より可能性の高い〝胚〟を予測する「タイムラプス・モニタリングシステム」とは?

培養庫内で定期的に胚を観察できるヴィトロライフ社の新システムにより、胚の成長過程をより正確にチェックすることができるようになりました。

その画期的な特長について、木場公園クリニックの吉田先生にお聞きしました。

〝育ち方〟を知ることで、より妊孕性の高い胚を選ぶことも可能に!

 

インキュベータは子宮。 大切な胚はなるべく 出し入れしたくない

プリモビジョンという“タイムラプス・モニタリングシステム”を導入されましたが、どんな装置ですか?

吉田先生 IVF(体外受精)ICSI(顕微授精)などにおいては、採取された卵子と精子は体外で出会い、培養液の入ったシャーレに入れられて、移植までの期間“インキュベータ”と呼ばれる培養庫の中で育てられます。

インキュベータは、いわば子宮の代わりをする、胚(受精卵)にとっての生命維持装置で、庫内は温度や湿度はもちろん、酸素や二酸化炭素濃度なども徹底して管理されています。

プリモビジョンは、胚をこのインキュベータに入れたままで、受精卵撮影専用の超小型特殊カメラで撮影・記録することができるモニタリング装置です。

画像はPCやiPadなどに送ら れ、培養室から離れた場所のモニター画面で確認できます。

5分おき、10 分おきと撮影間隔も任意で設定ができ、一定間隔で記録された画像によって、受精から移植できる胚になるまでの、細胞分割の様子、スピード、フラグメントの発生時点などを正確に詳しく知ることができます。

プリモビジョンの導入理由は?

吉田先生 胚が順調に分割しているかどうかは、これまではインキュベータからシャーレを取り出し、顕微鏡で確かめるしかありませんでした。

そのため、1日1回、多くても2回ほど観察するのがやっと。

そのたびにいちいちインキュベータの扉を開け閉めしなくてはなりません。

インキュベータ内に5つのシャーレがあるとしたら、取り出すのに5回、戻すのに5回、少なくとも1日に合計 10 回は開け閉めします。

観察は迅速に行われますが、できれば胚を外気に触れさせずに済むに越したことはないですし、開け閉めしなくて済むのならインキュベータ内の環境も最適なままに保てます。

プリモビジョンを導入したのは、胚の成長過程をよりきめ細かく記録してくれるとともに、胚の観察におけるこれまでの不都合や不便を、大きく改善してくれることと期待したからです。

タイムラプス・モニタリングシステム機器はいくつか種類がありますが、プリモビジョンを選んだのは、私が最も優秀だと信頼して使用しているインキュベータとの相性が良かったから。

まずは、胚の命を守るインキュベータの性能の邪魔をしないことを第一に考えました。

難しい〝移植胚選び〟 成長プロセスを 確実にチェックできる

治療へのメリットは?

吉田先生 1個しか採卵できなかった患者さんに対しては、その胚を移植するしかありませんが、複数個の胚が採れて育った場合には「どの胚を移植すべきか」という選択がしいられます。

特に反復ART不成功例の患者さんにとっては、できるだけ妊孕性が高い胚を選択するための指標が必要です。

現在の胚の評価方法の多くは、形 態から判断され、形の良い胚は妊孕性が高いと考えられていますが、実はそれだけでは測れないのです。

5日目に見た目にもきれいな胚盤胞になっていても、胚盤胞になるまでの途中経過で、分割の仕方、スピードに異常があることも考えられます。

胚の評価方法は、受精後から約1日後に2分割、3日後には8分割に、とステージごとに評価方法があります。

見た目だけでなく、そのタイムステージに則って順調に育ってきたかどうかも大変重要なポイントとなります。

医師としては、1つの胚からできるだけ多くの情報を得たい。

プリモビジョンでは、その成長過程で起きた変化をさかのぼることができ、これまで以上に詳しくたどることができるのです。

プリモビジョンは良好な胚を選ぶ ためだけではなく、異常胚を移植しないようにするためにも使うことが可能です。

たとえば1個の割球が直接3個に分割してしまうことがあります。

このような胚は妊娠する可能性が極めて低いため移植するべきではありません。

導入されてからの成果は?

吉田先生 まだ日も浅いですし、妊孕率の向上や上昇といったことも、データにはしていません。

ただ、培養液のメーカーや種類に よって、胚は異なる成長を遂げることがあるので、ある程度データ化し、患者さん一人ひとりのケースに応じて、最適な培養液を選ぶために役立てることも可能ではないかと考えています。

発展的な技術ですので、そのほかにも思いがけないシーンで利用価値を見出すことができるのではないかと期待しています。

余談ですが、これを使用すること によって患者さんの費用負担が増えるようなことはまったくありませんので、どうぞご安心ください(笑)。

吉田 淳先生 1999年木場公園クリニックを開院。産 婦人科・泌尿器科医。生殖医療指導医・ 臨床遺伝専門医。
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不妊治療に関するドクターの見解を取材してきました。