排卵誘発は 卵子に影響する?

排卵誘発をすることで、卵子や卵巣に何らかの影響があるのでしょうか?

また、排卵誘発をしないと排卵できないケースも同様に関係があるのかを セント・ルカ産婦人科の宇津宮隆史先生に教えていただきました。

宇津宮 隆史 先生 熊本大学医学部卒業。1988年九州大学生体防御医学研究所講師、 1989年大分県立病院がんセンター第二婦人科部長を経て、1992年セント・ ルカ産婦人科開院。国内でいち早く不妊治療に取り組んだパイオニアの一 人。開院以来、妊娠数は6,200件を超える。O型・おひつじ座。8月8日・9日 に開催される「第31回日本受精着床学会総会 学術講演会」の会長を務め る宇津宮先生。「今年は医者になって40年、開業して20年、さらに洗礼を受 けてクリスチャンになって25年と、節目の年が重なっているんです」と語る。

ここがポイント!

排卵誘発と卵子の老化

○排卵誘発剤は卵子の残りの数に影響しない
○女性がもともと持っている卵子は何万、何十万個と膨大な数
○AMH値は生理前後で変化しない
○女性ホルモンと卵子は別もの

排卵検査薬について

●排卵検査薬の色が薄くても一概に卵子が老化しているとは限らない
●排卵検査薬は使うタイミングに注意する
●排卵誘発剤が原因ではなく元の卵子が老化している可能性が

排卵誘発は卵子の残りの数に影響しますか?

パニさん ( 29 歳) Q.頓服や注射などの治療で卵子 がたくさんできる場合、卵子 の残りの数に影響するので しょうか?   また、AMHの 値は生理前後でも変化すると 聞きましたが、本当ですか?

排卵誘発が卵子の数に 影響することは ありません

薬の頓服や注射など排卵誘発剤による治療で卵子をたくさん育てると、卵子が早くなくなってしまうのでは、と心配される方も確かにいらっしゃいます。
ですが、はっきりと言えることは「排卵誘発と卵子の残りの数には、何ら関係はない」ということです。
常に新しい精子がつくられる男性 とは違い、女性は生まれた時から卵子の数が決まっているため、時間が経つほど数が減っていきます。
そのため、パニさんのように「排卵誘発で卵子をたくさん採るのはいいが、なくなってしまわないのか」と考えてしまう人もいらっしゃいますが、女性がもともと持っている卵子は何万個、何十万個と膨大な数です。
排卵誘発をして卵子が 20 ~ 30 個採れたとしても桁が違いますから、心配する必要はまったくありません。
また「生理前後でAMHの値が変化する?」という質問ですが、これもまったく関係がない、というのが結論です。
低温期であろうが高温期であろうが、数値はまったく動きません。
ただし、体外受精の場合、採卵時には値が下がります。
なぜそうなるのかは解明されていませんが、排卵誘発剤を用いて卵胞がたくさんでき、採卵直前の状態までいくと下
がるのです。
これは、想像の域を超えませんが、排卵誘発剤を用いると、自然ではない状態で女性ホルモンが急激に増え、卵胞がたくさんできますから、次に控えているまだ小さい卵胞が大きくならないように抑制する働きがあるのではないか、と考えられます。
本来なら、AMHを分泌するような細胞は小さすぎて h MG製剤には反応しないはずであり、ある程度の大きさになってから注射の刺激が有効になりますから。
採卵時に数値が変わるというのは、外からの刺激である注射に含まれるホルモンそのものが、AMHの値に直接関係していると考えるのが自然ではないでしょうか。
話を戻しますが、パニさんの質問 にあるような「生理前後でAMHの値が変化するのか」についての結論は、変化することはない、ということ。
少し減るように感じることもあるかもしれませんが、統計上はまったく関連がありませんから、影響するものではないといえるでしょう。

PCOを疑われる場合の 治療法と注意点

パニさんの状態で、一つ気になることがあります。
それは「頓服や注射などで卵子がたくさんできる」ということ。
ここから推測すると、パニさんはPCO(多嚢胞性卵巣)のタイプではないでしょうか。
卵子が多くできやすい人が排卵誘 発の際に気をつけなければならないのは、卵子の育て方です。PCOの場合は卵子ができやすい分、多胎妊娠の可能性も否めません。
通常のように注射して3~4日後に検査するのではなく、少量で少しずつ刺激を加えながら、丁寧に1個の卵子だけ
を育てるよう、経過観察する必要があります。
その点は少し負担に思われるかもしれませんが、もともと卵子をたくさん持っている分、妊娠率が高いというメリットもあります。
適切な排卵誘発法で、じっくり丁 寧に卵子を育てる治療をしてほしいですね。

排卵検査薬の色が薄いの は卵子の老化が原因?

yokoさん ( 44 歳) Q.排卵検査薬の色が薄いのは、 卵子が老化しているからで しょうか?   また、排卵誘発 剤(クロミッド ® )を飲まない と自力排卵できていないよう なのですが、妊娠・出産は可 能ですか?

検査時期によりますから 一概には言えません

排卵検査薬の色が薄いからといって、必ずしも卵子が老化している訳ではありません。
なぜなら、検査をするタイミングによって、まったく異なる結果が出る場合があるからです。
排卵検査はLH(黄体形成ホルモン)をチェックするためのものです。
排卵前にLHが分泌されはじめて、 36 時間後に排卵します。
このピーク時に検査せず、排卵後の徐々に下がってきた頃に検査をすれば、当然薄くなります。
また、尿中の濃度を調べるため、尿量の多い人、たとえば検査前に水分をたくさん摂っていた人などは薄くなっている可能性もありますから、薄いこと自体が卵子の年齢に関係しているとはいえません。
この検査ではLHを確認する訳で すが、このホルモンと卵子の老化はまた別の話です。
老化を考える場合は、卵子の周りにある卵丘細胞や顆粒膜細胞から分泌される女性ホルモンの状態がどうかを確認します。
排卵検査薬の色が薄いことを気に するのであれば、血中のホルモン値を測定すれば卵巣年齢がすぐにわかりますから、まずはそちらを試してみることをおすすめします。

成熟卵胞であっても、 卵子がない場合がある

排卵誘発剤はクロミッド ® を使用されるのが一般的です。
クロミッド ®は、抗エストロゲン作用が脳下垂体に命令を出してゴナドトロピンが大量に分泌されることで卵胞が成熟しますが、脳ではなく卵胞そのものを刺激している可能性があります。
もしそうなら、卵子そのものにもあまりよくないのではないかと考えられるので、私はなるべく使わないように心掛けています。
yokoさんは、排卵誘発をしなければ排卵しないということですが、 44 歳という年齢を考えると、もしかしたら閉経に向かっている可能性もあります。
排卵誘発が卵子の老化に関係している訳ではありませんが、卵子そのものが、もともと老化しているという可能性は十分に考えられます。
排卵誘発をして、卵丘細胞や顆粒膜細胞からホルモンがきちんと分泌されていても、実はその中に卵子がない、ということもあります。
卵子がない、もしくは老化した卵子しか採れないのであれば、自分がどのような状態なのかを知り、次のステップに進むためにも、早い段階で体外受精を検討していただきたいですね
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不妊治療に関するドクターの見解を取材してきました。