【医師監修】宮崎 和典 先生 大阪医科大学医学部卒業。学生時代の新生児医療へ の興味がきっかけとなり、体外受精や不妊治療の世界 を志す。同大学産科婦人科講師を経て、1992年に不 妊症、不育症治療専門クリニック、宮崎レディースクリ ニック開業。開業当初より泌尿器科の専門医による男 性不妊外来を開設する。A型・しし座。クリニックで は最近、釣り同好会が発足。培養室のスタッフが海で 大物を釣り上げたこともあり、これから盛り上がりそう。
はなこさん(33歳)Q.7年前に子宮内膜症の腹腔鏡手術、同時に子宮腺筋症の開腹手術を受けました が、昨年、内膜症の再発と子宮筋腫が見つかりました。また、先日、子宮卵管 造影検査を行ったところ、左卵管の詰まりが判明。医師からは「まず人工授精を」 とすすめられましたが、卵管が詰まっていれば、精子は卵管采には到達できず受 精できないと思います。そのことを医師に確認しても「人工授精であれば卵管の 詰まりは問題ない」という回答しか得られませんでした。 右卵管は詰まっていないからかもしれませんが、釈然としません。体外受精にス テップアップすべきと考えますが、いかがでしょうか?
卵管閉塞について
卵管閉塞と診断されたのに、あまり有効とは思えない人工授精をすすめられ、疑問に感じておられます。
宮崎先生 卵管閉塞というのは、どこで詰まっているかによって意見が分かれるところです。
おそらく片方は子宮間質部といって、子宮と卵管の間にある部分だと思います。
もしそうだとすると、大抵の場合は通っていることが多いんですよ。
子宮内膜症や腺筋症の既往がある場合、子宮卵管造影検査で造影剤が通りにくいケースが結構あります。
そうはいっても証拠がないから、そこまでハッキリとはいえないのだけれど、これはテクニカルな子宮卵管造影の宿命というのかな。
要するに、造影剤が通っていないから詰まっているといわざるを得ないのです。
後でカテーテルを通してみると詰まっていないことがわかる場合もあります。
それに、もう片方でも排卵しているわけですから。
片方が閉塞していても妊娠する人は結構いらっしゃいます。
子宮内膜症について
子宮内膜症の再発や、子宮筋腫が見つかったことも気になります。
宮崎先生 子宮内膜症の手術は、たとえば、内膜性の癒着があって剥離して痛みは取れたとしても、細胞組織が元に戻るわけではないでしょう?
何をもって治ったといえるのかが難しいのです。
手術後、不妊治療をして自然妊娠できる人は、ほとんど半年〜1年くらいで妊娠しています。
精子と卵子が会うタイミング
人工授精は「精子やヒューナーテストで問題がある場合だけで、卵管の詰まりには有効でない」というはなこさんの認識はいかがですか?
宮崎先生 先ほどもいった通り、卵管はもしかしたら通っているかもしれないし、片方しか通っていないから諦めるというふうには考えないほうがいいです。
それに、ヒューナーテストや人工授精というのはタイミングの問題ですから。
ただそこに精子があったかなかったかだけじゃなくて、タイミングがいい時にきちんと精子と卵子が出会っているかが大切です。
それに、ヒューナーテストでも、確実に子宮内に精子が届いているのかどうかは誰にもわかりません。
どれも論理であって、現実にはもっと神秘的な領域の話なのです。
体外受精も視野に
体外受精にステップアップすることについては?
宮崎先生 人工授精を2〜3回試みることは無駄ではないけれど、これからは体外受精も視野に入れていることを医師に伝えながら治療を進めるべきだと思います。
一度、不妊治療や体外受精の専門クリニックに相談してみるのもいいかもしれません。
はなこさんはまだ 33 歳だけど、年齢というのは個人差がある。
45 歳でいい卵子ができる人もいれば、 35歳でできなくなる人もいるので、早めにステップアップするのは悪くないことだと思います。