初期流産をくり返していますが治療法はありますか?

神谷 博文 先生 札幌医科大学卒業。同大学産婦人科学講座、第一病理学講座に入局 後、斗南病院にて産婦人科科長を10年間務める。1998年、神谷レディー スクリニックを開業。昨年1月にクリニックを移転し、電子カルテの導入や施 設・設備の充実、スタッフの増員を図った。来年はJISART(日本生殖補助 医療標準化機関)の、再来年はA-PART(不妊・生殖補助医療国際学会) の総会が札幌で開催予定。「コーディネーターを務めることになり、スタッフと 頑張ります!」。
あゆたさん(40歳)からの相談 Q. 不育専門の個人クリニックでは第12因子活性の低さ(51%)、NK細胞活性の高さ (61%)を指摘され、初期流産を防ぐために、12~16週目はバイアスピリン®とカプロ シン®の投与が必要とのことでした。しかし、別の病院で検査とセカンドオピニオンを受け たところ、染色体異常、不育検査での異常はなく、「アスピリンやヘパリン投与のような治療は必要がない。流産の原因はおそらく卵子の老化によるものだから」と言われました。 卵子の老化が原因なら、卵子の質をあげる注射や飲み薬はありませんか? 治療や薬で 効果がない場合は、体外受精へのステップアップを考えています。

流産の種類

初期流産を3回されています。これは不育症と考えられますか。
神谷先生 一般的には胎のうを確認して、心拍の確認ができず 12 週以前に消失するのが初期流産。
2回以上連続で初期流産になると不育症、または反復流産、3回続くと習慣流産といわれます。
2回連続の場合も3回連続の場合も、検査をすると流産の原因が同じであるケースが多いので、原因を知るには2回流産した時点で調べるといいでしょう。

不育症の原因

不育症の場合、何が原因ですか?
神谷先生 不育症の原因は多様で、原因が1つとは限りません。
検査方法も治療方法も標準化されたものがないのが現状です。
あゆたさんの場合は、決定的な不育の原因はないと言われているようですね。
検査をして子宮の形態や内分泌的な問題もないようなら、抗リン脂質抗体、自己抗体、血液凝固の異常の検査が必要です。
あゆたさんは、血液凝固にかかわ るタンパク質である第 12 因子の活性が 51 %と低めです。
これは、その日の体調によって大きく変動しますが、一般的な基準値は 50 〜150%、不育ということを考えると 60 %以上が基準。
第 12 因子が足りないと血液が凝固し、血栓ができやすくなります。
胎盤の形成梗塞を起こして赤ちゃんが育たず初期流産を起こしたり、中期・後期の妊娠中毒症の原因になるといわれています。
第 12 因子活性化が低ければ必ず、というわけではありませんが、不育症の原因になることは多いのです。

70%は染色体異常

バイアスピリン ® とカプシロン ®の投与が必要と言われたものの、セカンドオピニオンを受けた病院では不要と言われていますが。
神谷先生 不育症の原因は明確になっておらず、標準的な検査、治療法はありません。
流産のうち 70 %は偶然の染色体異常による偶発的な流産で、母体に原因があるケースは 30%といわれています。
そのため何度か流産をしても、治療はせずに赤ちゃんが育つのを待つケースと、何らかの治療を行うケースに分かれています。
あゆたさんの場合、第 12 因子活性 の数値が異常を示しているので、治療はしたほうがいいと私は考えます。
バイアスピリン ® もカプロシン ®も血栓を予防し、子宮や胎盤の血流をよくする効果がありますから、 28週までは投与を続けるのがいいのではないでしょうか。

早めの採卵を

卵子の老化への対策は?
神谷先生 卵子は加齢によって質が下がるので、卵子の質そのものを改善する薬や治療法は今のところありません。
40 歳という年齢を考えると、排卵誘発剤を使って多少の過排卵を起こし、たくさん採卵できた中から良質な卵子を採るのがいいのでは?
つ まり、検討されている体外受精へのステップアップという選択は、有効だと思います。
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不妊治療に関するドクターの見解を取材してきました。