たばこは、やっぱり 妊娠によくない?
妊娠・出産のためには健康な体づくりが大切です。
体質改善の指導に力を入れている俵先生に、 今回からいろいろなお話を伺います。
自分のためにも、赤ちゃんのためにも 今日からできる体質改善、 始めましょう!
【医師監修】俵史子先生 浜松医科大学医学部卒業。総合病院勤務医時 代より不妊治療に携わり、2004年愛知県の竹 内病院トヨタ不妊センター所長に就任。2007 年、俵史子IVFクリニックを開業(のちに俵IVFク リニックに名称変更)。生殖医療専門医。昨年 11月、静岡市で開催した女性の健康に関する公 開講座は、予約で席が埋まるほど大好評! 今年 も不妊症をはじめ、体質改善や食生活について の啓蒙活動を行っていきたいと語る先生。
おかともさん(33歳)からの相談 Q.不妊治療中ですが、ずっと妊娠のことばかり考えてイ ライラして、しばらくやめられていたたばこを吸っては 罪悪感に襲われ、また吸って……という悪循環をくり返 しています。妊娠に悪いとは思いますが、精神的にま いっていて、自分自身どうしたらいいかわかりません。
目次
ご夫婦どちらかでも 吸っていれば悪影響が
たばこが妊娠や赤ちゃんに悪影響を与えるというエビデンスは、数多く報告されています。
女性の場合は女性ホルモンの分泌が抑えられるほか、卵子の老化を早めるというデータもあります。
また、喫煙している女性は、卵巣の機能が低下する確率が高く、非喫煙者に比べて閉経の時期も早くなるのではないかといわれています。
一方、男性の場合は、喫煙していると造精機能が低下するので、精子の数が少なくなるうえ、精子の奇形率も高くなる傾向が見られます。
実際に、不妊治療を始めた場合、 やはり喫煙している方は妊娠率が下がるという報告が。
それは女性が吸っている場合だけでなく、女性が吸わずに男性だけが吸っていても低下してしまいます。
下データをご覧いただくと、よくわかりますね。
喫煙が妊孕性(妊娠しやすさ)にどのような影響を与えるか?
結論:本人が喫煙している場合はもちろん、 周りに喫煙者がいても着床率・妊娠率が下がる。
妻が吸っていて夫が吸っていない場合、妊娠率は 19 ・4%。
逆に、 夫が吸っていて妻が吸っていないと 20 %、とあまり差はありません。
つまり、どちらかがたばこを吸っていれば、妊娠に悪影響が出てしまうということです。
影響があるのは妊娠率だけではありません。
卵子の透明帯が厚くなり、受精障害やハッチング障害の可能性が高まるリスクや(表2)、生まれた子どもが男児だった場合、その子の造精機能が低下するなどの弊害もあります(表3)。
本人または夫の喫煙が卵子に影響を及ぼすか?
結論:卵子の透明体の厚さは、非喫煙者よりも 喫煙者のほうが明らかに厚い。
出産前の母親の喫煙が、出産した男児の造精能力に影響があるか?
結論:母親が喫煙することで 生まれてきた男児が乏精子症になる リスクが高くなる。
また、妊娠中の喫煙がよくないことはすでにご存じだと思いますが、流産や早産になりやすかったり、胎児が体重を増やせなくなったり、奇形になるリスクが高まるといわれています。
たばこにはニコチンという有害物 質が含まれており、それが卵子や精子、胚など、細胞そのものにダメージを与えてしまうのです。
赤ちゃんを望まれているのなら、喫煙には何のメリットもありません。
おかともさんのように、治療中のイライラを解消するためについ吸ってしまう、という方もいるようですが、吸い続ければ妊娠しづらくなり治療が長引く、という悪循環に陥ってしまいます。
禁煙はとてもつらいと思いますが、禁煙外来を受診したり、パートナーにアシストしてもらうなど、周りのサポートも受けながら頑張れば、きっとできるはずです。
たばこは不妊要因の一つ。
取り除 けば妊娠に一歩近づけると思います。
ちなみに当院の場合は、喫煙されている場合は禁煙されるまで治療を始めることはできません。
もし、今喫煙しているという方は、赤ちゃんのために今日からご夫婦できっぱりやめていただきたいですね。
たばこと不妊の関係
女性
●卵巣から分泌される女性ホルモンの量が減少。
●卵巣でつくられる卵子の老化が進む。
●生殖機能の低下。
●喫煙している期間が長いほど卵巣へのダメージが大きい。
●平均より早く閉経する場合もある。
●不妊治療でよく使用するホルモン剤は、喫煙者の場合、血栓症のリスクを高めるともいわれている。
●妊娠時の喫煙では、早産や周産期死亡の比率が1.2~1.4倍に上昇。
●胎児が正常に成長できず、低体重で生まれる確率が高い。
●無事に出産しても、将来その赤ちゃんが不妊症になる確率が高くなる。
男性
●妊娠の最大のポイントである精子の造精能力に影響。
●非喫煙者より喫煙者のほうが精子数は10~20%減少。
●構造異常を起こしている奇形精子の発生率も上昇。
●妊娠しても異常な胎児の発育が起こる可能性がある。
●流産や先天奇形の危険もある。