卵管と卵巣の癒着について

ホルモンバランスは正常なのに卵胞が育ちません 癒着が原因でしょうか?

宇津宮 隆史 先生 熊本大学医学部卒業。1988年九州大学生体防御医学研究所講師、 1989年大分県立病院がんセンター第二婦人科部長を経て、1992年セント・ ルカ産婦人科開院。国内でいち早く不妊治療に取り組んだパイオニアの一 人。開院以来、妊娠数は6,200件を超える。O型・おひつじ座。8月初旬に 開催された「第31回日本受精着床学会総会」で会長を務められた宇津宮 先生。「プライベートで山に登った時も、資料を抱えて……。準備は本当に 大変でしたが、スタッフに助けられました」と語ってくださいました。
ここあららさん(30歳)からの相談 Q. 以前、PCOSと診断されたものの、昨年やっぱり違うと言われました。片方の卵管はず いぶん上の位置にあり、ラパロにて癒着を剥離して元通りにしてもらう予定です。ホルモ ンバランスはよく、医師は「非の打ち所がない」と言いますが、排卵誘発は一切効果なく、 卵胞はいつも小さいままです。3年間の治療で排卵したのは卵管造影した直後にたった 一度だけ。しかも、医師も私も油断していたためタイミングも取れないまま終わりました。 卵巣が癒着していると卵胞が大きくなりにくいということはありますか? また、癒着が ひどすぎると手の施しようがないのでしょうか? 気になっているのですが……。

不妊治療は専門医の元で

先生はどう思われますか?
宇津宮先生 ご相談内容を拝見したうえであえて厳しい言い方をしますが、この方の主治医の先生は、不妊治療のことをよくわかっていない医師ですね。
まず、排卵誘発がきちんとできていないこと自体がおかしい。
しかもPCOSを疑われ、数年後に違うようだと言われたとのこと。
これはかなりいい加減な話です。
排卵誘発で卵胞が大量にできて困る、という話でもないようですし、1回だけ排卵したというのも不可解です。
PCOSの可能性がある場合、多発を恐れて少量の排卵誘発剤で経過観察する、ということは当然ありえますが、今はエコーもあり、ホルモン検査も正確にできますから、そもそも心配する必要はありません。
また、この疾患を持っていても、 35 歳以下は 54 %の確率で妊娠できることが実証されています。
ここあららさんは月経もあり、ま だ 30 歳。専門医のもとで治療すれば、高い確率で妊娠できると考えます。

外来の検査だけでは分からない

ホルモンバランスは、非の打ち所がないとのことですが……。
宇津宮先生 排卵していないのに、そんなわけがありません。
問題があるから排卵しないのであって、本当に意味がわかっていないと思います。
当院にも、他院で「正常」と診断さ れたという方が時々来られます。
しかし正常ならば、なぜ不妊なのでしょうか。
この段階では「原因不明」なのです。
外来で行う検査だけでは問題が見つからない。
しかし、次のステップである腹腔鏡検査で子宮内膜症などが見つかれば、それが「原因」となる。
この時に何も見つからない、また は内膜症の治療をしても不妊が続くなら、体外受精のステップに進む。
前段階の検査ではホルモンはいい、卵胞もある。
ところがこの段階になって、高齢などの理由により「卵子そのものがない」などの「原因」がわかり、そこで「不妊」という結論になるのです。
年齢的にも月経も、特に問題はな いのに妊娠できなかったのであれば、「問題があるかわからない」ということを治療のスタートラインだと考えていただきたいですね。

癒着を治せば良いわけでもない

癒着についてはいかがですか?
宇津宮先生 癒着がひどすぎて手の施しようがないということはあります。
また、腹腔鏡で剥離したとしても、早々に妊娠するわけではありません。
癒着を招いた原因を無視したまま剥がしても、また別の箇所に癒着が起こる可能性も十分に考えられます。
最初にお話しした通り、ここあら らさんの主治医は不妊治療の専門医ではないようですし、癒着の捉え方もまったくわかっていないようです。
諸々の条件を考えても、ここあららさんが妊娠できる確率はかなり高いと思われますので、早急に専門医を探すことをおすすめします。

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不妊治療に関するドクターの見解を取材してきました。