精子の精密検査が基準値に満たず顕微授精を検討中です

石原 尚徳 先生 高知医科大学卒業。神戸大学医学部大学院修了。兵庫県立成人病 センター、兵庫県立こども病院の勤務を経て、2012年より久保みずきレ ディースクリニック菅原記念診療所院長。不妊治療から周産期・小児医療 まで、地域に根ざした総合的なサポート態勢が整う同クリニックで、精力的 に活動する。東京出張時に、皇居の外周路を颯爽と駆け抜けるランナーた ちを見て、休止していたランニングを再開したいそうです。
Elephantaroさん(35歳)からの相談 Q. 不妊専門クリニックに通い始めて約8カ月、今までタイミング指導を受けてきました。1 回人工授精もしています。検査で特に問題はなく、遅い排卵を早めるためにセキソビット®を3カ月前から処方されています。一方、37歳の主人のほうは、昨年、泌尿器科で 精液検査をしたところ、すべて基準値を満たしておりましたが、今年になって運動率が 33%、23%と下がり、クルーガーテスト1%、正常形態前進運動精子数40万と基準 値を下回り、医師からは「この数値だけを見ると自然妊娠は難しい」と告げられました。 今後は顕微授精を視野に、人工授精で様子を見て決めていこうとのこと。サプリメントや 生活習慣の改善で、精液所見が回復する見込みはないのでしょうか。それとも卵子が老 化する前に顕微授精に進んでおいたほうが賢明? その場合、より体に負担のない体外受精を選択することは可能でしょうか。

男性不妊外来へ

精子の形態を調べる精密検査、クルーガーテストの結果が基準値を下回り、ご主人の精液所見のデータが少しずつ低下していることから、ステップアップの時期を検討中です。
石原先生 女性ほどではないにしても、男性も加齢とともに少しずつ精巣の機能が低下し、妊娠率が下がるといわれています。
一度、人工授精をされたということですが、3回くらい行って結果が出ない時は、やはり主治医のおっしゃる通り、顕微授精に進むべきだと思います。
その前に、できれば男性も精液検査だけでなく、男性不妊専門医に詳しく診察を受けておかれたほうがいいでしょう。
もし精索静脈瘤や炎症のせいで精子形成に 何らかの影響が生じているとしたら、精子の状態を改善してから顕微授精に臨んだほうがよいと思います。
手術で精液所見が大きく改善できれば、顕微授精だけでなく、人工授精で妊娠を目指せる可能性も出てきます。

サプリや漢方は個人差も

ご相談のように、サプリメントや生活習慣の改善などによって、精液のデータを上げることは難しいのでしょうか?
石原先生 サプリメントや漢方薬の服用については、効果のある人にはあるといったところでしょうか。
精巣で精子がつくられて精液中に出てくるまでに、およそ2カ月かかります。
さまざまな薬を試しても効果が現れるまでに時間がかかりますので、あくまでも補助的な治療ととらえたほうがよいでしょう。
奥さまの年齢も考慮すると、そうのんびり治療にかける時間はないはず。できるだけ早い時期に専門医にかかるべきです。

手法と妊娠率を同時に考える

先生から治療法の選択について、アドバイスをお願いします。
石原先生 体外受精において、卵胞の発育を見ながら排卵誘発剤を計画的に使用する方法を、調節卵巣刺激といいます。
大きく分けるとロング法、ショート法、アンタゴニスト法となりますが、患者さんには抵抗があるという方もたくさんいらっしゃいます。
自然に近く、体に優しい刺激法としては、クロミッド ®やフェマーラ ® などの内服の後、卵胞の様子を見ながら注射をして採卵するマイルド法という体に負担の少ない方法もあります。
ただし、注射や副作用の量が少なければ、それだけ採卵できる卵子の数も少なくなるので、どうしても妊娠率は低くなります。
最も体に負担のかからない体外受精の方法 としては、排卵誘発剤を使わず、自然の生理周期に合わせて卵胞チェックをしながら採卵する完全自然周期という選択肢もあります。
1回あたりの妊娠率はマイルド法よりさらに低下します。
最終的にどの方法を選択するかは希望を伝 え、医師との相談で決めていくことになるでしょう。
採卵や受精卵の培養には費用がかかりますので、体外受精や顕微授精は1回1回の治療費も高額になります。
そのためにも男性側の精子をつくる環境もできるだけ改善しておかれるといいでしょう。
>全記事、不妊治療専門医による医師監修

全記事、不妊治療専門医による医師監修

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