移植前や移植後の過ごし方はどうする?

特集1 胚移植の ギモン&不安

初めての体外受精、特に妊娠の結果を左右する胚移植の前後は緊張の連続。

移植前の排卵誘発時や、胚移植後の過ごし方などについて、 久保みずきレディースクリニックの石原尚徳先生に教えていただきました。

石原 尚徳 先生 高知医科大学卒業。神戸大学医学部大学院修了。兵庫 県立成人病センター、兵庫県立こども病院の勤務を経て、 2012年より久保みずきレディースクリニック菅原記念診療 所院長。不妊治療から周産期・小児医療まで、地域に根ざし た総合的なサポート態勢が整う同クリニックで、精力的に活 動する。最近、スポーツクラブの水泳や体幹トレーニングに加 え、さらにジョギングをスタートした先生。トレーナーに、もっと 筋肉量を増やしなさいと言われてしまったとのこと。多忙な不 妊外来と分娩の両方を担当するためには、相当タフな肉体 と精神力が必要なようです。

ココがポイント

高刺激時の過ごし方

○個人差はあるものの、多少の下腹部の張りや痛みは一般的
○動くと痛くなるので、誘発時や移植後は安静に過ごすことが大切

移植後について

○38℃以上の高熱は積極的に解熱する
○感染予防に努める
○身体的、精神的ストレスはいずれも着床に影響あり
ドラコさん( 38 歳) Q. 初めての体外受精で、アンタゴニスト法による排卵誘発を行っています。移植前後に注射の刺激で下腹部が張る感じがするのですが、どのように過ごせばいいでしょうか。

激しい運動などは控え 穏やかな気持ちで 過ごしてください

個人差はありますが、お腹の張り はある程度、皆さん感じていらっしゃると思います。
注射による高刺激の場合は特にそうですね。
おそらく注射の期間は、1週間から 10 日くらいだと思います。
前半はそんなに感じないのですが、後半から下腹部痛や膨満感が出てくることが多いようです。
そうなったら、あまり無理はしないほうがいいでしょう。
無理しないというのは、激しい運動をしないということ。
卵巣が刺激されて張りを感じている時、激しく動くと余計にお腹が痛くなります。
仕事や日常生活でもゆっくり過ごされるのがいいと思います。
採卵後は生理がくるまで、胚移植 後は妊娠した後も妊娠初期から胎盤が完成するまでは、卵巣からのホルモン分泌が活発ですから、しばらくはこの症状が続きます。
移植前の誘発時ですが、刺激によって卵巣が過剰に反応した場合、まれにOHSS ( 卵巣過剰刺激症候群 ) を発症することがあります。
卵巣の腫大や腹水がたまることによって、膨満感、下腹部痛、吐き気がする、急に体重が増えるなどの症状となって現れます。
重症化すると入院しなければならないこともありますので、痛みがあまりにも強い時は安静にして医師に相談してください。
卵巣が薬剤による刺激によってどれくらい反応するかは個人差が大きいので、一概には判断できません。
仕事は無理せず、OHSSになった場合は休めるなら休んだほうがいいでしょう。
当院では、OHSSを発症しそう な方には漢方薬の五苓散 や内服薬のカバサール ® を処方します。当然、排卵誘発で症状が悪化するようなら、その周期は胚を凍結して移植を見送ることもあります。
痛い時は無理をしないで、穏やか な気持ちで安静に過ごすよう心掛けてください。
プードルさん( 39 歳) Q. 移植3日後に風邪を引きました。高熱は出ませんが、咳、鼻水、微熱が続いています。整骨院の先生に「あまり熱が出ると受精卵が変性する」と聞いて不安になりました。

移植後の高熱は 積極的に 解熱しましょう

発熱に関しては、 38 ℃以上の高熱は積極的に解熱剤を使ったほうがいいですが、そうでなければ影響はありません。
また、咳や鼻水といった熱以外の風邪の症状は特に問題になりません。
喉が痛いといったことも、ご自身が不快なだけで、妊娠に関しては気にされなくていいでしょう。
風邪薬の服用に不安があるようでしたら、担当医に相談して、対応したものを処方してもらいましょう。

風邪のほか感染症は 予防を心掛けて

最近、風邪やインフルエンザだけでなく、患者さんの間でも感染症の予防について関心が高まっています。
メディアでも取り上げられていますので、移植の時期に入ったら、手洗いやうがい、人ごみを避けるなど、一般的な感染予防をされることをおすすめします。
幼児のお子さんがいらっしゃる家庭は、保育園や幼稚園で感染源のウイルスをもらってくることも多いので、素手でおむつを扱わない、子どもの手洗いを徹底するなど心掛けるようにしましょう。
サイトメガロウイルス、トキソプ ラズマ、風疹などの感染症は妊娠初期にかかると胎児に影響します。
妊娠前には必要であれば予防接種を受け、移植時期はできるだけ人ごみを避けて感染症の予防に努めることが望ましいでしょう。
ヨッコさん( 32 歳) Q. ストレスがよくないことはわかるのですが、実際どのような影響があるのでしょう。ストレスで血流が悪くなり、ホルモンに影響を与えるから?それともストレスで着床しにくくなることもありますか?

身体的、精神的に いずれも影響大

心の状態と体は密接につながっています。
過度なストレスによって交感神経が緊張すれば、血行不良となり、やがてホルモンの分泌量や、生殖器に送られる血液の量にも影響が生じることは容易に想像できます。
精神的ストレスは自分の力でどうにもならないことも多いのですが、身体的なストレスは、ある程度コントロールが可能なはず。
仕事や日常生活で過酷な状況に体を置かないことが大事だと思います。

ストレス発散法は 好きなことをする

移植前も移植後も、自分に合った発散方法を見つけてゆっくり過ごすのがいいと思います。
移植後の激しいスポーツは身体的なストレスとなるのでやめましょう。
普段はストレス発散になっていることでも、移植後はおすすめできません。
ストレスの対処法として有効なのは「忘れること」。
好きなことや楽しいことに没頭して、頭からストレスを追い出しましょう。
初めての体外受精は緊張の連 続で不安も多いことと思います。
気分転換の方法を見つけることを心掛け、移植の時期は心も体も健やかに過ごしていただきたいものです。
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不妊治療に関するドクターの見解を取材してきました。