検査のみでデータはなし。

脳下垂体機能不全

24 歳の時に受けた不妊症検査で「重症脳下垂体機能不全」と診断されたとのこと。下垂体の機能が低下すると、女性の妊娠にどのような影響があるのでしょう?
宮崎先生 下垂体は、大脳のすぐ下にあり、多くのホルモンの働きをコントロールしている重要な内分泌器官です。
人間の骨や筋肉の成長を促進する成長ホルモンをはじめ、生殖医療においては、FSH(卵胞刺激ホルモン)やLH(黄体形成ホルモン)という性腺刺激ホルモンを分泌する働きが知られています。
れのさんは8年前に不妊症検査を受けた際 に、「重症脳下垂体機能不全」と診断されたということですが、これはおそらくホルモン検査のための名目として医師が記した病名なのではないかと推察します。
胃の検査をする際に「胃潰瘍の疑い」「胃ガンの疑い」といっても、あくまでも疑いであって、ハッキリと診断されたわけではないでしょう?
もし本当に重症で、シモンズ病やシーハン 症候群などといった下垂体機能に重大な病気が隠されているとすれば、毎月、自然に生理が起こることはありえません。
月経についての記載を見ると「初潮時より不順」生理痛がひどく、起きられないことがある」「今は定期的に生理が来ている」ということですから、もしかすると検査当時だけの一時的な症状だったのかもしれませんね。
いわゆる拒食症の方が無月経になって治ら ないと、中枢である視床下部が働かなくなり、結果、ホルモン分泌の指令が伝達されずに、下垂体が“眠った状態”になることがあります。
そういう時に検査をすると、ホルモン値の異常となって現れることが多い。
過激なダイエットをしたり、拒食症で低体重となった経験はないでしょうか?

体重管理と不妊治療

れのさんは身長166㎝、体重 50 ㎏です。痩せ型ではありますが、すごく痩せているという体型ではないようですが。
宮崎先生 具体的に言うと、たとえば3カ月~半年以内にダイエットなどで急激に体重が落ちたりすると、低体重性の無月経となる可能性がありますね。
だいたい半年以内に体重を戻せば、たいていの人は生理周期も元に戻ります。
年齢とともに太ってきて体重は戻ったものの、一部の機能だけが戻っていて、まだ一部の機能には障害が残っているという人もいらっしゃいます。
一度、ホルモンの負荷テストをすれば反応が起きますから、すぐにわかるはずです。
シモンズ病やシーハン症候群では反応は起こりません。
もし他にも何か心配な点が残るなら、この 機会に内分泌系の専門施設で詳しく調べたほうがいいでしょう
「重症」というのであれば、それは何の原因によってそうなっているのか、その大元を詳しく調べる必要があると思います。
そういう意味でもきちんとした専門医の診断が必要なのではないでしょうか?

男性不妊の検査も

現在は定期的に生理が来るようになったということです。生理周期は 28 ~ 35 日とのことですが、排卵が起こっていなければ、やはり治療を再開すべき? その他に不妊原因とし て考えられる要素はありますか?
宮崎先生  20 代半ばで若かったとはいえ、1年以上、ホルモン投与によるタイミング指導を行ったのに妊娠できなかったとすれば、通常は次の治療へ進んでいくべきだったと思います。
子宮卵管造影検査でも異常がなかったということですから、いわゆる原因不明の不妊症ということになるでしょうね。
2年間も治療を続けて妊娠しなかったとい うことは、男性のほうにも何か要因があったのかもしれません。
ヒューナー検査で特に問題がなかったということだけど、ヒューナー検査では、男性に不妊の要因がない、正常という保証にはなりません。
現在、ご主人にも不妊治療を再開したいというお気持ちがあるなら、ぜひ精液検査や専門医による男性不妊の検査も受けられることをおすすめします。
その他にも、若い頃から生理痛がひどかっ たとのこと。子宮内膜症を疑ってみる必要があると思います。
性交痛や排便痛などの自覚症状はありませんか?
子宮内膜症は腹腔鏡 検査による確定診断が必要ですが、月経時の痛みがひどいようなら医師に相談して検査を受けたほうがいいように思います。
不妊の原因がわからない場合というのは、気力が続いているうちに疑わしい点は次々と調べていくことが大切です。
同じ治療で結果が出ないと、気力が失われていってしまいます。
検査や治療は何となく続けるのではなく、やはり2年ぐらいを目処に、できるだけ集中して行ったほうがいいでしょう。

自然妊娠の可能性

以前は、ホルモン注射や精神的なストレスで参ってしまったことが、治療を中断した理由とのことでした。当時と今では、治療環境も大きく変化したのではないですか?
宮崎先生 そうですね。
年数はかかっているけれど、不妊治療としては、れのさんはまだ初期段階しか経験しておられません。
もし体重減少による副次的な下垂体機能低下症による無月経であれば、ホルモン剤の使い方によっては自然妊娠できる可能性も残されていると思います。
子宮内膜症や男性不妊など、今まで見過ごしてきた疑わしいところは診断をはっきりさせて、ぜひとも新しい気持ちで治療のスタートを切られることをおすすめします。

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不妊治療に関するドクターの見解を取材してきました。