自宅で簡単に排卵日を予測できる排卵日検査薬。
タイミング指導や人工授精などの一般不妊治療では、 排卵日の判定が治療の重要なポイントとなります。
使い方のコツや注意点を知り、上手に活用するため、 希望が丘クリニックの藤原睦子先生にお話を伺いました。
「排卵日検査薬」を使っている人の声
自宅でタイミングを 逃さないために 超音波検査と併用します
自宅で排卵日を予測することができる排卵日検査薬。
手軽でとても便利ですが、ウェブ「ジネコ」の投稿を見ていると、「排卵日がわかりにくい」「本当に正確に検査できているか心配」など、使い方に不安を感じる方もいらっしゃるようです。
タイミング指導の際、排卵日検査薬の使用を積極的にすすめているという、希望が丘クリニックの藤原先生に、その活用法について伺いました。
藤原先生「当院は不妊専門外来として、排卵日検査薬を積極的に使用している施設だと思います。
もちろん補助的にではありますが、特に診療中によく使っています。
患者さんの来院時にはまず、排卵しているかどうか、超音波検査で卵胞のチェックを行いますが、もうすぐ排卵日と思って来院された方でも、少し早かったということは少なくありません。
翌日という人もいれば、あと3日後くらいかなという人もいるので、『次の来院までの間に、自宅で排卵のタイミングを逃さないように、排卵日検査薬を使ってみましょうか』というすすめ方をしています」
自宅で使用する際、どんなことに注意すればよいでしょうか?
藤原先生「排卵日検査薬は、尿中のLH(黄体化ホルモン)に反応して、色の濃淡で排卵日を診断します。
濃いピンク色がきれいに出ると、プラス=陽性です。病院で使用する検査薬は精度の高いタイプのものですが、全員にきれいな陽性反応が出るわけではありません。
患者さんに注意してもらっている点として、『これだけを頼りに排卵日を待たないで』ということを説明しています。
検査結果が出ないからと夫婦生活を持たないまま、ずっと待ち続けて、次の来院時にはもう排卵が終わってしまっている……という人もいらっしゃるからです。
判定で薄いピンク色が出始めたら、間に一度、診察を挟んでいただくか、翌日に持って来ていただいて排卵しているかどうかをチェックできれば理想的です。
“判定にちょっと迷いがあれば受診”というのが当院の方針ですね。
とはいえ、診察に来られない日もあると思うので、判定がわかりにくい場合も夫婦生活は一度持っておいたほうがいいでしょう。
目安は、濃いプラスの反応が出たらその日に、少し薄いプラスの日は翌日を目指してタイミングを合わせるようにしてくださいと伝えています」
検査方法は簡単ですか?また、市販されていますか?
藤原先生「当院で使用している排卵日検査薬は、カセットタイプでかなり使いやすいと思います。
付属のスポイトを使って、決まった量の尿をフィルター部分に落とすだけ。
尿が全部吸収されたら、陽性の場合、かなりキレイなピンクに変化します。
よく“病院の検査のほうが精度が高い”といわれたりしますが、病院では超音波検査と併用するので、卵胞がある程度の大きさに達した後に判定することが多いからでしょう。
当院では、排卵日検査薬を1回の診療につき2個お渡ししており、希望があれば追加で購入していただくことも可能です。
調剤薬局でも同じタイプのものを購入できます」
排卵日検査薬が 主体的に治療に関わる きっかけにも
検査薬には判定結果を保存するシートが付いています。日を追って判定の色が濃くなっていくのがわかりますね。
藤原先生「このシートは私も気に入ってよく使っています。
まずクリニックで検査して、もう少しだなという薄いプラスの反応が出たとすると、シートの最初の欄に判定プレートを貼った状態で患者さんに手渡します。
『翌朝、判定が濃くなっていたら、次の日に夫婦生活を持つように』という感じで、タイミングを指導。
人工授精を併用する方には、朝、通院してもらう都合で、前日の夜から検査をすすめることが多いです。
体外受精の採卵や移植の決定のために使う場合は、もう少し予測を絞りたいので、『今日の夜と明日の朝に検査し
て持って来てね』と、宿題のように渡す人もいますね。
変化が目に見えるので、治療に参加している実感が湧くのか、患者さんの反応もいいですよ」
仕事を持つ女性は、指定の日に通院するだけでも大変です。自宅で排卵日の予測ができるのは助かりますね。
藤原先生「上手に取り入れられたらいいと思います。
たとえば、当院で人工授精を併用される患者さんの話ですが、そろそろ排卵日かなと思ったら、排卵日検査薬でチェックして、『昨日、陽性の判定が出たので持ってきました』と、自分から人工授精の準備を整えて受診されるような方もいらっしゃいます。
患者さん自身が、今日の診察は何をしに行くのかを理解して受診されていると、余計な外来の回数を減らせますし、こちらも人工授精をあと何回するかなど提案しやすいですね」
最後に、不妊治療を行う女性に向けてアドバイスをお願いします。
藤原先生「不妊治療や出産は女性のライフスタイルに大きく影響します。
私が注意しているのは、できるだけ患者さんの希望をお聞きして、これはこうだからと治療方針を決めつけないようにすること。
通院のために仕事をやめてほしくないですし、今は何をしているのかという自覚を持ちながら、主体的に治療と向き合うようにしてください」
排卵日検査薬って?
排卵前に急激に分泌量が増える尿中 のLHホルモンの値を判定し、排卵 日を予測します。
使い方は、採尿し て、スポイトで診断カセットのフィル ターに落とすだけ。判定結果を保存 できるシートが付いているものなら、 日を追って判定の色が濃くなってい くのがわかり、排卵日を予測する目 安になります。