E2 の値が低い時も……。 排卵誘発剤の服用は 自力で排卵していても必要?
内田 昭弘 先生 島根医科大学医学部卒業。同大学の体外受精チームの一員として、 1987年、島根県での体外受精による初めての赤ちゃん誕生に携わる。 1997年に内田クリニック開業。1階は奥様が副院長を務める内科・胃腸 科、2階が婦人科。リチウム電池(蓄電システム)を設置している同クリニック では、停電時でも10時間は電気が確保できる。加えて、秋には念願のソー ラー発電装置が屋根に取り付けられる。「これで培養器の停電対策は万全 です」。
みさん(26歳) Q. 昨年の初めに、子宮外妊娠で左卵管を切除しました。先月からタイミング指導を受けてい ます。先月の排卵時に300程度あった ※ E2の数値が、今月の検査(Day16)では100 ちょっとしかありませんでした。「その後、高温期には入っているので排卵はできているで しょう」と言われ、HCG5000を打ちました。そして昨日の診察でもE2の数値が低かっ たため、次の周期ではクロミッド®の服用を始めると言われています。 早く子どもが欲しいと思う一方で、治療の展開の速さに戸惑っています。妊娠の確率が上 がれば嬉しいのですが、自力で排卵できているのに、薬の服用は必要でしょうか? 少し 抵抗があります。
卵管が片方…
片方の卵管を切除されているそうですが、その後の妊娠に影響はあるのでしょうか。
内田先生 先日、片方の卵管しかない方についての調査で、どちらの卵巣から排卵して妊娠したのかを調べたら、左右の卵管がある人とほとんど変わらなかったという報告を目にしました。
子宮外妊娠は卵管に問題があったかもしれないので何ともいえませんが、年齢的に問題はないはずなので、片方の卵管を切除したからといって慌てなくてもいいと思います。
良い排卵とは…
排卵時の血液検査で、 E2 の数値が先月は300、今月は100ちょっとという数値だったそうですが、これはどう捉えたらいいでしょうか?
内田先生 卵子の発育や排卵が遅いとホルモンレベルが足りないことがあります。
いい排卵とは、妊娠につながる条件の整った時の排卵です。
血液検査だけでは、はっきりとは言えませんが、いい排卵ができている時もあるけれど、そうでない時もある、ということではないでしょうか。
二人目不妊でPCO
最初の妊娠は自然に妊娠し、その後、月経周期がずれてきたということですが。
内田先生 PCOの傾向にあるということも考えられます。
2人目不妊の人のなかには、 20 代前半に妊娠出産をして、 20 代後半で2人目をという時にPCOが顕著になっている場合があります。
そうなると、排卵はあるけれど 18 日目、 20 日目とかの排卵になっている。
この方もそのような周期が出始めているかもしれません。
診ている側とすれば、たとえいい周期があっても、悪い周期がある時には、そのことは必ず伝えます。
先生が排卵誘発剤を使いましょうと言われたのは、そういうことだと思います。
排卵誘発のタイミング
排卵誘発剤の服用に少し迷っているようですが……。
内田先生 もし 30 代前半でAMHが低いというような方なら、自然妊娠がいいですよとは言いづらいです。
でもこの方の場合は、年齢因子はないので、子宮外妊娠ゆにせよ妊娠できたという部分では、ある程度ゆっくり治療するという選択肢があってもいいと思います。
迷っているのであれば、「もう少し排卵誘発剤を使わずに経過をみてもいいですか」と先生に伝えてもいいかもしれません。
具体的にはどれくらい?
内田先生 通われている病院は、血液のデータをしっかりみていらっしゃるようなので、数値の悪い周期の頻度をどのくらいで見ていくかだと思います。
3回に2回悪かったら、3周期様子をみて、方針を変える考えでもいいのではないでしょうか。
とにかく、診察に行く前にご主人と二人でよく相談をしてください。
そして勇気を持ってほしいのは、先生の言うままではなく、治療をどのように進めていくのかを、ご夫婦で決めるということだと思います。
※E2:卵胞ホルモンの1つ、エストラジオール。
※多嚢胞性卵巣(PCO):排卵がうまくできず、卵巣内にたくさんの小嚢胞がある状態。排卵誘発により卵巣過剰刺激症候群を起こしやすい。
※AMH(抗ミュラー管ホルモン): 発育卵胞、前胞状卵胞から分泌されるホルモン。血液中のAMHの検査値から卵巣の予備能を知ることができる。ミュラー管抑制因子ともいう。年齢によって基準値が異なり、31歳以下では6.21ng/mL、40代半ばでは1.00ng/ mL程度。