体外受精の適応について

人工授精17回。 このまま続けて妊娠する 可能性はあるのでしょうか?

大島 隆史 先生 自治医科大学卒業。1982年、新潟大学医学部産科婦人科学教室入 局。産婦人科医として3年間研修後、県内の地域病院の1人医長として 4年間勤務。1992年、新潟大学医学部において医学博士号を授与さ れる。新潟県立がんセンター新潟病院、新潟県立中央病院勤務を経て、 1999年、大島クリニックを開設、院長に就任。最近は、長野市や長岡市 など遠方からの患者さんも増加。初診の方も依然、年齢の高い方が多いと か。「ご主人が治療に消極的で来院が遅れてしまうケースが目立つので、 早めにご夫婦で話し合っていただきたいですね」。
マンゴー姫さん(35歳)からの相談 Q. 本格的に不妊治療を始めてもうすぐ5年になります。1軒目の総合病院で3年にわた り人工授精を9回行い、4回妊娠して4回とも流産。いずれも6~7週未満の初期流 産でした。不育症の可能性があるといわれ、体外受精も行っている不育症専門医のいる 大学病院に転院。いろいろ検査をしましたが、プロラクチンが高いだけで特に異常は見 つかりませんでした。そこでは「人工授精で妊娠しているのだから、このまま1年でも2 年でも人工授精をくり返せばいい」と言われ、これまで8回続けてきましたが、一度も妊 娠しません。もうすぐ36歳になるし、子どもは何人か欲しいので、できるだけ早くと思っ ていますが、何度先生に希望しても「適応がないから」と体外受精をしてくれません。こ のままずっと人工授精だけ続けていてもいいのでしょうか?

人工授精の限界

2つの施設で 17 回も人工授精をされていますが、これは効果のある治療なのですか?
大島先生 一般的に人工授精は、3~5回して妊娠に至らなければ体外受精にステップアップしたほうが望ましい、と考えられています。
人工授精の継続妊娠率は、 34 歳以下の方で、1~2回目で 20 %程度、3~4回目で 15 %程度、5回目になると7%程度です。
35 ~ 36 歳、マンゴー姫さんくらいの年齢になると、1~2回目でも若干妊娠率が落ちていく。
6回目以降で妊娠される方もいますが、回数を重ねれば妊娠率が上昇していくという治療法ではないので、やはり5回くらいを目安にステップアップを考えたほうがいいと思います。
全部で 17 回。最初の施設では妊娠されてい ますが、転院されてからは8回くり返しても結果が出ていません。
やはり、このまま続けても厳しいような気がします。

体外受精の適応

ご本人は体外受精を望まれているようですが、病院の適応にならないようです。そのようなことはよくあるのですか?
大島先生 もともと体外受精は、卵管障害の方を対象とした治療でした。
しかし現在では適応の幅が広がり、子宮内膜症抗精子抗体を持つ方、男性不妊、原因不明の長期不妊などでも行われています。
そのようなことから考えれば、マンゴー姫さんもその適応に当てはまるのでは。
不育症と疑われたようですが、検査に異常は認められません。
不育症ではなく、これまでの治療や検査ではわかりえない不妊因子があるのではないでしょうか。
適応の条件は施設によって異なる場合もあ るようですが、珍しいケースですね。
大学病院ということで、基準が少し厳しいのかもしれません。
おそらく、過去に一度でも人工授精で妊娠した経験がある方は、体外受精の適応にならないのかもしれません。

クロミッドの副作用

現在は、クロミッド ® の飲み薬で排卵誘発をして人工授精を続けているようですが。
大島先生 そこも少し気になりますね。クロミッド ® を長期服用すると妊娠率が落ちていくというデータもあります。
当院の場合は、飲み薬より、注射で強めに刺激して早く妊娠につなげる方法をとっていますが、これもやはり大学病院ということで、卵巣過剰刺激症候群などを危惧して、低刺激のクロミッド ®を中心に治療をされているのかもしれませんね。

夫婦間の意思の疎通

このまま担当医の先生に従って、人工授精を続けていってもいいのでしょうか。
大島先生 このまま人工授精を続けても妊娠する可能性はゼロとはいえませんが、ご本人が納得していないのが問題だと思います。
不妊治療は、後悔しないために納得して治 療を受けることが大切です。
一度、ご夫婦で先生にご相談されてみてはいかがでしょうか。
このまま人工授精を続けていった場合の妊娠率など、統計的なこともきちんと聞いて、それで納得できない場合は、セカンドオピニオンや転院を考えられてもいいと思います。
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不妊治療に関するドクターの見解を取材してきました。